ある候補が、ある場所を選んで、選挙公示日の第一声をあげる。それぞれの候補に似つかわしい場所があるだろう。しかし、これほどぴったりくる場所を選ぶことのできた候補は、まずいない。
6月22日に公示を迎えた参議院議員選挙。民進党の比例代表から立候補した有田芳生候補が、2013年頃から在日朝鮮人に対する「ヘイトスピーチ」が吹き荒れた東京・新大久保で、第一声を行った。
5月24日、衆議院の本会議で、「ヘイトスピーチ対策法」が自民、民進などの賛成多数で可決、成立した。有田候補は、排外差別デモの現場に何度も足を運び、院内集会やTwitterなどで、「ヘイトスピーチ」を規制する法律の整備を訴えてきた。
今回、有田候補が第一声の場所に新大久保を選んだのも、「ヘイトスピーチ」対策にかける並々ならぬ情熱のあらわれであり、実際に議員立法でヘイトスピーチ対策法を制定した実績のあかしでもあると言えるだろう。
有田候補はまず、「差別との戦いは、ヘイトスピーチだけではない。私たちが人種差別撤廃法を国会に提出したように、ヘイトスピーチだけでなく人種差別をなくしていかなければいけない」と述べ、「ヘイトスピーチ対策法」に続き、2015年5月に旧民主党が中心となって提出した「人種差別撤廃施策法案」を早期に成立させる必要がある、と訴えた。
有田候補が取り組む政治課題は、「ヘイトスピーチ」や人種差別の問題だけではない。有田候補は次のように述べ、「改憲阻止」の必要性を訴えた。
「立憲主義を守ろうとしない安倍政権のもとで、戦後、71年間続いてきたこの日本の平和が崩されようとしている。この参議院選挙で与党が3分の2を占めてしまえば、この71年続いてきた日本の平和は崩される。
それを断固として、野党共闘で食い止めなければならない。その1人として、何としてでも当選を勝ち取らなければならない。そういった思いで、皆さんと戦っていく決意です」
衆議院では、すでに与党が3分の2議席を占めている。参議院でも、今回の選挙で自民党、公明党、おおさか維新の会、日本のこころを大切にする党などの「改憲勢力」が78議席を獲得すれば、改憲の発議に必要な3分の2議席に到達する。
これら改憲勢力の議席を1つでも減らすこと。改憲阻止勢力が1つでも議席を伸ばせるようにすること。現在は、この議席の奪いあいは伯仲しており、「3分の2」を本当に阻止できるかどうか、まったく楽観を許さない。
自分の選挙区では、改憲勢力が圧倒的に強く、選挙区で非改憲勢力に一票を投じても意味がない、投票所へ足を運ぶのがおっくうになる、という人もいるだろう。わかる。わかるけれども、比例への投票がある。全国どこからでも、好ましい候補に票を投じることができる。それがまた、その議員の所属政党の得票数としてカウントされ、「改憲阻止」のための、小さいけれども確実な一歩となる。
ぜひ、この有田候補をはじめ、比例に並んだ議員の顔ぶれにも注目し、有権者としての貴重な権利である一票を投じていただきたい。
安倍総理による改憲、そして基本的人権を停止させる「緊急事態条項」創設を阻止するためには、今回の参院選で「非改憲勢力」が1票でも多く票を上積みする必要がある。この日の有田候補の第一声には、有田候補を支援する多くの市民が集まった。「非改憲勢力」の主張がどこまで国民に浸透するか、7月10日の投開票日までの選挙戦にかかっている。