2018年10月5日(金)に東京都議会第3回定例会で、「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例案」が、自民党を除く日本共産党などの賛成多数で可決し、閉会した。
この条例案は、実効性のなかったヘイトスピーチ規制法と違い、差別的言動を理由にした「公の施設利用の事前制限」するなど、強制力を伴う。ヘイトに苦しむ被害者からすれば「朗報」と思われる条例だが、異を唱える人々もいる。表現の自由を不当に侵害し、自由な言論やジャーナリズムを脅かしかねない、というのである。その成立に強く反対した表現・メディアに関わる有志により、提出の取り下げを求める抗議行動が、同日に都議会前で行われた。
早稲田大学非常勤講師・田島泰彦氏は「役所自体が、ある言論を理由にして集会をさせないとか、言論表現の行使そのものを規制し、抑圧することはやっていいはずがない」と述べ、「これはかつての治安維持法なり、治安維持例とか、検閲の仕組みとか、戦前のやり方そのものだ」と述べた。
続けて田島氏は「これは決してイデオロギーの話とか、右とか左とかという話ではなく、我々の自由な言論や民主主義を大事にしようと思うならば、この条例は絶対に阻止しなければならない」と強く訴えた。
ジャーナリストの寺澤有氏は「これからこの条例に従って施設が使用禁止になり、表現の自由が制限されていく。そういう世の中になっていく。なんとかもう一度表現の自由を獲得するため、あらためて施設を使えるようにするために闘っていく。東京都民がそれを経験するのもいいかなと、今は前向きに考えている」と述べた。
この議論は複雑で、上記の田島氏や寺澤氏の主張にも賛否があるだろう。「言論の自由」の中に、「差別・ヘイトの自由」が含まれていいはずはない。ヘイトをやめさせ、公共の言論空間から排除してゆく、そのためにはどのような方法がふさわしいのか、慎重に議論する必要がある。
下部の関連コンテンツ、2018年7月24(火)に東京都新宿区の新宿リサイクル活動センターにて行われた、新宿区立公園を使わせて!アピールデモ実行委員会の主催による「新宿区のデモ規制と表現・集会の自由を考えるシンポジウム」のIWJ取材も是非ご覧いただきたい。