「社会が動けば政党は後を追いかけてくる」山口二郎氏――安全法制反対の「シングルイシューでの参院選での野党の結集を」柳澤協二氏――「安保法制を問う」シンポジウムで激論 2015.9.8

記事公開日:2015.10.1取材地: テキスト動画
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(IWJ・城石裕幸)

 2015年9月8日(火)、参議院議院会館講堂にて安保法制に抗するシンポジウムが開かれた。登壇者はイラク政治・現代中東政治の専門家で千葉大学教授である酒井啓子氏、主催団体新外交イニシアティブの評議員で元内閣官房副長官補である柳澤協二氏、政治学が専門で法政大学教授である山口二郎氏の3名。

 山口氏は、「民主党政権で政党政治のモデルチェンジが失敗に終わったのは、社会の根を持たなかったからだ。今まさに社会の根を作り出す動きが広がっている。社会が動けば政党は後を追いかけてくる」とのツイーッター等での自身の発言を紹介した。その上で、「この安保法制が強行採決された先を見越し、新しい社会運動の力を2016年の参議院選挙まで持続させ、立憲デモクラシーを守るという一点で野党勢力を結集して国会の多数派を入れ替える」、というシナリオを提示した。

 柳澤氏は、「私はこの統幕の資料(陸海空自衛隊の一体運用を担う統合幕僚監部の河野克俊幕僚長が2014年末の訪米時に米軍首脳と会談した内容を記録したとされる資料)を見て、よくまとまっていると思いました。そして何が必要になるかを正しく認識してるんだなと思った」と率直な感想を述べた。

 その上で、「制服組は法律ができて政治から命令されればそのように動かなければならないのだから、どんな命令が出るのかを踏まえてその準備をするという真面目さの現れだ」と冷静に分析し、いわゆる「制服組の独走」との見方とは異なった認識を示した。さらに、「ここに書いてあるようなことを国会でもしっかり議論しないとシビリアンコントロールなんてできない」と厳しく断じた。

 他方、「創設当初多くの国民に反対されてた自衛隊が今大多数の国民から支持されているのは、災害派遣で国民を助け、戦争をしていないから一人も殺さず、犠牲者も出さなかったからだ。そういう自衛隊のあり方を変えてはならない」と訴えた。

 その上で、「この法案が通っても実際に自衛隊を動かすためには国会承認が必要になる。国会承認には30日ルールも60日ルールもない。来年の参院選はチャンスだ」と強調し、山口氏と同じくシングルイシューでの参院選での野党の結集をあげ、「選挙での危機感は国民世論の与党に対する抑止力になるだろう」と発言を締めくくった。

 酒井氏はペルシャ湾機雷掃海など政府答弁の中東情勢に対する認識を「80年代半ばイラン・イラク戦争当時のものだ」と批判し、「外交問題になるんじゃないか?」との懸念を示した。その上で、日本のこれまでの「安心供与外交」を捨てて武力での威嚇による外交が、今後の日本の対外関係に悪い影響をもたらすと主張した。

 また、急増する難民の背後にあるイランとサウジアラビアの覇権争い、つまり力による外交の蔓延は、同盟国からのアメリカの撤退というショックが原因であると分析し、「難民問題を根本から解決するためには、中東における力の外交に歯止めをかけなければならない」と訴えた。

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