2018年3月16日、日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁の再任が国会で承認され、4月9日より2期目がスタートした。日銀総裁が再選されるのは、57年ぶりのことである。アベノミクス第一の矢であるクロダノミクスとも言うべき異次元金融緩和を主導した黒田氏の再選は、異次元金融緩和への期待がすっかり色あせてしまったにもかかわらず、前例まで無視して、安倍政権はこれまでのクロダノミクス路線を踏襲する強い政治的意思を示したものと受けとめられる。
黒田総裁は辞任した白川方明前総裁の任期を引き継ぎ2013年3月20日に総裁に就任したため、同年4月8日にいったん任期が切れた。
国会の承認により、2013年4月9日から2018年4月8日までの日銀総裁に再任されたので、厳密には今回の2期目は「再再任」となる。
黒田総裁は2年で2%の物価上昇を目標に掲げ、大規模な異次元金融緩和を実行したが、1期中にその目標には到達できなかった。目標達成は先送りされ続け、4月27日の金融政策決定会合で公表された金融政策決定会合で公表された「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、ついに物価上昇2%目標の達成見通しは削除された。
※物価上昇2%」、達成時期の文言を削除 日銀決定会合(朝日新聞デジタル、2018年4月27日)
https://bit.ly/2Vmxomn
いったい何のための異次元金融緩和だったのか、デフレ脱却が目標だったはずで、2年どころか5年もやっていて効果があげられないのは、異次元金融緩和政策が、そもそもの根本から理論的に間違っていたのではないかと疑われ、検証されてしかるべきである。しかし、安倍政権下では官邸も、日銀も、そうした真摯な反省や検証を行うそぶりもない。
2018年3月14日に日銀が発表した自然利子率に関する英語論文は、アベノミクスや黒田総裁による黒田バズーカの副作用とその効果について、有り体に言えば言い訳を綴ったものだと言える。このことを鋭く指摘したエコノミストが今回のゲスト・田代秀敏氏である。
田代氏は、黒田総裁の学者としての優れた資質に敬意を払いつつも、日銀総裁が続投することは「異例中の異例の人事」と懸念している。日銀総裁を再任したのは過去2回、連続就任したのは過去1回しかない。しかも黒田総裁は財務省出身。財務省出身で連続就任を果たしたのは黒田氏ただ1人である。
なぜこうした人事が危ぶまれるかといえば、日銀は財務省、大蔵省のATMと思われてはいけないからであり、円の発行元としての信認を得るために政府とは切り離された独立性を持たなければいけないからである。
日銀総裁は総理のパートナーであってはいけない。これは近代国家としての原理原則であり、そうしたタブーを、安倍政権下の日本は今まさに、侵しているのである。
そして現在、日銀はビジョンなきまま、こっそりと金融緩和の出口に向かって動いている。そうなると、外国機関投資家が日本国債を疑い始めるのも時間の問題である。さらに国民が円を疑い始めたら、どうなるか。国債の信認が失墜したら、国家財政は破綻への道を突き進むことになる。国債暴落には法則性があり、そのシナリオはすでにでき上がっている。
概ね流布されている経済学理論とは、現実の経済現象をきちんと取り入れて検証しているわけではなく、実際の市民生活にそのまま適用することができるかどうか、甚だ疑問なものが多い。市民に直接影響を与えうる、黒田長期政権のもとでの日銀の政策がはらむ懸念とはいかなるものか、そして、日本経済そのものの浮沈を決定する国債破綻の恐怖とは、どのようなものか。
エコノミスト・田代秀敏氏が日本の経済の歴史をひも解きつつ分析する、国民が知られざる日本経済の現在に岩上安身が迫るインタビュー第1弾!