2019年7月31日午前11時45分より東京都千代田区の衆議院本館にて、立憲民主党 枝野幸男代表 定例会見が開かれた。
7月21日に行われた参院選の投開票の結果、自公維などの改憲勢力は、国会発議に必要な3分の2の議席である164議席を割り、160議席となった。しかしながら、その差はたった4議席である。
「生まれ変わりました」として憲法改正議論に前向きな姿勢を示した国民民主党の玉木雄一郎代表や、「自民党がNHKのスクランブル放送をやってもいいというのなら、憲法改正に賛成する」と発言した「NHKから国民を守る党」の立花孝志代表の発言から、自公維に加えて新たな改憲勢力が誕生するのではないかとの懸念が持たれている。こうした懸念について、IWJは枝野代表の見解を尋ねた。
枝野代表は「改憲勢力といっても、何をもって改憲勢力とするかは難しい」「われわれは解散権の制約などについては積極的な議論が必要だとしている」と前置きした上で、今回の参院選における野党と市民連合との政策協定、つまり、「安倍政権が進めようとしている憲法『改定』とりわけ第9条『改定』に反対し、改憲発議そのものをさせないために全力を尽くすこと」については、「全く同感」であるとした。
さらに、「今回の選挙結果を踏まえれば、数の力で合意に押し切るということは明らかに民意と違うということは、どのような立場の人も理解しているのではないか」と付つけ加えた。
では、具体的にはどのように「改憲発議そのものをさせないために全力を尽くす」のであろうか。
IWJはこの点についても枝野代表に尋ねたが、枝野代表は「与党側がどのように対応するかによる」「戦略に関わるので、自民党が分かるところで話をしたら手の内を晒すことになる」と述べるにとどめた。その上で、「今回の選挙の有権者の意思は、まずそもそも憲法は今急ぐ争点ではないということである」とし、そうした民意を踏まえ、まずは国民投票法について議論を進めると示した。改憲発議を阻止するための具体的な策は示されなかった。
岩上安身は2018年8月6日、枝野代表に単独インタビューを行った際、自民党が改憲4項目に掲げる緊急事態条項の危険性についての認識を質した。枝野代表はその時にも、自民党の改憲案及び緊急事態条項について、「議論するに値しない」と一蹴し、緊急事態条項の内容に分け入ってのコメントはしなかった。さらに岩上安身が「でも、(緊急事態条項を)出してくる可能性があるのでは?」と問うと、「ないと思います。さすがに無理だと思います。で、(改憲発議がされたなら)それから、国民投票で否決します」と断言した。
安倍総理の発言や、安倍政権による3分の2確保の工作を見ていると、近い将来、多数派工作が成功したら、自民党の改憲案をもとに改憲発議が行われる可能性が否定できない。今こそ、改憲発議に反対するためにも、また、仮に発議された場合でも、1年前に枝野氏自身が言及したように、国民投票で否決に持ち込むためにも、野党、市民運動、知識人、独立メディアらが安保法制反対の時のような国民運動を今から起こす必要があるのではないかと思われるのだが、そうした点には言及がなかった。
▲岩上安身による立憲民主党代表・枝野幸男衆議院議員インタビュー~緊急事態条項ハイライト~2018.8.6
会見では、フリージャーナリストの横田一氏も、玉木氏の「生まれ変わりました」発言や、国民民主党が維新と統一会派を組むのではないかという報道について枝野氏に追及した。枝野代表は、玉木代表本人が誤解を招く表現だったとすでに釈明しているとし、維新との統一会派についてもそのような事実はないとの報告を受けていると回答した。
会見の全体で、枝野代表は野党の足並みは乱れていないと数回にわたって強調した。しかしながら、安倍総理は国民民主党に秋波を送っている。改憲勢力になびく野党議員が出てくることも十分に考えられるため、今後も引き続き注視する必要がある。玉木代表の発言や「ほぼ自民」とも称される国民民主党の榛葉賀津也(しんばかづや)氏については、以下の記事をご覧いただきたい。