「世界初のフルMOX」大間原発の建設差し止め裁判で進展、市民らが第3回口頭弁論報告集会を開催 2014.12.25

記事公開日:2014.12.29取材地: テキスト動画
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(IWJ・細井正治)

※12月29日テキストを追加しました。

 建設中の原発でありながら新規制基準適合性審査を申請し、年明け早々にも審査が始まる予定の「世界初フルMOX」の大間原発差し止めを求めた訴訟の第3回口頭弁論が、2014年12月25日(木)、東京地裁で行われ、同日16時から、「大間原発反対関東の会」らによる報告集会が参議院議員会館講堂で開かれた。

 電源開発や国は、本題の議論に入ること自体を忌避し、「門前払い」することを望んでいた中、代議士をはじめ、多くの傍聴者も、この訴訟に関心を持っており、本題の議論に入ることが決まった。次回の裁判は3月19日(木)、東京地裁103号大法廷を予定している。

 これに関連し、2月3日(火)には「大間原発をめぐって見えて来た日本の姿」と題し、「大間とわたしたち・未来につながる会」の野村保子さんを講師に勉強会を開催する。

■ハイライト

  • 内容 弁護団から裁判の報告/大間原発反対の会 奥本征雄さん(大間在住)のお話
  • 日時 2014年12月25日(木) 16:00~
  • 場所 参議院議員会館(東京都千代田区)

※以下、発言要旨を掲載します

国や電源開発の「門前払いにせよ」との主張を、裁判所が退けた

海渡雄一弁護士(以下、海渡・敬称略)「国や電源開発は『(中身に入らず)却下、門前払いしろ』と主張。これに対し『原告は次回までに反論を準備せよ』と裁判官は言いましたが、その後『原告の反論をみて判断するが今のところ、本案前の判断は留保し、本案の審議に入るつもりだ』と言いました。つまり、国や電源開発の主張は『棚上げ』にし、ちゃんと訴訟の『中身』に入るつもりだと。

 これは大勝利、で呆気なく終わりました。原発差し止め訴訟は通常、住民は訴訟を起こせない、と伊方訴訟の途中あたりから国が主張し始め、争い、今は権利確定しましたが、自治体は初めてなので、国側のメンツも尊重しながら審議し、最終的な判決の中でその判断も示すと」

代議士、多くの傍聴など、関心が裁判官を動かす

逢坂誠二衆議院議員「函館選出の代議士で、今日(12月25日)の裁判も傍聴しました。昨日も、私たち民主党の北海道8区総支部として、新規制基準適合審査申請を撤回せよと電源開発常務執行役員に申し入れた。それで『ハイ』という相手ではないですが、これは8区与野党問わず訴えた『総意』だと伝えました。

 もう1つ、12月15日から、函館市で力のある町内会の連合会、町会連合会で反対署名を20万人くらい集めたいとのこと」

※署名は3種類あり、当初は函館市民だけだったが、現在では市外、県外、全国、と拡大してきた。

海渡「逢坂先生は、民主党で、何とか復活してほしいと思っていた先生方の中でナンバーワン。また、みなさんも毎回こうして駆けつけていただき嬉しい。裁判所がこう言い出したのも、東京でこの裁判にこれだけ関心があり、傍聴に行列ができたから。次回から中身に入る。我々もこうした二次会にできるだけ出席したい」

「洗脳の中で、地域の人間関係が壊されている現実」

大間原発反対の会・奥本征雄さん(以下、奥本・敬称略)「『3.11後、どう変わってきたか』。大間町は本州最北端、人口6千人弱、面積52平方キロメートル。小さいが漁業資源には恵まれ、マグロ、イカ、ブリ、タコ、ウニ、アワビ、昆布。2006年に亡くなった熊谷あさこさんいわく『宝の海』。

 それが88年4月をもって、150億円で売り渡すと漁協が決めた。福島原発事故で1年半中断した工事が12年12月に再開。大間に限って言えば、この1年半が重要。それまで原発依存どっぷりだったのが、少しずつ解け始めてきた。工事が止まった、町民1人1人がそれをみて、いろいろな思い、考えがうまれた。

 まずは原発賛成反対でない学習会、11月の猛吹雪でも13名の女性が参加。反対集会の取り組みでは、全国から500名もの人が参加した大集会『マグロック』。

 しかし巨額の原子力マネーに裏打ちされ、漁業振興、町も大いに賑わうはずだったのに、いつの間にかシャッター街、電源開発の城下町と化し、ものが言えなくなっていたと気づいた。2021年度にも稼働という函館新聞11月14日等の記事があるが、地元では、マスコミを含め誰も額面通り受け取っていないと思う。

 これまで推進一辺倒だった商工会、漁協、町からも一部だが『何を今さら! また漁業についても原点にかえって見直さないと未来は危うくなるぞ』などの声が出てきた。今は即原発反対、再稼働阻止に直結しないが、それでいいと思う。まず自ら見直し未来を考え始めること」

「原発は地域の環境、伝統、文化、人間関係を壊すことで成り立ってきた」

奥本「1976年4月以来まもなく40年間、洗脳の中で、地域の人間関係が壊されてしまっているのが現実。その中でどれだけ心を開けるか。原発はつくろうとした時から地域の環境、伝統、文化、人間関係を壊すことで成り立ってきた。放射能よりも怖いと私は思って反対運動に入ってきた。

 嫌というほどみせられてきた。しかし福島の人のことを思えば、壊された人の心、関係をどう修復するか、それしかないと思う。簡単でなく、時間もかかるが、結局はそれしかないと思う」

女性「もし稼働したらマグロはどうなるか」

奥本「毎秒91トンもの温排水が津軽海峡に放出されたら、間違いなく海の環境が変わる。マグロは大変敏感。万が一、来たとしても、皆さん買わないでしょう。ではなぜそんな海を売ったのか。必ず聞かれる。やはり貧しさ。心も貧しく狭くなる悪の連鎖。

 日本でも有数の漁協、宝庫だが、漁師がそれだけ多いと一人あたりは少なく貧しい。それでもちゃんと漁業でオマンマ食えてた。この大切さ、あさこさんから痛切に学んだ。壊されていく自然環境を守る闘い」

今の安倍政権は「3.11前より悪質になっている」

女性「2年前『あさこハウス』へ行ってきた。変わってきたとはいえ、まだ、動物園の檻のように高さ2~3メートルの鉄条網で囲われ、水やガス、電気を断つ。『アソコの味方は泊めない』と周囲の民宿から締め出され、私たちは離れたビジネスホテルに泊まった。パブコメで7割反対でも再稼働しようとする自民党が選挙で圧勝。どうすればいいのか」

奥本「すでに心が壊されてしまっている。改めて補助金、原発賛成派にバラマキ、反対のところは干す。『3.11』前より悪質になっている気がする」

「大間の漁師は口に出せないだけでみな原発反対」

奥本「原子力資料情報室の澤井正子さんが今年(2014年)の7月、マグロック実行委員会に、千円札とともに来た大間消印『マグロの母』からの手紙を紹介。『夫も息子も、大間の漁師は口に出せないだけでみな原発反対です。大間町長・議員、漁協組合長・役員、みな口裏を合わせ漁師たちに説明していません。

 息子ら若手は、原発なんかいらない。年寄りが決めただけで自分たちは一銭ももらっていない、と。まして夫はマグロ漁師、今さら原発なんか持ってこなくていいんだ。昔の一部の人がお金目当てで決めたこと。福島原発事故があり、大間でも起こったらどうなるか、考えてしまいます。

 大間ブランドは町長たちなどではなく、漁師たちが一生懸命、まさに命懸けでつくってきたものです。それでも、今の私たちは反対の声をあげられない。町長選で誰か反対の人が出てくれればと思います。私たちは反対です。地域一丸ではないのです』と」

「除染で表土1センチ削るというが、100年かかってできた土だ!」

(…会員ページにつづく)

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