「国は、自治体には原告適格がないと主張。原発事故被害の深刻な現実を見ているのか?」 ~函館市大間原発訴訟裁判報告集会 2015.10.6

記事公開日:2015.10.25取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・田岡えり子)

※10月25日テキストを更新しました!

 「この訴訟は、きわめて重要。30キロ圏内の自治体には原発を動かすことの同意権があるはずだ、と主張することによって、全国すべての原発が、自治体の同意がなければ動かせないことになる。必ず勝訴するよう、全力で応援していきたい」。函館市による大間原発建設差し止め訴訟の重要性について、福島みずほ参議院議員はこう語ってエールを送った。

 川内原発が再稼働し、全国で原発への不安や反対運動が高まる中、2015年10月6日、東京地裁で函館市大間原発訴訟の第6回口頭弁論が開かれた。この訴訟は2014年4月、原発建設予定地である青森県大間町の対岸に位置する北海道函館市が、国と電源開発に対して大間原発の建設凍結を求めて提訴したものだ。

 口頭弁論の終了後、東京・永田町の参議院議員会館で、大間原発反対関東の会主催による「10.6函館市大間原発訴訟第6回口頭弁論期日 ~裁判報告集会」が行われた。2人の弁護士による裁判報告のほか、大間原発訴訟の会の代表、竹田とし子氏からの報告があった。竹田氏らは、函館市に先駆けて2010年7月、市民168名で国と電源開発に対し、大間原発の建設差し止めを求めて提訴。すでに函館地裁で5年にわたって係争中で、原告団は10月9日現在で1063名となっている。

 会場には、函館市を含む北海道8区選出の民主党・逢坂誠二衆議院議員、本訴訟を応援する社民党・福島みずほ参議院議員、ルポライターの鎌田慧氏が駆けつけてスピーチをした。最後に、大間原発建設現場の隣接地で「あさこはうす」を運営する小笠原厚子氏からの挨拶があった。

記事目次

■ハイライト

  • 弁護団から裁判の報告/大間原発をめぐる現状報告(竹田とし子氏(大間原発訴訟の会)、ほか)
  • 日時 2015年10月6日(火) 16:00~
  • 場所 参議院議員会館(東京都千代田区)
  • 主催 大間原発反対関東の会

大間原発は最悪の原発。子どもたちに遺してはいけない

 「私たちは大間原発に、もう20年以上、反対してきた。世界中でまだ実験されていないフルMOX燃料(注1)の巨大な原子力発電所が、大間にできるという。大間は、函館から津軽海峡を隔てて目と鼻の先にある。市民として黙ってはいられない。裁判で止めるしかないと思った」

 大間原発訴訟の会の竹田とし子氏は、このように裁判(2010年7月提訴)を始めた経緯を説明した。「大間町の金澤満春町長は『町民は全員、原発に賛成だ』と言うが、少しずつ空気が変わってきたように思える。デモをすると、以前は出てこなかった人たちが手を振ってくれたり、反応が前とは違っている。福島第一原発事故の後で、このような原発の建設を許せるはずがない」と訴えた。

 その上で、「大間原発は最悪の原発。私たちががんばって止めて、子どもたちに遺さないようにしたい。先月、電源開発が運転開始を1年延期するという新聞記事が出たが、1年といわず、ずっとできないでほしい。大間原発のことは、まだまだ全国に知られていないので、ひとりでも多くの人に原告団に参加してもらいたい」と呼びかけた。

 竹田氏らの裁判の過程では、裁判官が原告の意見陳述を認めず、その対応のために時間を浪費させられたこともあったといい、「弁護団の力と、市民の応援でここまで来られた」と話す。現在の裁判官は3人目。今後、10月23日、12月11日、2016年3月3日に口頭弁論を行う予定だ。

  1. MOX燃料とは、使用済み核燃料から取り出したプルトニウムとウラン燃料を混合したもの。原子炉で核分裂させると半減期30年前後の生成物になるが、ウラン燃料に比べて放射能が高く、再処理が難しいなどの問題がある。すでに既存の軽水炉で一部使用されているが、MOX燃料のみで稼働させる原子炉は世界に例がない。大間原発は、全燃料をMOX燃料とするフルMOX原子炉として計画されている。

50キロ圏内に46万人が住む大間原発は、絶対に動かしてはならない

 大間原発に建設反対の立場で、国会内で活動してきた逢坂誠二議員は、今国会での審議の状況を報告し、政府の原子力政策の問題点を訴えた。

 「今国会は、安保法制の審議のため245日間もあったのに、衆議院原子力問題調査特別委員会は、実質的に4回しか審議をしていない。今やらないで、いつ議論するのかという重要な時期にもかかわらず、野党が要望しても、政府与党はとりあわない」

 政府は大間原発を、核燃料サイクルを進める上で非常に重要な発電所であると位置づけており、逢坂議員の質問にも、「やめるつもりはない」と答弁している。にもかかわらず、大間で使うMOX燃料の価格については、「民間事業者のやることなので、政府は関与する立場にない」と答えたという。逢坂議員は、「国策で核燃料サイクルを進めているにもかかわらず、関与しないというのはおかしい。これからも、政府のさまざまな矛盾を追求していく」と表明した。

 国会会期中の8月14日夜、安倍総理はNHKのニュース番組「ニュースウォッチ9」に40分間出演した。再稼働する川内原発の安全性についてキャスターから質問されると、「要介護の方一人ひとりに、避難先もバスもきちんと準備ができているから、万が一のことがあっても安心だ」と説明した。

 これについて逢坂議員は、「そんなことがあるはずがない。避難先の受け入れ体制を確認すると、公共施設の会議室やロビーなどの床面積を出し、そこに避難者が横になるスペースがある、という意味だった。これで避難計画が十分だとは、とても言えない」と憤る。

 大間原発は、50キロ圏内に30万人以上が住んでいる(注2)。万一の場合、30万人以上が避難できるとはとうてい考えられず、「なんとしても、大間原発を動かさないことに力を注いでいきたい」と逢坂議員は力を込めた。

 函館では、市民の多くが大間原発に反対しており、今年の3月には14万人の署名を国に提出した。10月21日には、町会連合会の主催で、函館市弁護団の海渡雄一弁護士を迎えて反対集会を開くといい、さらに10月29日には、小泉純一郎元首相と細川護熙元首相が函館を訪問、工藤壽樹函館市長と面会し、講演会も行われる。「これも相当なインパクトを持つだろう」と逢坂議員は期待を寄せた。

  1. 大間原発から50キロ圏内に住む人口は、函館市をはじめとした北海道の道南地区が37万人。青森県側は約9万人。函館市の現在の人口は約27万人。(函館市ホームページによる)

東日本大震災など、直近の地震動は考慮していない耐震設計

 次に只野靖弁護士が、「傍聴席が狭くて申し訳ないが、皆さんが詰めかけることは裁判所などへのプレッシャーとなり、われわれの励みになる」と謝辞を述べて、裁判報告を始めた。

 只野弁護士は、関西電力高浜原発の住民弁護団の一員でもある。同原発は、関電が再稼働計画を提出したものの、福井地裁が運転差し止めの仮処分を言い渡したため再稼働できずにいる。その仮処分の論拠となったのが、「合理性を欠く」と審判された、原子力規制庁の新規制基準(注3)の中身だ。

 原子力規制庁が福島第一原発事故の反省をもとに設けた新規制基準については、原子力規制委員会の田中俊一委員長が、「世界でもっとも厳しいレベル」と発言している。この基準では、原発の設置場所にかかわる活断層の活動性を約40万年前までさかのぼって評価し、原発敷地の地下構造を三次元的に把握して、より精密な「基準地震動(注4)」を策定することを求めている。

  1. 2013年7月8日施行。自然災害によるシビアアクシデントへの対策、航空機などを使ったテロへの対策を考慮し、安全基準を強化・新設したもの。この基準に基づいた審査に合格した原発は設置・稼働できる。
  2. 地震により発生する揺れを数値で評価したもので、加速度の単位であるガルで表す。

 しかし、基準地震動の策定については、昨年まで規制委員会の委員を務めた地震学者の島崎邦彦氏が、「入倉式(地震動の計算方式)は過小評価になる」と学会で発言している。基準の作成にかかわった防災科学技術研究所の主任研究員、藤原広行氏も、「平均から離れた揺れも考慮すべきだ。どこまで厳しく規制するかは裁量次第になった。今の基準地震動の値は平均の1.6倍程度。8~9割はそれ以下、残りの1~2割はそれを超えるだろう」としている(2015年5月7日付・毎日新聞夕刊)。

 只野弁護士は、電源開発が新規制基準に基づいて申請した大間原発の耐震設計には、基準地震動の評価と、活断層の評価の2点において、誤りがあると主張する。

 電源開発が申請した650ガルという基準地震動の数値は、22年前までに起こったマグニチュード6~8の地震44件の観測記録の平均値をもとに割り出したものだ。「ここには、近年起こった中越沖地震、宮城県沖地震、東日本大震災などの大規模地震の数値は入っていない」と只野弁護士。「そもそも、検討用にした地震の選定が誤っていないか」と疑問を投げかけた。

 活断層についても、大間原発の北側近海には巨大な活断層が存在する可能性が指摘されているが、まったく考慮に入れられていない。なお、函館市のホームページには、これらの裁判資料がすべて掲載されていて閲覧することができる。

 「専門用語で煙に巻くのが、これまでの裁判だった。今、その欺瞞をあばいているところだ。地震は同じ面積が揺れても、発するエネルギーは10倍ものばらつきがある。現に起こった地震でも、その評価は学者により見解が分かれる。まして、将来発生する地震には大きな違いがある。その最大値を取るならよいが、中央値、平均値で耐震設計をしているのは、どうなのか」

 このように指摘する只野弁護士は、「大間原発の施設には、基準地震動が450ガルの時代に設計された構造物もある。万が一、想定基準地震動を越える地震が発生したら、どんな事態になるのか。しかし、今のところ裁判所からは、それが大きな問題であるという感触は感じられない」と述べた。 

「函館市には訴える資格がない!?」原発事故被害の現実を無視した国の主張はナンセンス

(…会員ページにつづく)

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「「国は、自治体には原告適格がないと主張。原発事故被害の深刻な現実を見ているのか?」 ~函館市大間原発訴訟裁判報告集会」への1件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    2015/10/06 「国は、自治体には原告適格がないと主張。原発事故被害の深刻な現実を見ているのか?」 ~函館市大間原発訴訟裁判報告集会 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/268901 … @iwakamiyasumi
    詭弁と嘘で法を無視する国。法治国家というのは建て前に過ぎない。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/658416219528151040

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