「NHKが安倍さんの言うことを聞いて、番組をねじ曲げたことは、断じて間違いです。あってはならないことでした。私が一生背負っていかなければならない、痛恨の出来事です」――。
2014年夏、籾井勝人NHK会長の辞任を求める署名活動が、元NHK職員の間で始まった。当時、集まった署名は1500筆以上。しかし2015年8月現在も、籾井氏は会長の座に居座っている。時の経過に比例して、国民の、NHKの報道姿勢に対する抗議の声は高まり続けている。
当時の署名活動にも参加した、元NHKプロデューサーで現在は武蔵大学教授の永田浩三氏は、2015年8月25日、安倍政権べったりの報道姿勢に抗議するNHK包囲行動に参加。街宣カーの上でマイクを取り、NHK社屋に向かって訴えた。
「NHKニュースがたまにきちんと取り上げると、それが大きなニュースになる。おかしいじゃありませんか!」
さらに永田氏はスピーチの中で、14年前にNHKで起きた番組改変事件に言及。当時、官房副長官だった安倍晋三氏らによる番組介入で、元慰安婦の被害女性の問題を扱った番組の内容が、放送直前に変更させられた過去を明かした。
当時、同番組のプロデューサーだった永田氏は「あってはならないことでした。私が一生背負っていかなければならない、痛恨の出来事です」と悔やんだ。
そして、今のNHKに対し永田氏は、安保法案の問題点や全国で拡大している反対の声、与野党が論戦をはる国会審議の中身を十分に報道せず、権力を監視するという公共放送の役割を全く果たしていないと批判した。
以下、永田浩三氏のスピーチ全文とスピーチ動画を掲載する。
永田浩三氏スピーチ全文
「永田浩三と言います。NHKのプロデューサー、ディレクターでした。衛星ハイビジョンの編集長もやっていました。そんな人間が、この場に立って、NHKに向かって叫ばなければならない。不幸で、恥ずかしいことです。
少し、昔の話をします。1977年、私がNHKに入社した時は、受信料不払いの嵐が吹き荒れていました。世間の目は冷たくて、NHKは今にもつぶれてしまうのではないか、そんな怖さを感じました。
居酒屋でNHKの職員だと分かると罵倒され、議論をふっかけられ、冷笑され、泣きました。悪酔いを繰り返しました。今の職員も、そんな情けなく、悲しい経験をいっぱいしていると想像します。
なぜ、そのころ不払いが燃え盛ったのか。
私が入社する前年、1976年、ロッキード事件の刑事被告人だった田中角栄元総理の家を、NHKの会長が公用車でご機嫌伺いに行き、それが世間の知るところになりました。
その時、NHKの組合は、視聴者とともに闘い、会長を辞任させ、初めてのNHK生え抜き会長を誕生させました。全国で始まった署名はわずか3日で136万人にのぼりました。
あれから38年が経ちました。その時に比べて、NHKは良くなったのか?そんなことはありません。
視聴者に向かって仕事をする、当たり前のことです。
権力の監視としてのニュース、公共放送の一番大事な使命です。
しかし、この当たり前のことが、今のNHK、特にNHKの政治ニュースでは全くなされていないのです。
安倍さんがそんなに恐いんでしょうか。ひれ伏さなければならないんでしょうか。 今から14年前、NHKで番組改変事件が起きました。日本軍の元慰安婦の被害女性の問題を取り上げた『ETV2001』が、放送直前に劇的に変わってしまいました。
NHKの幹部が、当時、官房副長官だった安倍晋三さんたちに会い、そのあと番組がすっかり変わりました。その時、NHKの幹部から指示を受けたのが、プロデューサーだった私です。
NHKが安倍さんの言うことを聞いて、番組をねじ曲げたことは、断じて間違いです。あってはならないことでした。私が一生背負っていかなければならない、痛恨の出来事です。
3年前、安倍さんは、NHKの最高意思決定機関である経営委員会に、安倍さんのお友達の百田尚樹、長谷川三千子といった人を送り込みました。
先日、百田氏は『沖縄のふたつの新聞は潰さなければいけない』と暴言を吐きました。百田氏は経営委員を一期で退きましたが、そうしたとんでもない経営委員に選ばれたのが、籾井勝人氏です。
この夏は戦後70年、NHKの特集番組はとても健闘しています。良い番組がいっぱい出ています。それに比べて、ニュースは異常です。悲惨です。
戦後70年、安倍談話が出された夜のことを思い出して下さい。8月14日、まず夕方6時に安倍総理の記者会見が延々と流されました。そして7時のニュース。ここで、安倍総理のおぼえがめでたい、政治部・岩田明子記者が、これ以上ないぐらいの「よいしょ」解説をしました。
そして『ニュースウォッチ9』は、なんとスタジオに安倍総理を呼び、42分間、厳しい質問もないわけではありませんでしたが、安倍総理の言いたい放題でした。あの人が、スタジオでコミュニケーションがとれないなんていうのは、誰でも知っていることです。それでもやらせたんです。安倍さんに、ただただ奉仕する、それが今のNHKニュースです。
NHKニュースを見ても、『戦争法案』の問題点がわからない。
NHKニュースを見ても、国会の中でいかに政府がいい加減かが分からない。
NHKニュースを見ても、日本の様々な場所で反対の声が上がっていることが分からない。
NHKニュースがたまにきちんと取り上げると、それが大きなニュースになる。 おかしいじゃありませんか。いいわけはありません。
10年後、安倍さんが総理の座にあるとは絶対思えません。来年夏までという話もあります。しかしNHKは、10年先も必ずあります。NHKは、視聴者の受信料で育てた大事な宝物です。安倍さんの私有物では、断じてないのです。安倍さんに義理立てしたり、恐がる必要などないのです。
王様は裸です。 若者たちは、すでにそれに気づいています。王様は裸だと。
NHKは、安倍さんと一緒に心中などしてほしくはありません。安倍さんと一緒に心中などしてほしくはないのです。NHKはみんなのもの、みんなの宝です。このまま朽ち果てるのは、あまりにもったいない。NHKを、市民の手に取り戻す。
安倍さんの言うとおりの『取り戻す』ではありません。取り戻すのです、市民の手に。
みんなのものに、NHKを取り戻していきましょう。ありがとうございました」
永田氏は2014年10月22日、岩上安身の単独インタビューに応じ、NHK番組改変問題の舞台裏だけでなく、戦後に再出発したNHKの歴史や公共放送のあり方を語った。NHKの公共放送としての姿勢が強く問われている今、8月27日21時から、28日20時(予定)から、2夜にわたって永田浩三氏インタビューを再配信する。
配信URLはこちら 【永田氏へのインタビューの動画記事はこちら】
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2014/11/12 「説得する言葉を持たないけれど、権力は持っている」NHK番組改変事件でかいま見た、安倍晋三という政治家の本質 元NHKプロデューサー・永田浩三氏に岩上安身が再びインタビュー
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【IWJブログ・特別寄稿】日本軍「慰安所」制度と朝日の「慰安婦」報道検証について(能川元一 大学非常勤講師)
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/207052
内容を知りたいかな。どう行った事実を放送しようとしていたのか?
それ次第であなたの立場が悪くなるかもしれない。
事実であるなら今からでも遅くない