渋谷駅前の待ち合わせ場所として知られるハチ公の像から、少し離れた場所に位置するモヤイ像。行き交う人の多いこの場所で、2018年2月24日午後、怒号が飛びかった。
グリーンのはっぴ姿の男性たちに向けて、「嫌がらせで女性専用車両に乗り込み、千代田線を遅延させた輩を許さない」などと書かれたプラカードを手にした人たちが抗議の声を上げたのである。
はっぴ姿の男性らは、「女性専用車両は男性への差別だ」として反対活動をしているグループである。その前週の2月16日朝、男性らは東京メトロ千代田線の国会議事堂前駅で女性専用車両に複数で乗り込み、降りるよう促した駅員の要請に応じず、千代田線の運行を最大15分遅延させるというトラブルを引き起こしている。
▲カウンターに街宣を阻止される参加者(読者提供)
近年、このように確信犯的に女性専用車両に乗り込み、注意をした女性客や駅員の動画を撮影するなど、挑発を繰り返している男性たちがいる。電車内で痴漢などの性犯罪の被害に遭うのは圧倒的に女性が多い。それでも毎日、ラッシュ時の電車に乗らなくてはならない女性にとって、女性専用車両は一種の避難シェルターである。
にもかかわらず、その車両にわざと乗り込み、注意を無視して居座り、女性客の不安を煽る。女性専用車両を選んで乗ろうとする女性の中には、電車内で痴漢にあった性犯罪被害者の可能性も高い。そうした女性たちに対する嫌がらせとも取れる行為は、性犯罪被害女性への二次加害であるともいえる。
「差別されているのはこっち」!? 女性専用車両に強引に乗り込む男たちの嫌がらせ!
女性専用車両に反対するグループは、24日に渋谷駅前での街頭演説を予定していた。それを知ったヘイトスピーチや差別的街宣に抗議してきた人々が、いわゆるカウンター活動を展開したというのが冒頭の経緯である。
なお、街宣を阻止されたグループのリーダー格の男性は、24日、自身のツイッターで「カウンターは在日朝鮮人」と差別扇動目的のレッテル貼りの投稿をおこなっている。もちろん自分たちは日本人であるという前提であろう。
これはおそらくは、カウンターに対して「在日」というレッテルを貼る嫌がらせであろう。しかしよく考えると、おかしな話てある。
混雑の激しい大都市圏の通勤電車で、痴漢被害を受けるおそれのある女性に対して、安心できる環境を提供している女性専用車両。嫌がらせのように乗車するという実力行使に及んだ卑怯な男たちが日本人であり、そうした卑怯な行為に対して毅然と抗議をする勇敢でまともな男たちが、在日朝鮮人である、ということになる。これが本当なら、日本人男性としては実に不名誉なことになるのではないか。
実際、「お前たちだけ楽をして許せない」「差別されているのはこっちだ」との主張は、在特会などのヘイトスピーチ団体と全く同じ論理構造である。弱者への配慮を欠き、生活保護バッシングなどにも通底する、稚拙で悪質な八つ当たりだ。不寛容な社会の歪みが、ここにも浮かび上がっている。
痴漢に遭わない、されないための女性専用車両は男女双方に歓迎されるものだった~「女性専用車両反対」を掲げる男たち
首都圏を中心に、公共交通機関の通勤・通学時の混雑ぶりは凄まじい。「痛勤」と呼ばれるほど乗客を疲弊させ、身動きできないほどの混雑の中で、スリや痴漢のような犯罪もあとをたたない。鉄道各社はダイヤ改正や新型車両の導入などで混雑緩和に対応しているが、その中で痴漢対策として有効視されてきたのが女性専用車両である。
女性専用車両は、朝晩の混雑時に時間帯を限定して車両のひとつを「女性専用」とするものだ。1980年代に大阪の地下鉄で痴漢を咎めた女性が逆恨みからレイプされるという事件があり、交通機関での性犯罪防止の声が高まったことを受け、2000年以降、鉄道各社が女性専用車両を導入してきた。
▲街宣の団体に抗議する女性(読者提供)
また、混雑の中で痴漢に間違えられた男性客が逮捕、拘留される「痴漢冤罪」も多発している。痴漢を疑われて線路に降りて逃走、電車にひかれて死亡したケースまである。つまり、痴漢に遭いたくない女性、痴漢を疑われたくない男性の両方にとって、女性専用車両は好意的に受け入れられてきたはずだった。
「お前たちだけ楽をして許せない」「差別されているのはこっちだ」との主張は、在特会などのヘイトスピーチ団体と全く同じ論理構造である。弱者への配慮を欠き、生活保護バッシングなどにも通底する、稚拙で悪質な八つ当たりだ。
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