大阪北部地震から一週間を迎えた6月25日、午前10時より大阪府庁にて、第五回災害対策本部会議が開かれた。
出席者全員が、このたびの震災で亡くなった方への黙祷を捧げた後、被害状況についての報告がおこなわれた。死者数が5名、負傷者数が345名であること、住居被害に関しては家屋の一部損壊が351件であると報告された。
被災建築物の応急危険度判定の業務が、大阪府下の自治体職員だけでは追い付かず、近畿各県の自治体や、遠くは鳥取県や福井県からも自治体職員が派遣されていることも具体的に報告された。
大阪ガスからは、供給停止をしていた111,951戸への供給が復旧したとの報告がなされた。緩衝用ゴム(車でいうサスペンション)のゆるみが発見されたため、全車両の点検を実施していたモノレールも、間引き運転を再開した。被災地は日常を取り戻しつつあるが、6月25日午前7時30分時点で、まだ116箇所の避難所に、469名の方が避難していることが確認されている。
ガス供給の復旧、被害の把握が住宅被害中心となって集約されてきていること、被災市町村における対応が進んできているなどの理由から、今後の本部会議については、状況の推移をみながら必要に応じて開催することが発表された。災害対策本部は引き続き設置されることも、確認された。
本部会議に引き続き、松井一郎大阪府知事への囲み会見がおこなわれた。
今回の地震の後、SNS上に飛び交ったデマ情報の中には、在日外国人への差別をあおる悪質なものが多数あった。IWJ記者は、今後も予想される大規模な震災時に、在日外国人の生命を脅かしかないこのような悪質デマに対し、大阪府がどのような対応を取るのかを尋ねた。
松井知事は「ヘイトな表現が許されるべきではないというメッセージは、これまでも出し続けてますから」という、緊張感のない一般論を述べたうえ、「ヘイト表現については表現の自由というものと相まって、一定の法律的な措置が必要と思うが、今の憲法ではこれを法律で規制することが難しい」と、さりげなく現行憲法への批判もほのめかした。
さらにIWJ記者は、大阪府がIRでカジノ誘致を進めている夢洲(ゆめしま)に関して、「大阪北部地震が南海トラフ大地震の前兆現象ととらえる学者もいる。地震対策も含めたインフラ整備のため莫大な税金を投入してもなお、カジノによる経済効果が府民に恩恵をもたらすと考えているか」と質した。
松井知事は、「今回の地震と南海トラフ地震を関連付けるのは科学的に根拠がない」と断定した上で、「南海トラフの津波予想高を上回っている夢洲の地盤は、逆に南海トラフ地震に対しては強固なエリアだ」と胸を張った。
この知事の発言については、各方面からの検証が必要であることは言うまでもない。そして、今回のような震災を経てもなお、災害に対して高をくくったような維新府政・市政のあり方に対して、市民の中からも不安や疑問の声があがっている。
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松井知事が「大阪北部地震との関連がない」と言い切った南海トラフ地震については、2016年4月の熊本・大分地震の際に、岩上安身が、立命館大学環太平洋文明研究センター・高橋学教授にインタビューをおこなっている。ぜひご覧いただきたい。
また7月10日(火)には、関西学院大学災害復興制度研究所客員研究員の青木正美医師へ岩上安身がインタビューを行い、6月7日に南海トラフ地震の被害総額を土木学会が試算した件について、詳しくご解説いただいた。こちらもあわせて御覧いただきたい。