「なんだか便所掃除の話をしているみたいだ。『もともと汚いところなんだけど、これだけきれいに掃除したから、ここで握った寿司、みんな食べてくれるよね』という話になっている」――。
会議の最後に傍聴席から発言した「堺周商店」酒井氏のこの発言に、多くの市場関係者の気持ちが表れているのではないだろうか。
2016年10月15日(土)、築地市場講堂で「第1回 豊洲市場における土壌汚染対策等に関する専門家会議」が行われた。
(取材・文・城石裕幸)
特集 築地市場移転問題
「なんだか便所掃除の話をしているみたいだ。『もともと汚いところなんだけど、これだけきれいに掃除したから、ここで握った寿司、みんな食べてくれるよね』という話になっている」――。
会議の最後に傍聴席から発言した「堺周商店」酒井氏のこの発言に、多くの市場関係者の気持ちが表れているのではないだろうか。
2016年10月15日(土)、築地市場講堂で「第1回 豊洲市場における土壌汚染対策等に関する専門家会議」が行われた。
■ハイライト
この日の会議では、東京都の調査で、「盛り土」がされていなかった建物下の地下空間の空気から国の指針の最大7倍の水銀が検出されたことが公表された。
この点について、専門家会議座長の平田健正氏(放送大学和歌山学習センター所長)と委員の駒井武氏(東北大学大学院教授)は、水銀が検出された理由について、「詳しく調査を進めなければ現時点ではわからない」と話した。
今さら、「理由がわからない」と言い出すこと自体、意味がよくわからない。この新市場建設用地が東京ガスの工場跡地で、様々な毒物に汚染された土地であることが水銀検出の「理由」なのであって、それは誰でも知っていることではないか。
会議は当初2時間半が予定されていたが、最終的に5時間近くに及んだ。「専門家会議」側が用意した膨大な資料を読み上げるだけでもかなりの時間を要し、用意された100人の傍聴席を埋めつくした築地市場関係者らは、うつむいたり、不満を述べたりする場面が見られた。
「数字を出して『安全だ』というが、議論がずれている。安心は消費者が決めるものだ。大手スーパーや寿司屋が『当店では豊洲の魚は扱っておりません』と看板を出せば、豊洲は終わってしまう」
傍聴者からの質問で、そう訴えた仲卸し「山治」山崎氏は、「専門家会議と技術者会議が決めたことをしっかり東京都が守っていれば、こんなことはなかった。一度、市場を潰して、海の中に戻してもう一度きれいな土地でやり直してください。どうしても豊洲に行きたいんだったら」と、東京都の対応を批判した。