「餓死と生活苦の自殺をなくしたい」〜女性の3分の1、男性の4分の1が「貧困」で苦しむ中、年間「食品ロス」が800万トン! 食品廃棄の現実! 2015.9.11

記事公開日:2015.10.14取材地: テキスト動画
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(IWJ編集部)

※10月14日テキストを追加しました!

 「貧困は手当が早ければ早いほど抜け出しやすい。フードバンクを自立のための踏み台にしてください」――。

 2015年9月11日に川崎市中原市民会館において「フードバンクかわさき講演会 その2」が開催された。講演したフードバンクかわさきの代表・高橋実生(たかはし みお)さんは、自身のDVに遭った経験などもまじえ、日本の「貧困」の実態と、貧困層に無償で食料などを支援するフードバンクかわさきの活動を紹介した。

記事目次

■ハイライト

  • タイトル 「フードバンクかわさき講演会 その2」
  • 日時 2015年9月11日(金)18:30〜20:30
  • 場所 川崎市中原市民会館(川崎市中原区)
  • 主催 フードバンクかわさき詳細、Facebook)

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賞味期限の3分の1を過ぎると捨てられる食品は年間500万トンから800万トン! コメの年間生産量に匹敵する!

▲講演するフードバンクかわさき代表・高橋実生(たかはし みお)さん

 フードバンクは、「食品ロス」と呼ばれる、「賞味期限前に捨てられる規格外品」などを無料で引き取り、無料で生活困窮者に配布するといった活動を展開している。

 「食品ロスは年間500万トンから800万トン、コメの年間生産量に匹敵します(※)。その中には賞味期限よりも相当前に捨てられるものもたくさんあります」

 ※農水省によると平成26年度のコメの総生産量は843.5万トン。

 賞味期限は、風味が落ちるというだけで、腐ったり、傷んだりしているわけではない。十分に食べられる。その食べられる食品が廃棄されているのである。

 高橋さんは「食品ロス」の実態を紹介し、「流通業界では、製造から賞味期限までの3分の1が過ぎると店頭に並ぶことなく捨てられる、『3分の1ルール』という決まりがあります。その『もったいない』を、『ありがとう』の笑顔に変えていくのが私たちの活動です」と話した。

「食品ロス」の半分は家庭から 「家庭ゴミのうち、手つかずの食品が17%」

 一方で、私たちのものの買い方などにも食品ロスをうみだす原因があるという。

 「私たちは日頃、スーパーなどで買物をする時、つい無意識のうちに棚の奥からとって買ってしまいます。スーパーや小売店では棚にきっちりと商品を揃えることを目標としますので、手前の商品が食品ロスにつながってしまうのです」

 また、「賞味期限」と「消費期限」を混同してしまうことも原因のひとつだ。美味しく食べられる期限を示すのが「賞味期限」で、期限を過ぎてしまうと品質が劣化してしまうのが「消費期限」だが、京都大学の調査によると、家庭ゴミのうち、手つかずの食品が17%で、そのうちの21%がまだ賞味期限前なのだという。「食品ロスのおよそ半分が家庭から生じている」と高橋さんは警鐘を鳴らした。

DVから逃れた高橋さんを待ち受けていた「貧困」

 高橋さんはかつて家庭内暴力(DV)に遭い、3歳半と9ヶ月の子どもを連れて避難した経験がある。その先で高橋さんを待ち受けていたのが「貧困」だった。

 「DVから逃れてみたら、被害者たちへのセーフティーネットは生活保護だけです。生活保護を受けるか、(DVを)我慢するかしか、被害者には選択肢がないともいえます。自分が被害者なのに貧困に陥らなければならない。これは、とても理不尽なことです。周りに相談しようともしましたが、『DVをする相手を選んだあなたが悪い』と言われて相談できなくなってしまいました」

 高橋さんはDVから逃れた数カ月後に家庭内暴力被害者を支援する任意団体「ファースト・ステップ」を立ち上げた。当時のDV防止法には、「子ども」は対象に入っていなかった。実体験からこうした法律の不備をみきわめ、『サバイバーからの提言』という冊子を作成、国会議員などに配布した。その後、内閣府のDVに関するアドバイザーにもなり、各地をまわって講演した。そうした活動の過程で、2012年に「フードバンク」の存在を知ったのだという。

避難先では「電気、ガス、石油、水道とライフラインのすべてが止まった」

 高橋さんは、「電気、ガス、石油、水道とライフラインのすべてが止まったことがあった」と「貧困」時代を振り返る。ライフラインが止められたときは、「親として、子どもにひもじい、惨めな思いをさせたくない」という思いがこみ上げたという。

 高橋さんは自身の体験談を続けた。

 「電気が止まると、困るのは冷蔵庫のものが腐ることだと思うかもしれません。しかし、そこまで追い詰められた時にはすでに冷蔵庫は空なので、困るのは照明です。そこで100円均一などでロウソクを用意して、『キャンドルナイトだよ』と言ってロウソクの雰囲気を楽しませようとしました。ガスが止まると煮炊きができないので、おにぎりを作って『今日はピクニックだよ』と演出したりもしました。

 水が止まって困るのは、先に麦茶などを作っておけばいいので、困るのは飲み水ではありません。お風呂も問題ですが、一番の問題はトイレです。タンクの水が臭くなってしまうからです。お風呂の水は抜かずに再利用し、雪が降った時にはタンクに雪を入れて『雪が入っちゃったよ』と言って、トイレの仕組みを子どもたちに教えました。子供には『辛いことなんてなかったよ』なんて言われました」

日本では勤労世代の女性の3分の1、男性の4分の1が「貧困」という現実~この上「1億総活躍社会」でさらに働かせる!?

 「『フードバンクかわさき』の活動は新聞などでも紹介されたりしますが、そうした場合の焦点は、子どもの貧困に集まりがちです。しかし、子どもが食べられていないということは、親も食べられていないということなのです」

 高橋さんはそう説明する。

 「テレビに出たりしても(親が我慢しろなど)言われのない文句が出たりします。けれども、実際辿ってみると、大人はもう食べていないのです。せめて子供だけは食べさせてあげたい、ということで助けを求めているのです」

 現在、20代から64歳までの勤労世代の貧困率も高く、女性で3分の1、男性で4分の1にものぼっていると高橋さんは強調した。

ひとり親世帯の貧困率は50%を超え、子どもの6人に1人が貧困に~OECD加盟国の中で日本は最悪の状態

 高橋さんが配布した講演冊子には内閣府の調査による上記のグラフが載せられていた。

 「このグラフに示されるように、ひとり親世帯の貧困率は50%を超え、子どもの6人に1人が貧困状態です。子どもがいる現役世帯のうち大人が1人の世帯の相対的貧困率はOECD加盟国中最も高いのです」

 家族全員が一様に貧しく、飢えているとは限らず、家族の中で一部が飢えている、というケースも少なくない。暴力や虐待がからんでいる、最も痛ましいケースである。

 「年齢に関係なく家族のなかで1人だけ飢えている、というケースもあります。先日も息子に暴力を受けている60歳の母親に会いましたが、このように、日本の貧困は目に見えにくいのです」と語った。

児童虐待防止法、DV防止法、高齢者虐待防止法…法律の「切れ目」に埋もれる貧困層

 家庭内暴力に関する日本の法律の問題点について、高橋さんは次のように指摘した。

(…会員ページにつづく)

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「「餓死と生活苦の自殺をなくしたい」〜女性の3分の1、男性の4分の1が「貧困」で苦しむ中、年間「食品ロス」が800万トン! 食品廃棄の現実!」への1件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    「餓死と生活苦の自殺をなくしたい」〜女性の3分の1、男性の4分の1が「貧困」で苦しむ中、年間「食品ロス」が800万トン! 食品廃棄の現実! http://iwj.co.jp/wj/open/archives/263373 … @iwakamiyasumi
    まるで中世のような格差。これが「命」を粗末にする社会なのだ。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/655502623739478016

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