2015年9月に強行的に成立した安保法制は、2016年3月までに施行される。共産党ら野党5党は共同で、安保法制の「廃止法案」提出を目指している。しかし施行まで約3カ月、残された時間は短い。
しかし当の政府も、実際の運用開始までの準備や、運用する上で必須である安全保障に関する認識が、追いついていない。
「安保法制の成立は、粛々と進められてきた米軍の傭兵になる計画の通過点にすぎない。今の政府与党や防衛省は歴史感覚が欠如し、非常に近視眼的だ」
2015年12月6日、岡山県倉敷市のマービーふれあいセンターで、東京新聞特別報道部記者の田原牧氏による講演会「中東におけるイスラム社会とテロ(IS)、そして安全保障関連法の成立と集団的自衛権が私たちに迫る課題」が行われた。
田原氏は、フリーのジャーナリスト活動を経て中日新聞社に入社した。1995年から1996年までエジプトのカイロ・アメリカン大学(AUC)に留学。1997年から2000年まで中日新聞のカイロ特派員。現在は東京新聞『こちら特報部』デスクを務める。2014年には著書『ジャスミンの残り香──「アラブの春」が変えたもの』で第12回開高健ノンフィクション賞を受賞した。
田原氏は、講演の前半、ダーイッシュ(IS)の台頭について、彼らが属するスンニ派サラフィー主義、カリフ制の復活、初期の厳格なイスラム教を取り戻すという思想について説明。「イスラム系の過激派は、過去にもたくさんいたが、フセインやカダフィなどの独裁者が排除されたことで活発化した」と言い、「延々と続くイデオロギーがあるので、彼らを思想的に根絶することは不可能だ」と言明した。
後半は、日本の安保法制について、その危険性や不備を列挙して疑問を投げかけた。日本の自衛隊は、2009年からソマリア沖で警察活動を行う多国籍軍に参加し、ジブチには自衛官600名が常駐している。さらに、南スーダンには、米軍の特殊部隊にあたる自衛隊の中央即応集団100名を派遣している。田原氏は、「アメリカにとって、アフリカはシーレンの戦略的な重要拠点。近くにアルカイダ系のソマリアもあり、この任務はとても危険だ」と指摘した上で、これらの自衛隊の動きは、米軍の負担軽減のためではないかと推察した。
また、2010年に警視庁外事3課の内部文書が流出した事件で、その文書を読んだという田原氏は、日本のテロ対策の脆弱さに呆れたという。そして、「安倍政権は、わざわざ嫌われているアメリカと仲良くし、恨まれる側に立っている。むしろ、欧米にも日本もアラブ諸国にもプラスになる立ち位置を模索し、仲介する外交政策をとるべきだ」と、日本の進むべき方向を説いた。
最後に、江田五月参議院議員がスピーチに立ち、憲法は戦後70年にして根底からの危機に晒されていると憂慮を示し、「価値観の違う人たちと共存しなければ、世界は保てない。ところが、(安倍政権は)価値観の違う者たちとは共存しない、と集団的自衛権をもって宣言してしまったのだ」と批判した。
田原牧氏 「オバマ大統領は脱イスラエルに向かっているにもかかわらず、安倍政権はイスラエルに接近した。これまで慎重な外交を続けていた日本の姿勢と、日本を尊敬していたアラブ諸国からの評価を一気に壊した。」 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/277903 … @iwakamiyasumi
https://twitter.com/55kurosuke/status/686864035799695360