「政府は、沖縄があきらめるのを待っている」 〜国が私人になりすまして工事強行、機動隊まで投入された「辺野古の今」 2015.11.5

記事公開日:2015.11.18取材地: テキスト
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(取材:松井信篤、文:IWJテキストスタッフ・関根かんじ)

※11月18日テキストを追加しました!

 「民意を無視していいのか。沖縄は、主権者を代表する政府を持ち得ているのか。日本国民は、自由、民主主義、人権、自治を共通の価値とする政府を持っているのか」──沖縄タイムスの宮城栄作氏はこのように訴え、辺野古の問題には安保法制と同様、安倍政権の「やりたいことをやる」姿勢が透けて見えると指摘した。

 米軍普天間基地の辺野古移設を巡る、現地での攻防が激しさを増している。翁長雄志沖縄県知事による岩礁破砕許可取り消し(2015年3月)、公有水面埋立承認の取り消し(2015年10月)に対し、沖縄防衛局は行政不服審査法を使って、翁長知事の指示を無効化しようとしている。しかし、行政不服審査の申請は、私人が行政に対して行うものだと宮城氏は指摘し、「国も私人の立場になり得る、という理屈で強行した」と厳しく断じた。

 2015年11月5日、東京都千代田区の弁護士会館にて、シンポジウム「辺野古の今を知る ~新基地建設計画の問題点と埋立阻止の可能性」が開催された。まず、沖縄タイムス東京支社編集部長の宮城栄作氏が、辺野古移設までの経緯、埋立承認の瑕疵、翁長知事の同承認取消と、国の対抗措置について要旨を語った。後半は、東京弁護士会の藤川元氏が司会を務め、辺野古埋立承認取消訴訟弁護団事務次長の金高望氏と、琉球大学教授の徳田博人氏が、さらに問題点を掘り下げて解説を加えた。

 徳田氏も、行政不服審査を使う政府のやり方を問題視し、法的な解説を追加した上で、「今回の問題は裁判に委ねるしかない。しかし、沖縄防衛局は私人になって(翁長知事が出した)取消の執行停止を求めた。これは『私人なりすまし』だ」として、国が法律の解釈を変えたことを批判した。

 「沖縄県と名護市の工事許認可の権限は大きい」と話すのは金高氏である。両者が、辺野古への移設に反対する限り、工事は着工できないとし、政府は「本体工事着工」と言っているが、現在はガレキ処理をしているだけだと指摘した。「それでも国が工事を続けるのは、沖縄があきらめるのを待っているのだろう」。

 徳田氏は、「権力者が権力を使う際には、法的安定性で縛らなければいけないが、仲井眞前知事、国交相、防衛省、内閣は法的安定性を踏みにじっている」と述べ、これを許してしまえば悪しき前例となって、沖縄だけでなく、あらゆるところで軍事のためなら何でもOKになる、と危惧した。

記事目次

反対派市民を排除する「鬼」や「海猿」

 冒頭、東京弁護士会会長の伊藤茂明氏が、「9月13日、翁長知事が辺野古新基地建設執行停止を決めたが、翌日、防衛省は行政不服審査請求を行ない、工事は開始された。東京弁護士会は、違憲の安保法制の問題に取り組んできたが、辺野古の問題も無関係ではない」と語った。

 続いて、宮城栄作氏が登壇。11月4日に「鬼」の異名を持つ警視庁の機動隊100人が辺野古に現れ、建設に抗議する市民を手荒に排除したことを告げ、「東京都民の税金が使われる警視庁機動隊が、沖縄に来て、老人も多い反対派の市民に、いじめ以上の行為をしている。もはや、都民も無関係ではなくなった」と口火を切ると、辺野古問題の経緯について語っていった。

▲沖縄タイムス東京支社編集部長の宮城栄作氏

 辺野古基地の問題は、1995年の米兵による少女暴行事件が発端だ。沖縄の民意は反基地へと高まり、1996年、当時の橋本龍太郎首相とモンデール駐日米国大使の会談で、代替施設の提供を条件に、普天間基地の返還に合意した。「実は、艦船停泊が可能な基地建設計画が財政難で頓挫していた米軍には、これは渡りに船だった」と宮城氏は言う。

 1999年、当時の稲嶺恵一知事と名護市が、辺野古に基地を受け入れることを承認し、内閣で閣議決定された。ただし、撤去可能な海上施設であること、使用期限は15年、新空港の軍民共用などが条件だった。2005年、米軍再編で、辺野古V字滑走路案の合意。また、V字滑走路以外にも、揚陸艦の繋船(けいせん)ができるバースも付加された。「もはや、辺野古は普天間の代替施設ではなくなっている」。

 2013年、仲井眞弘多前知事は、普天間基地の県外移設を掲げて当選したが、12月27日、辺野古埋立承認へと手のひらを返した。翌年、政府はボーリング作業など埋立調査のために海上を封鎖。宮城氏は、「国民より外国に便宜を図るのが、主権国家なのか」と苦言を呈した。

 海上封鎖に抗議する市民への海保職員(海猿)の暴行によって、ケガ人が多数出ているが、海上保安庁は「適切に対応している」としか答えない。2015年2月22日には、米軍の警備員が反対運動のリーダーの山城博治氏を拘束、警察に引き渡してもいる。これらの市民弾圧が辺野古で行われていることを、大手マスメディアは詳しく報道しない、と宮城氏は語り、「国民には真実が伝わらない」と悔しさを滲ませた。

 調査のため、辺野古の海底には20トンや45トンのアンカーを埋設しており、サンゴ破壊が懸念される。宮城氏は、「ブロック設置には許可がいる。これは無許可でやった可能性もあり、翁長知事は3月23日、調査のため工事中止を防衛局に指示した。だが、国は農水相に効力停止の停止処分を求めた。今回(埋立承認の取り消し)も同様だが、そもそも行政不服審査申請は、私人が行政に行うものだ。それを、国も私人の立場になり得る、という理屈で強行した」と指摘した。

▲シンポジウム中に紹介された画像には、市民の抗議船に乗り込む海保のようすが写っている

辺野古埋立承認検証委員会が出した「4つの瑕疵」

 翁長知事が設置した第三者委員会(辺野古埋立承認検証委員会)は、2015年7月16日、埋立承認の瑕疵報告書をまとめ、4点の瑕疵を以下のように指摘した。

  1. 埋立の必要性(普天間の危険性除去のために、なぜ、県内の辺野古なのか、合理的説明がない。埋立の必要性の要件を満たしていない)。
  2. 国土利用上、適正かつ合理的か(埋立てる利益、不利益の比較検討がなく、立証不十分)。
  3. 環境保全配慮(調査不十分、説明不足)。
  4. 土地利用、環境関連法などに反する。

 8月、国は沖縄と集中協議をするが決裂。10月13日、翁長知事は辺野古の埋立承認を取り消す。その理由について、「沖縄の思いは理解されず」「第三者委員会の報告をもとに判断」「国民の前での論議に意義がある」「地方自治のあり方に疑問」「沖縄の責任、というのは政治の堕落」と列挙した。

 10月14日、防衛省沖縄防衛局が、国交省への不服申し立て。21日、翁長知事は国交相に、防衛局の申し立てはおかしいとして意見書を提出した。27日、石井啓一国交相は、県の承認取り消しの執行停止、代執行手続きに着手。その理由を、「沖縄防衛局は一般私人と同様に不服申し立てが可能」「取消で、普天間飛行場の移設の継続が困難になる」「普天間の周辺住民が被る危険性、騒音被害が継続」「米国との信頼関係、日米同盟に悪影響を及ぼす」などとしている。

 宮城氏は、「国として埋立承認を求められると、国の立場で承認するが、自分たちが不都合になると私人になり、行政不服審査法を行使する」と呆れてみせた。

 これに憤った翁長知事は、「執行停止は国の違法な関与だ。第三者の判断がなされるまで、作業は開始すべきではない」とし、11月2日、係争処理委員会に不服審査を申し出た。勧告が出るのは90日後。その後は、高等裁判所への提訴に進むことになる。

 宮城氏は、「行政不服審査法とは、国民の権利利益の救済制度。国が、国の機関として固有の資格で処分を受けた時は対象にならない。国交相は、不服審査請求の採決を先にせず、作業が再開できるように代執行手続きをした。明らかに強引に進める気だ」と危惧する。

 10月7日の内閣改造で、菅官房長官の肝入りで就任した島尻あい子沖縄担当相は、辺野古移設の推進を表明している。宮城氏は、政府は沖縄世論の分断を図っているとし、「10月26日には、移設反対の名護市長を通さずに、移設を条件付きで容認している地元の辺野古、久志、豊原の3区長を首相官邸に呼び、直接、振興費3000万円の拠出を伝えた。これは、税金の使い方としても大きな問題がある」と指摘した。

沖縄は、県民を代表する政府を持ち得ているのか

 沖縄タイムズの世論調査(10月16日~18日)では、79.3%の人が翁長知事の埋立取消を支持(支持しない16.1%)。建設再開については、72.3%が妥当ではない(妥当20.8%)とし、「裁判で沖縄県の主張は認められるか」との問いには、50.1%が期待できる(期待できない33.9%)と回答している。

 2016年に予定されている沖縄での選挙は、1月の名護市長選挙、6月の沖縄県議会議員選挙、7月の参議院選挙である。宮城氏は、「どれも辺野古基地が争点になる」と力を込める。その上で、基地建設阻止の手段になる、翁長知事と名護市長の権限を、以下のように説明した。

 「川の水路変更、土砂運搬方法の変更は承認の見通しはない。岩礁破砕許可の取消。サンゴ移植のための特別採種の許認可権。名護市長には、辺野古港周辺使用の作業ヤード設置に関する権限がある。辺野古ダムや美謝川の占有形状の変更。文化財の発見で、調査の必要性も出てきた。外来土砂搬入規制条例が成立した」

 在日米軍占有基地の74.4%が、国土0.6%の沖縄に集中しているが、宮城氏は、「米軍の戦略でも、海兵隊が沖縄にいる必要はない。安保法制同様に(安倍政権が)自分たちのやりたいことを通す、という姿勢でしかない」と指摘し、このように語気を強めた。

 「民意を無視して、そんな基地を造っていいのか。沖縄は、主権者たる県民を代表する政府を、持ち得ているのか。日本国民は、自由、民主主義、人権、自治を、共通の価値とする政府を持っているのか」

「県民vs県」の争いが「県民と県vs国」に変わった

(…会員ページにつづく)

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「「政府は、沖縄があきらめるのを待っている」 〜国が私人になりすまして工事強行、機動隊まで投入された「辺野古の今」」への2件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    「政府は、沖縄があきらめるのを待っている」 〜国が私人になりすまして工事強行、機動隊まで投入された「辺野古の今」 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/273713 … @iwakamiyasumi
    辺野古の問題には安保法制と同様、安倍政権の「やりたいことをやる」姿勢が透けて見える。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/665138634358571009

  2. あのねあのね より:

     べた凪(なぎ)の海上で写真のクラスの船が転覆すると云うのは余程のことです。いかなる場合にも海上保安庁の職員がここまでやるしことは絶対に許されない。刑法193条に規定されている公務員職権濫用罪を適用すべきだ。告訴または告発することを強く望みます。

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