「生活保護バッシング」は、2012年春、芸人・タレントとして知られる次長課長の河本準一氏の母親が、生活保護を受給していると報じられたことに端を発した。2012年12月に政権を奪取した自民党は、社会保障費の削減に着手し、生活保護費もその対象になった。
2013年8月には、これまでで最大の生活保護受給の基準引き下げがあり、同年12月には、不正受給の罰金を従来の30万円から100万円に引き上げるなど、保護費の抑制を目指した改正生活保護法、困窮者自立支援法が成立した。
これら生活保護費用抑制に向けた動きに見られるように、生活保護に対する風当たりが強くなる中、生活保護問題対策全国会議設立7周年を記念して、「”生活保護バッシング”は何をもたらしたのか」と題した集会が、7月20日(日)に東京都新宿区の日司連ホールで開催された。
- 基調講演 安田浩一氏(ジャーナリスト)「生活保護バッシングは何をもたらしたのか」
- 特別報告 徳丸ゆき子氏(大阪子どもの貧困アクショングループ代表)「シングルマザー調査から見えるもの」/青砥恭氏(さいたまユースサポートネット代表)「就学援助制度と子どもの貧困対策を考える」
- リレー報告 吉祥眞佐緒氏(エープラス代表)「基準引き下げ・法『改正』はDV被害者に何をもたらすか」/稲葉剛氏(自立生活サポートセンター・もやい代表)「ハウジングプアと『住宅扶助基準の引き下げ』」/普門大輔氏(弁護士、大阪市生活保護行政問題調査団事務局長)「大阪で今、何が起きているか」/安形義弘氏(全国生活と健康を守る会連合会会長)・徳武聡子氏(司法書士、生活保護基準引き下げにNO!全国争訟ネット事務局)「生活保護基準引き下げにどう対抗するか」
- まとめ 尾藤廣喜氏(弁護士、生活保護問題対策全国会議代表)
街頭デモで「可視化」された、生活保護バッシング
「生活保護バッシング、在日外国人バッシング、ヘイトスピーチ。それらは、別個の問題ではなく、すべて地続きである」
『ネットと愛国 在特会の「闇」を追いかけて』(講談社、2012.4)などの著書があり、在特会をはじめレイシストデモを精力的に追いかけるジャーナリストの安田浩一氏は、講演の冒頭でこう語った。
安田氏によると、これまでも外国人差別などと同様に「生活保護バッシング」も存在したが、これが今、街頭デモなどの行動で可視化された状態になっているのだという。
毎週末に行われているというデモの映像が、会場で流された。
「殺せ!」などと叫び、「竹島を日本領と言えない奴は殺せ」と書かれた横断幕を掲げながら、闊歩する人々。西日本最大の在日韓国・朝鮮人集住地域である、大阪市鶴橋で「南京大虐殺ではなく、鶴橋大虐殺を実行しますよ」と叫ぶ女性の姿が映し出された。
この女性は、当時まだ中学2年生だったという。彼女以外にも、中学生・高校生・会社員・無職の人など、デモ参加者の属性はいろいろだが、彼らに共通するのは、自分たちは福祉の恩恵を受けていないという、「被害者意識」なのだと、安田氏は分析する。
在特会は、間違った「被害者意識」を与えている
こうした排外差別デモを主催するのは「在日特権を許さない市民の会」、在特会だ。安田氏は、自身が在特会を知るきっかけとなったエピソードを振り返った。
2007年、ある中国人男性の遺族が起こした訴訟により、宇都宮地裁で裁判が行なわれた。中国人男性は、実習生として来日したものの不法滞在となり、警察官に在留許可証の提示を求められたことから逃走した末、警官が発砲した銃弾を受けて死亡した。
裁判に対して抗議の声をあげ、裁判所の前に集まる人々が安田氏の目に止まった。ごく当たり前に町を歩いている、一般市民といった姿格好の彼らが掲げる横断幕には、「不逞支那人は射殺せよ」という差別的な言葉が書かれていたという。
「2ch(インターネット上の匿名掲示板)を見て駆けつけた」という彼らの言葉を手がかりに調べていくと、「在特会」の存在に辿り着いた。安田氏は、在特会が生活保護について、「日本では毎年2万人が経済的な理由で自殺する。なぜなら生活保護が正当に支給されていないから」と訴えていることについて、「そこまではその通りである」と同意する。
しかし、そのあとに続く「生活保護が行き渡らないのは、不正受給と在日外国人の受給のせいだ」というのが問題であり、在特会は、「権利を獲得したい」と思っている人を、間違ったところへ引きずり下ろすのだと、安田氏は指摘した。
「日本人差別をなくそう」という在特会が作成するチラシには、「年計2兆3千億円が在日朝鮮人の生活保護費として使われている」などと、間違った数字が並んでいるが、幹部は誤りだとわかっていながら、それを作成し、配布しているのだという。
生活保護問題対策全国会議代表尾藤廣喜弁護士は、「弱いもの同士が足を引っ張り合う」ことが「生活保護バッシング」で起きていると指摘したが、安田氏は、インターネットを通した草の根的な動きのみならず、政治家が生活保護を非難する動きも出ていると指摘した。
「暴力や差別」を許容している日本
自民党の片山さつき参議院議員は、週刊誌での安田氏との対談において、「誰が見ても、困窮状態の人でなければ、受給資格はない」との趣旨の発言をしたと、安田氏は紹介した。
片山議員にとって生活保護受給者は「努力していない人たち」であり、「受給は日本の恥」などというような考えも披露しているという。
この認識は片山議員だけでなく、日本を「じわじわと侵食するもの」だと見ている安田氏は、「この醜悪な光景、現実にどう対抗していくか、その答えはなく、無力に打ちひしがれている」と明かした。その上で、「暴力や差別」を許しているのが日本という国だとの認識のもと、「どう対抗できるのか、一緒に考えていくべきではないか」と訴えた。
繰り返される暴力や貧困という「負の連鎖」
バッシングを受けているのは「生活保護」ではなく「不正受給」では?
本来であればカウンターパートとして「不正受給を許すな!生活保護を正しく運用せよ!」と言うべき立場かと思いますが?
不正に生活保護を受けた者が非難されるのは当たり前のことだ
生活保護を受けること自体に差別があるとは、聞いたことがない
ダイジェストを見た限りで講演内容を推測すると、問題の現象は1970年代の校内暴力のまんえんからイジメのまんえんと云う流れによく似ています。問題解決の為に事象の発生原因を無くす方向に向かわずに、原因を違うもだと故意に断定し、弱い者イジメをするという方向で“気分の解消”に向かわせて実際の事象の発生原因である権力者の支配をむしろ強化するという流れです。
これは最低で最悪の“解決方法”ではあるが、ヘイトスピーチ等のプレイヤーが気付かずにむしろ善意で進んでやっていることから、専門家が大枠のシナリオを書いている可能性が高いです。その下のこまかい振り付けをする“実務家”も充実しているようです。
詐欺や詐欺商法やマルチ商法や演劇や映画や芝居の舞台の如く、原作演出振り付け監督製作総指揮という仕組みが理解できていると理解しやすいだろう。中年に成っている人は、校内暴力のまんえんからイジメのまんえんと云う流れを思い出して理解する必要は有りますね。
生活保護バッシング・差別は実際にあります。
「生存ギリギリの生活をするべき」、「生活保護団地を作り、全員そこに入れるべき」、「現金を渡さず、現物や食券などで支給するべき」などは、比較的穏やかな意見ですが、「ナマポは全員〇ね」等の感情的な差別発言も多くあります。
こういった背景には、働いても働いても収入が厳しいのに、なぜ生活保護受給者は・・・という不満が見えます。また、某メディアが取り上げた「月29万でも生活が苦しい」のような記事が、さらに火に油を注いでいます。
実際は、そのような額を全員がもらっているわけもなく、ごく一部の事例にすぎません。就労世帯は足りない分のみの支給になりますから、数万円~場合によっては0円になることもあります。
なぜ、各メディアはこのような例ばかりを出し、就労している世帯の例を出さないのか。「話題性」という言葉しか浮かびません。
繰り返される「暴力」や「貧困」という名の負の連鎖――生活保護バッシングは何をもたらしたのか http://iwj.co.jp/wj/open/archives/155173 … @iwakamiyasumi
生活保護バッシング、在日外国人バッシング、ヘイトスピーチ。それらは、別個の問題ではなく、すべて地続きである。
https://twitter.com/55kurosuke/status/886570328641617920