84.2%――。これは、2014年12月24日に発足した第3次安倍内閣における、「日本会議国会議員懇談会」に所属する閣僚の割合である。安倍総理はもとより、麻生太郎副総理、菅義偉官房長官、高市早苗総務相、塩崎恭久厚労相、岸田文雄外相など、主要閣僚はこぞってこの「日本会議議員懇談会」に所属している。
安倍政権の支持基盤であり、日本最大の右派組織として注目が集まっている「日本会議」。その主張は、改憲や家父長制の復活、総理大臣による靖国神社参拝、そして天皇の「元首」化などで、いずれも大日本帝国下における「国家神道」色が極めて強いものだと言える。
この「日本会議議員懇談会」以外にも、「靖国議連」は84.2%、「神道政治連盟国会議員懇談会」にいたっては94.7%を占めている。現在の安倍政権は、右派団体に占拠された状態なのだ。
2012年末の政権復帰以降、安倍総理の行動は、こうした右派団体が訴える主張と見事なまでに一致している。そして何より見逃せないのが、「安倍一強」のもとで選挙を勝ち上がってきた「安倍チルドレン」とも言える若手議員たちが、日本会議などが望む「国家神道」の復活を前面に押し出すような言辞を弄し始めていることである。
「日本は今年で神武天皇のご即位から数えて、2676年。イギリスよりもさらに長い歴史を持つ世界で最も古い国のひとつであります」(自民党・三原じゅん子議員、2016年2月20日)
「天皇の地位は日本書紀における『天壌無窮の神勅』に由来するものだ。日本最高の権威が国会の下に置かれている」(自民党・安藤裕議員、2016年11月17日)
「神武天皇」「天壌無窮の神勅」「天孫降臨」――。『古事記』『日本書紀』に記されたこうした「天皇神話」上の用語の数々は、戦後の日本社会において、多くの国民を誤った戦争に駆り立てたイデオロギーとして否定され、歴史の奥底に封印されたはずだった。しかし現在、日本会議に支えられた安倍政権のもとで、いともたやすく回帰してしまっているのである。
「天孫降臨」とは、天照大神(アマテラスオオミカミ)の命(天壌無窮の神勅)を受けた瓊々杵尊(ニニギノミコト)が、高天原(タカマガハラ)から高千穂峰に天下ったという神話のこと。その瓊々杵尊の3代後の神倭伊波礼琵古命(カムヤマトイワレヒコノミコト)が「東征」を行い、紀元前660年2月11日に現在の奈良県橿原市で「神武天皇」として即位した――。『古事記』『日本書紀』には、こうした「天皇神話」が記されている。
しかし紀元前660年といえば、日本はまだ縄文時代後期であり、大和朝廷のような王権が存在していたわけがない。「天孫降臨」も「神武東征」も、当然のことながら神話に過ぎない。しかし、三原議員や安藤議員、さらには報道機関であるはずの産経新聞まで、こうした神話をあたかも「事実」であるかのように言及しているのだ。
しかし、日本の「神道」とはそもそも、日本列島が誕生したはるか昔から連綿と続く宗教なのではなく、その時代時代において、時の権力者が民衆を統治するために編み出した政治システムに過ぎない――。そう指摘するのは、島根大学名誉教授で『「神道」の虚像と実像』などの著作がある井上寛司(ひろし)氏である。
岩上安身は、2016年11月22日、23日、12月15日の3日間にわたって、井上氏への単独インタビューを敢行。古代から現代に至る「神道史」の流れを徹底的に聞いた。本記事では、主に古代の内容を扱った1日目の内容をお伝えする。