「日本の民主主義ということに対して、国民全体が考えるようなものになればいいなと思っています」。翁長雄志沖縄県知事は2015年10月13日、仲井眞弘多前知事による辺野古の埋め立て承認に「法的瑕疵」があるとして、その取り消しを発表。知事就任から約10ヶ月、初めて、基地建設の直接的な阻止行動に踏み切った。
埋め立て承認の取り消しとはつまり、政府が辺野古移設の工事を進める「法的根拠」を失うということだ。しかし政府は、沖縄県に真っ向から対立して工事を進める強気の姿勢を崩さない。
菅義偉官房長官は沖縄県の判断に対し、すぐさま「法的瑕疵はない」と反論。行政不服審査法に基づき、「不服審査請求」と「執行停止」の申し立てを検討しているとコメントした。これにより、政府と沖縄県の「全面対決」は司法の場に移ることになる。
緊急記者会見で、記者から取り消しを決定した意義を聞かれた翁長知事は、「沖縄が集中的に背負っている基地問題を通して、国民が日本の民主主義について考える機会になればいい」と述べ、国による対抗措置に揺らぐことなく、「今後も辺野古に新基地を作らせないという公約の実現に向け、全力で取り組む考えだ」と覚悟を見せた。
- 日時 2015年10月13日(火) 10:00~
- 場所 沖縄県庁(沖縄県那覇市)
国と私人は同じ!? 政府が編み出した荒技「不服審査請求」とは
政府は、以前にもこの「不服審査請求」と「執行停止」を用い、翁長知事の指示効力を無効にしている。
今年3月、大浦湾海底に設置したコンクリートブロックが貴重なサンゴ礁を傷つけている問題を受け、翁長知事は沖縄防衛局に移設作業の停止を要請した。沖縄防衛局はこれを「不服」とし、農水相に審査請求を求め、当時の林芳正農水大臣がこれを承認。翁長知事の指示効力を停止させたことがあった。
今回も沖縄防衛局は、14日にも、3月と同様に審査請求を申し立てる動きを見せている。再度、この「不服審査請求」が認められれば、またも翁長知事の指示効力は停止することになる。つまり、仲井眞前知事の埋め立て承認は取り消されず、国は工事を続行することができるのだ。
しかし本来、「不服審査請求」とは「私人」が行政機関に不服を申し立て、紛争の解決を求める法的な手段である。公的機関である国(沖縄防衛局)が「私人」という立場を取り、申請する資格があるのかどうかという点に、多くの疑問の声があがっている。まさに荒技である。
3月の予算委員会でも社民党の福島みずほ議員が、沖縄防衛局が「不服審査請求」をする適性があるのか、中谷防衛大臣に問いただした。中谷大臣は「国が事業者である場合も県知事の認可が必要であり、私人が事業者である場合と変わりがないために、国に申し立ての適格があるものと認められた」と、苦しい答弁を披露した。