法案成立のため、国会を戦後最大の95日間も延長した安倍総理だが、8月11日には法案審議が行われている最中にも関わらず夏休みに突入した。2015年8月21日、参議院審議で質問に立った山本太郎議員は、8分間という限られた質疑時間のなかで、総理自身が今以上に審議に参加する気持ちがあるのかを質した。
山本議員は「総理というお仕事は激務。もちろん休んでいただきたい」としつつも、法案の理解が深まっていない世論調査結果や、1日に3億円の税金を消費する国会を延長したのが総理自身であること、10本もの法案を無理矢理1本にまとめて「今国会で通す」と言い切ったのが安倍総理であること、そのうえで、参議院審議への総理の出席率が33%程度であることをあげ、「少なくとも総理自身が毎週1日以上、国民にわかりやすく説明するために審議に参加するという気持ちがあるのか、ないのか」と質問した。
これに対し総理は、「委員会の運営については、委員会においてお決めになること。出席を求められればその義務を負う」と答弁。「ルールは一旦横に置き、より多く出席する気持ちがあるのかどうかを聞いている」と食い下がる山本議員に対し、「ルールは横には置けないんですよ」とはぐらかした。
山本議員は、「ルールを横に置き、憲法違反の法案を通そうとしている。やっていることが真逆だ」と批判したうえで、「より国民の理解を深めるために、総理により多い時間をとっていただけるように、委員会でご審議いただきたい」と委員長に要請した。
以下、山本議員の8分間の質疑の全文文字起こしを掲載する。
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8月21日、参議院特別委での山本議員の質疑
山本太郎議員「『生活の党と山本太郎となかまたち』共同代表の山本太郎と申します本日の質疑、8分しかございません。すべて総理への質問です。よろしくお願いします。国民の皆さんの理解を深めるために、『自ら説明したい』とおっしゃっていた安保法案。総理自身、『国民の理解、深まったなぁ~』って、思っていらっしゃいますか?」
安倍総理「世論調査等によるとですね、残念ながらまだまだ国民の皆さまの理解が進んでいるとはいえない状況であろう、また、さまざまな点で誤解もされているんだろうと、こう思うところでございまして、こうした審議等を通じまして、そうした誤解を解きながら、国民の皆さまのご理解を得るべく、努力をしていきたいと、このように思っております」
山本議員「総理自身、広がりがあまり見えないと、理解が深まっていないと考えると。そうなんですよね。衆議院での強行採決が行われましたと。その時の共同通信の世論調査、『本法案への理解が不十分』という方、82.9%。先日、お盆ころに行われた調査では、『本法案への理解が不十分』だと言われる方々は81.8%。
上がってるじゃないですか総理! 1.8%。でも1.8%って、これほとんど誤差ですよ。ね。だからほぼ理解が深まっていないと考えるべきだと。だから総理ご自身で言われていましたとおりだと思います。まだまだ深まっていないんだと。
報道によるとですね、話ちょっと変わりますけれども、総理は8月10日の夜に官邸でお仕事を終えて、それから山梨の別荘に移動されて、それから夏休みに突入されたというふうに報道でありました。
しかし、です。翌日、8月11日、本委員会、ここにいる皆さんはここで、本法案の審議をしていたんですよ。おかしくないですか? これ。
(「誰が延長したんだ」と不規則発言)
『誰が延長した』…そのお言葉のとおりですよ。最高責任者で、一番この法案を通したいと思っている方が、夏休みに突入しているのに、委員の皆さんは夏休みに入れずに、ここで審議をしていたというお話なんです。
もちろんね、総理というお仕事は激務だと思われるんですよ。休んでいただきたい、ゴルフだって心から楽しんでいただきたいと思うんです。でも、安倍政権退陣を願う僕でさえそう思うのにも関わらず、やっぱり今、休んでもらっては困るんですよ。10本もの法案をむりくり1本にまとめて、今国会で通すと言い切ったのは誰何ですか?
総理ですよ。あなたですよ。
それだけじゃない。1日の延長で3億円ぐらいかかると言われている国会を、戦後最長の95日延長すると決めたの誰なんですかって。総理ですよね? あなたなんですよ。
総理おひとりだけ夏休み突入なんて、誰も納得していません。総理自らがわかり易い言葉で国民の皆さんに説明する努力っていうのは、十分だと思われていますか?
衆議院で、本法案、審議された中で、総理の出席率33%程度なんですよ。33%程度。一番法案を通したがっている最高責任者が出席したのが3割程度ですよ皆さん。ありえますか?
ありえません。
丁寧に、出来る限りわかりやすく説明を行い、国民の皆さまのご理解を得るよう努力してまいります。参議院本会議での総理の言葉でございます。『国民の皆さまの理解を深めるために、自ら説明したい』…これも、総理のご発言なんですよね。総理のこの言葉っていうのは嘘じゃないと思うんですよ。嘘じゃない。じゃあ、総理自身が審議に積極的に參加する。毎回出てきて…
(「してるじゃないか!」と不規則発言)
『してるじゃないか』という応援、虚しいからやめてください与党の皆さん。ね、本当に。なんかすごく虚しい発言されたあとの拍手とか本当に心寂しくなるんです。
そうじゃない。とにかく、この法案一番通したいの誰だ? 税金を使って95日間延長したの誰だ?
この国のあり方を180度変えるような政策を推し進めようとしているのは誰だ?
その最高責任者は安倍総理じゃないですか。じゃあ毎日でも出てきてくださいよ、この法案の審議に、というお話なんです。そして公共放送を通じて、国民の皆さんにわかりやすく伝えていただきたい。
現在、本委員会、3日ほど審議があるんですよね。そのうち少なくとも総理自身が毎週1日以上、国民にわかりやすく説明するために審議に参加するというお気持ちがあるのか、ないのか。あるのか、ないのかだけお答えください」
安倍総理「これは、委員会の運営におきましては委員会の委員の皆様がたで決めることでありまして、その要請には、当然、行政府の長として応じなければならないと、こう考えているところでございます。
その中においてですね、例えば総理として予算委員会や様々な委員会があるわけでございまして、同時に、この法案については担当大臣がいるわけでありまして、まさに担当大臣が責任をもってこの法案についてですね、答弁をしていくことになるわけであります。そのための担当大臣でございます。私は、総理大臣としてですね、大所高所から意見を求められたときにこの委員会に出てきていると、こういうことではないかと思います」
山本議員「はい、わかりました。もちろんこの委員会での話、そしてNHKの話は諸事情いろいろあると思います。それ、一度置いておいてください。
総理自身がそのお気持があるのかないのか。毎日でも出てくるぞ、少なくとも1週間に1回出る気持ちが本人にあるのか、ないのかがお聞きしたい。あるのか、ないのかでお答えください。よろしくお願いします」
安倍総理「これは委員会の運営についてはですね、委員会においてお決めになることでして、それに対して行政府としては対応していくというのが基本的なルールでございます」
山本議員「不毛なやりとりしていてもしょうがないんですよ、総理。総理自身にそのお気持があるかないか。先ほど言いました。委員会でのルール、そしてNHK呼べるかのルールは一旦横に置いてください。その先の話ですから。総理自身にそのお気持ちがあるかないのかをお聞きしたいんです。お願いします」
安倍総理「これはこの委員会だけでなくてですね、予算委員会でもそうでございますが、まさに委員会からですね、総理の出席を求められれば当然、我々は出席するという義務を追うわけでございます。
そういう運営を行っていくわけでありますが、同時に、予算委員会においては、主務大臣として財務大臣もおり、財務大臣も私が出席をしないなかにおいてはそれぞれの大臣が求められれば、それぞれの大臣が出て行く。そして当委員会はまさに担当大臣としてですね、防衛大臣と外務大臣が出席をしている、ということではないかと思います」
山本議員「なんかすごく消極的といいますか、ご本人の気持ちを聞いてもあまり前のめりさというか、これだけ81%の人たちがみんな理解していない中で、何がなんでも私が説明いたします、と。私が最高責任者ですという気概さえ感じない。委員会のルールがあるということはわかっていると。それを一旦横に置いてお聞きしているんだというお話をしているんです。
ご自身のお気持ちを何回もお聞きします。ご本人としては出てくるお気持ちはあるんですか、ないんですか」
安倍総理「ルールは横には置けないんですよ。つまり、この委員会や議会の運営というのはですね、慣例、またルールに従って運営することが求められているわけでございまして、その中において、行政府と立法府の関係、守るべき関係というものがあるわけでございまして、その中で、当然、求められれば我々は出席する義務を負っている、ということではないかと思います」
山本議員「『ルールは横には置けないんだよ』…ただいまのセリフ、非常に痺れました。でも憲法違反の法案を通そうとしているその姿は一体なんなんですか?
ルール横に置いて考えているじゃないですか。まったくやっていることが真逆。あまりにもおかし過ぎます。
委員長。是非、より国民の理解を深めるために、総理により多い時間をとっていただけるように、委員会でご審議いただけますか。よろしくお願いいたします」
鴻池祥肇委員長「私、答弁するの? 私への質問?」
山本議員「いえ、違います。理事会でのお取り計らいをよろしくお願いいたします」
鴻池委員長「理事会で、対話をしましょう」
山本議員「ありがとうございます。終わらせていただきます」
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