日産自動車のカルロス・ゴーン会長と同社代表取締役のグレッグ・ケリー氏が11月19日、東京地検特捜部に逮捕された。容疑は金融商品取引法違反とのこと。ゴーン氏とケリー氏は共謀し、ゴーン氏の2010年から2014年度の役員報酬を、実際には合計約99億9800万円だったにもかかわらず、約49億8700万円と約50億円過少に有価証券報告書に記載し、関東財務局に提出していたことが発覚した。
日産自動車は19日夜、西川(さいかわ)広人社長が横浜市の本社で記者会見を開き、ゴーン氏らの不正行為について数か月にわたり社内調査を続けてきたことや、ゴーン氏とケリー氏の解任を22日の取締役会に提案することを発表した。不正の発覚は社内からの内部告発によるもので、検察当局に情報を提供するにあたり、見返りに日産への刑事処分を軽減する司法取引が適用された。
報道によると、日産は海外子会社の資金を利用してブラジルやレバノンに数十億円の高級住宅を購入し、ゴーン氏に提供していました。ゴーン氏の両親はレバノン人。ゴーン氏はブラジルで生まれ、幼少期をブラジルで過ごし、その後レバノンのベイルートとパリで教育を受けている。ゴーン氏の国籍はブラジル、レバノン、フランスの多重国籍となっている。
- ゴーン容疑者、海外の高級住宅を子会社に購入させた疑い(朝日新聞デジタル、2018年11月20日)
フランスのタイヤメーカー、ミシュランのCEOだったゴーン氏は1996年にフランスの自動車メーカー、ルノーにヘッドハンティングされ入社した。国営企業から民営化される中、赤字だったルノーの完全民営化と黒字への転換に貢献し、「コストカッター」と呼ばれるようになった。
1999年に、ルノーが日産の株式を取得し、資本提携した際にゴーン氏はルノーの役員のまま日産のCOOとなり、翌年CEOに。赤字と経営不振に陥っていた日産を復活させた経営者として、著名となった。
19日夜、ゴーン氏が東京地検の取り調べを受けていると報じられた直後、エコノミストの田代秀敏氏がIWJの取材に応じ、不正発覚が内部告発だったことについて、ゴーン氏の経営に対する合理的な手法は、一方で強引で冷徹な側面もあったため、「社内では恨みをかっていたのではないか」と推測している。
その上で、「民営化したとはいえ現在もまだフランス政府が10数%の株を持つルノーのCEOを務めるゴーン氏が地球の反対側で突然逮捕されたとなると、日本とフランスとの関係、さらにはゴーン氏の両親がレバノン人であることを考えると日本と中東との関係にも影響があるかもしれない」と語った。
また、「強引で冷徹」に進めようとしていた、フランス政府の意向とも関わる構想が、ゴーン氏と西川氏との間の対立を引き起こしていたとの見解もある。『自動車が消える日』(文集新書、2017年)の著者であり自動車分野に詳しいジャーナリストの、井上久男氏は20日付の現代ビジネス掲載の記事の中で、ゴーン氏のルノーCEOの任期を2022年まで延長させることと引き換えに、フランスのマクロン大統領が提示した条件にふれながら、「ルノーと日産が経営統合に近い形で関係をさらに深めるのではないか」という憶測の背景を説明している。
- ゴーン追放はクーデターか…日産内で囁かれる「逮捕の深層」(現代ビジネス、2018年11月20日)
井上氏によれば、マクロン大統領が提示した条件のひとつは、「ルノーと日産の関係を後戻りできない不可逆的なものにする」というものであり、その条件を満たすために「持ち株会社の下にルノー、日産、三菱をぶら下げる」といった内容も視野に入れて関係強化策を2018年度中にまとめようとしていたという。
ゴーン氏の逮捕を受け、19日の欧州株式市場では、ルノーの株価が一時15%急落した。
- 仏ルノー株が15%値下がり CEOのゴーン氏報道受け(朝日新聞デジタル、2018年11月19日)
日本の自動車業界は、米国のトランプ政権の保護貿易政策の標的にされる一方で、目指すべき将来の自動車業界の方向性が、電気自動車(EV)化へと確実になり、さらには自動運転の開発が盛んな中国市場にどのように参入していけるのか、という課題も抱えている。このことは、自動車業界にとってまたとない商機が到来していることも示している。と同時に、EV化の波に乗り遅れれば、「自動車大国」というポジションから日本はすべり落ちるであろう。11月28日午後2時より行われる岩上安身による田代秀敏氏へのインタビューでは、そうした自動車業界の転換や、米中経済関係の行方などをうかがう予定である。
これまでの田代氏へのインタビューは下記を参照されたい。
- 異次元金融緩和の重大かつ深刻な弊害!出口を模索しようにもわずかな金利上昇で日本経済は大混乱!? アベノミクスの無残な最期!~岩上安身によるインタビュー 第879回 ゲスト エコノミスト 田代秀敏氏 2018.6.18
- 失敗したアベノミクス・異次元金融緩和の副作用!? 人口減少にも関わらずバブル化する不動産市場・サブリース契約の地獄!~日銀が発表した英語論文の謎に迫る!~岩上安身によるインタビュー 第885回 ゲスト 田代秀敏氏 第2弾! 2018.7.1
- 米国覇権の陰りと中国の台頭、数年以内に起こる米中覇権交代は21世紀最大のテーマ! 日本のマスメディアが決して伝えない中国の真の姿とは!? ~岩上安身によるインタビュー 第915回 ゲスト 中国通のエコノミスト・田代秀敏氏! 第3弾 2018.10.22
- 米国株価は「世界大恐慌直前の水準」!? 21世紀最大のテーマ・米中覇権交代は目前に迫っている!? ~岩上安身によるインタビュー 第919回 ゲスト 中国通エコノミスト・田代秀敏氏 第4弾 2018.10.28
今回の事案内容で永年に渡り日産が不正を間もや起こした❗
GMに次いで会社を解体させてルノーの名前に変更して内部も日本人無しの経営が一番良いと思います。
此れからの経営は外人主体が一番良いと思います。
上っ面しか報道しないマスコミ報道とは雲泥の差。
これは自動車をめぐる経済戦争なのかもしれない。
日産ゴーン会長逮捕でルノー株急落! この値動きの意味するものは!? 日仏関係にどんな影響が出るのか? 日産の中国市場進出・EV開発はどうなる!? https://iwj.co.jp/wj/open/archives/436173 … @iwakamiyasumi
https://twitter.com/55kurosuke/status/1065553154073227269