「『地下ピット』というのがあたりまえの言葉になっている。換気をすれば全て終わりになるような議論は、すり替えではないか」!?~第3回豊洲市場土壌汚染対策専門家会議 2016.12.10

記事公開日:2016.12.14取材地: テキスト動画
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(取材・文:城石裕幸)

 2016年12月10日(土)、築地市場講堂で「第3回豊洲市場における土壌汚染対策等に関する専門家会議」が行われた。

 この会議は、江東区・豊洲の新市場建物地下に盛り土がされていなかったことが発覚したことから、土壌汚染対策を再検討するために元の委員らが再招集されたもので、毎月1回開かれる会議の3回目にあたる。1回、2回は以下の記事をご参照いただきたい。

 専門家会議が指示した調査に従い、東京都が豊洲市場地下ピット(地下空間)内の空気を5回以上入れ替えた結果、ベンゼン・シアン・水銀などの有害物質の検出値がいずれの街区でも低下したものの、換気終了後は再び濃度が上がった。これを受け委員らは、「有害物質は、密閉された地下空間でたまり水から気化したため濃度が上がったものであり、換気が有効な手段」などと分析した。

▲専門家会議座長・平田健正氏

▲専門家会議座長・平田健正氏

■ハイライト

  • タイトル 東京都 第3回 豊洲市場における土壌汚染対策等に関する専門家会議
  • 日時 2016年12月10日(土)12:30〜
  • 場所 築地市場講堂(東京都中央区)
  • 告知 東京都中央卸売市場サイト

「換気をすれば全て終わりになるような議論は、すり替えではないか」市場関係者が訴え

 後半の傍聴者からの質疑応答では、市場関係者が次のように訴えた。

▲質問する市場関係者

▲質問する市場関係者

 「『土壌汚染対策として行われたはずの盛り土がされていなかった』という問題であったはずなのに、『地下ピット』というのがあたりまえのような言葉になっている。換気をすれば全て終わりになるような議論は、すり替えではないか。もともとなかったものを当たり前のように『地下ピット』などと表現するのもやめて欲しい」

日本環境学会幹事・坂巻幸雄氏「工事が始まる前からph11、導電率300(S/cm)とか400(S/cm)という水が排水されていた」

 過去2回と違い今回は、市場関係者だけでなく一般の傍聴も可能となった。

 日本環境学会幹事の坂巻幸雄氏は次のように質問し、述べた。

「専門家会議が提言した盛り土もされず、底面管理は地下水がどんどん上がってきて、せっかくのきれいな土が再汚染されるおそれがある。先生方は『地下水のphが高いのは工事のせいだ』とおっしゃるが、私たちの調査では工事が始まる前からph11、導電率300(S/cm)とか400(S/cm)(※)という水が排水されていた」

※導電率:液体中での電気の流れやすさ。水に溶け込む物質が多いほど、数値があがる。醤油がだいたい100S/cmとされる。

▲日本環境学会幹事・坂巻幸雄氏

▲日本環境学会幹事・坂巻幸雄氏

 坂巻氏は、「もう一度原点に立ち返って考え直すべきだ」と、東京都や委員らを強く批判した。

 2010年、岩上安身は坂巻氏にインタビューを行っている。以下の記事もあわせてご覧いただきたい。

一級建築士の水谷和子氏「そもそもヒ素の工場があったにも関わらず、汚染は自然由来だと決めてしまった」

 また、一級建築士の水谷(みずのや)和子氏は、「5街区の東南部にそもそもヒ素の工場があったにも関わらず、汚染は自然由来だと決めてしまった。環境基準の10倍を超える汚染が土壌から検出されたので、当然操業由来の汚染だと思っていたら、『含有量の基準』(※)というのを持ち出してルールを変えてしまい、それ以下だから大丈夫だと説明していましたが、含有量の調査自体もやらなくなった」と批判した。

※土壌含有量基準:土壌に含まれる特定有害物質の量の基準。これに対し、土壌に水を加えた場合に溶出する特定有害物質の量を「土壌溶出量基準」、地下水に含まれる特定有害物質の量を「地下水基準」という(土壌汚染対策法7条、31条1、2)。

▲一級建築士・水谷和子氏

▲一級建築士・水谷和子氏

 水谷氏にもIWJにご登場いただいている。以下の記事もあわせてご覧いただきたい。

 豊洲新市場の土壌汚染については、以下の記事もあわせてご一読いただきたい。

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