2014 年春、福島で驚くべき事件が起こった。生活保護を受給している福島県福島市のNさんの娘は、母子家庭の苦しい生活のなかで、なんとか高校に入学し、給付型の奨学金を得ることができた。すると福島市はこの奨学金を収入認定し、生活保護費を減額したのだ。
Nさんは、「収入認定は納得できない」として、同年9月に福島県知事に審査請求をしたが、11月に県知事はその請求を棄却した。さらに12月末には厚労大臣に再審査請求をし、2015年4月には福島地裁に処分取り消しと国家賠償を求めて裁判を起こした。
8月6日、厚労大臣は福島市福祉事務所長の処分と、県知事の棄却を取り消す決定を下した。しかしこの決定にも関わらず、福島市は「収入認定は間違っていない」としている。NさんとNさんの支援者らは、奨学金を収入認定しないよう、国に訴える裁判を継続中だ。
「生活保護世帯の子どもは夢も希望も持ってはいけないのか? ケースワーカーから『奨学金を収入認定する』と言われて最初に感じた思いでした。娘が自らの努力で手にした奨学金が、たった一言でなかったことにされるなんて、黙っていられるか。そして今後、保護世帯の子どもたちに同じような思いをさせてはいけない」——。
壇上にあがったNさんの代理人は、Nさんの言葉を読み上げた。
これは、この国で行われている「弱者切り捨て」のほんの一部である。2015年10月28日、4000人の市民が日比谷野音で、国民の生存権と国の社会的使命を定めた「憲法25条」の遵守と、生活保護費切り下げの中止を訴えた。
■憲法第25条
第1項 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。 第2項 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
▲平日水曜日の午後にも関わらず日本全国から参加者が集まった
1980年代には比較的格差が少ないとされていた日本だが、現在は格差が広がり、深刻な貧困が大きな社会問題となっている。しかし誤解と偏見、悪意に満ちた生活保護バッシングを利用して、政府は生活保護基準の不当な厳格化や保護費の切り下げを行っている。
この日、病気や障害・失業など様々な理由から生活保護を利用しなくては生きていけない大勢の当事者や関係者たちが、生活の苦しさをステージの上で語った。
- 13:30〜 集会開始/15:30〜 銀座方面へパレード
金子勝氏「『1億総活躍社会』と言いながら生活保護切り下げはありえない」
呼びかけ人の一人である経済学者の金子勝氏は、安保法制の採決強行やTPP大筋合意の強行、原発再稼働や辺野古埋め立て工事の強行など、憲法や国会、民意を繰り返し無視し続ける安倍政権の姿勢を糾弾した。
▲呼びかけ人の一人 経済学者・金子勝氏
「安倍政権は『一億総活躍社会』と言うが、今や65歳以上の高齢者は3300万人、非正規雇用は2000万人、障害者は800万人、失業者は600万人、もう既に(人口の)半分近くがこういう状態に入っているこの国において、1億を本当に活躍させるつもりならば、生活保護の切り下げなどということはありえないはずだ!
多くの人々が本当に参加して、自立して社会に関われるような仕組みを作っていくことこそ、本当の総活躍の社会ではないか」
山本太郎氏、「財源はある!」と外遊での安倍総理の「バラマキ」を指摘!
同じく壇上に立った山本太郎参議院議員は、「お腹が空くのは苦しいけれど、我慢しています」という貧困にあえぐ高齢者の声を紹介し、「どこが健康的だ? どこが文化的な生活だ? どうして生き下げなければいけないのか?」と訴えた。
▲参議院議員・山本太郎氏
そして、外遊中の安倍総理が中央アジアの国々に2兆3000億円の「バラマキ」を行っていることを指摘し、「お金はあるじゃないか。財源がないのではなく、そのお金の使い方が違うんだ!」と批判した。
「誰一人、貧困に殺されない社会。そんな当たり前のために、私たちは声を上げ続ける」
集会の終わりには、呼びかけ人であり司会を担当した作家・雨宮処凛氏が、生活保護切り下げの当事者と一緒に作ったという「25条大集会・集会アピール案」を読み上げた。
「25条大集会・集会アピール案」
貧困は、お金だけの問題ではない。
貧困は、人間の尊厳を破壊する。
人間関係を奪い、社会や他者への信頼も奪う。
教育の機会、医療へのアクセス、住む権利――。
住民登録を奪い、選挙の機会も奪う。
人並みの生活、そのすべてを奪い去る。
そして、自分は生きていい、価値ある人間なのだという自己肯定感も奪う。
自分は少しくらい迷惑をかけても助けられていい人間なのだ、 SOSを発信していいのだ――。そんな気持ちも奪う。
貧困が奪うもっとも大きなものは、 生きる上で一番大切かもしれない「助けて」という言葉ではないだろうか。
私たちは、無差別平等に生きる憲法と制度を持っている。
貧困に命を奪われないためのしくみはある。
私たちはもっと「助けて」と言っていいし、 私たちはもっと「助けて」と言われていい。
生活保護制度という命の砦を、私たちは守り、 より良いものに作り変えていく義務がある。
誰一人、貧困に殺されない社会。
そんな当たり前のために、私たちは声を上げ続ける。
▲司会を担当した作家・雨宮処凛氏
▲日比谷野外音楽堂から見える厚生労働省に向かってシュプレヒコールを上げる4000人の参加者たち
集会後、日比谷公園を出発したデモ隊は8つの梯団に分かれ、東京駅手前の鍛冶橋まで約45分をかけて銀座をパレードした。
▲夕暮れの銀座をパレードするデモ隊
山本太郎のバイタリティーに驚愕しています!!!!
若さは良いなアァァ
山本太郎参議院議員は、「お腹が空くのは苦しいけれど、我慢しています」という貧困にあえぐ高齢者の声を紹介し、「どこが健康的だ?どこが文化的な生活だ?お金はあるじゃないか。財源がないのではなく、そのお金の使い方が違うんだ!」
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/272481 … @iwakamiyasumiさんから
https://twitter.com/55kurosuke/status/942314351867731970