現役NHKチーフプロデューサーが警鐘「会社をクビになるより、はるかに恐ろしいものが見える」――沈黙するメディア、記者のサラリーマン化を危惧 2015.4.19

記事公開日:2015.4.20取材地: テキスト動画
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(IWJ・青木浩文)

 「報道や表現を自粛しない人たちのオフ会」が2015年4月19日、東京都千代田区のYMCAアジア青少年センターで行なわれた。

 会の目的は「翼賛体制の構築に抗する 言論人、報道人、表現者の声明」の連名者が意見発表・意見交換・交流すること。一部では、「萎縮と自粛」の現実についての現場からの報告が行われ、二部では、この会の今後の展開について、参加者も交えて議論された。

 登壇者は、深田晃司氏(映画監督)、山口二郎氏(政治学者)、盛田隆二氏(小説家)、香山リカ氏(精神科医・評論家)、飯田能生氏(NHKチーフプロデューサー)、古賀茂明氏(元経産官僚)、マッド・アマノ氏(パロディスト)、山口一臣氏(元週刊朝日編集長)の8名。司会は主催者でもある今井一氏(ジャーナリスト)が務めた。

 登壇者は皆、「翼賛体制の構築に抗する 言論人、報道人、表現者の声明」に賛同し署名している方々のみであることを、今井氏は強調した。

■ハイライト

  • 登壇 香山リカ氏(精神科医、評論家)/古賀茂明氏(古賀茂明政策ラボ代表、元経済産業省経済産業政策課長)ほか

NHKでタブー視されていた原発番組

 飯田能生氏は、NHKの「萎縮と自粛」について、自身の入社時の体験から語り始めた。

 「記者としてNHKに入社、最初の任地は福島だった。今から27、8年前のこと。実は、福島原発をライフワークのように取材していた。

 当時、NHKでは原発はタブーとされ、滅多なことで取材をしてはいけない、ましてや批判的な番組など作ってはいけない、もし、取り扱うならば、客観的な証拠を集めて、理論武装をした上で、どこから圧力がかかっても、反論できる材料を集めてからかかれと、新人時代にさんざん言われた」

 そして、飯田氏は福島の放送局が初めて作る原発の番組に携わることになったという。

 「その時はさすがに組織的な抵抗も大きいので、被曝問題、原発の安全性という大上段に振りかぶったテーマではなくて、原発が本当にその地域経済を豊かにしたのかという切り口で接近していった」

 45分番組を2本、30分を1本制作。最終的には、被曝労働の実態を取り扱うまでに至ったと、飯田氏は振り返った。

現役のNHKチーフプロデューサーが声明に署名した理由

 「このように、局内で地道な努力をし、取材を積み重ねることによって、確かに、狭き門ではあるが、きちんとした番組を作れるシステムは、NHKにはかろうじてある。

 震災直後も、震災に関する番組、原発事故に関する番組等、NHKは良い番組を作り、また、海外から取り寄せて放送している」

 飯田氏は、「そのようなNHKの良い部分をぜひ見ていただきたいと思うのだが、最近そうではない部分がクローズアップされる」と嘆いた。

 「あの低俗な会長がトップに据えられて…… 公費でカラオケに行けるわけがない」

 一方、政府自民党からの締め付け圧力は、局内にいる飯田氏には全く見えていないという。

 「新聞報道やテレビ報道で外部のメディアを通じて、そんなことがあったのかと知ることが多い。どうりで自分の身の回りで、生活のしづらさ、仕事のしづらさがじわじわ出てきているのを感じる」

 そして、声明に署名することにした理由を、飯田氏は次のように語った。

 「このままではいけない。今回の署名も、NHKの人間というよりは、NHKの良い部分を残したい一視聴者として署名しなければいけないのでは、という部分も半分ある」

徐々に進行しているテレビ局記者のサラリーマン化――その理由とは?

(…会員ページにつづく)

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