【安保法制国会ハイライト】対イスラム国空爆への支援、法理上可能か否か~福島みずほ議員の追及に中谷防衛相、「判断しない」と逃げ続ける 2015.8.20

記事公開日:2015.8.20取材地: テキスト
このエントリーをはてなブックマークに追加

(平山茂樹)

特集 安保法制

 現在国会で審議が行われている安全保障関連法案によって、米国をはじめとする有志連合のIS(イスラム国)への空爆に、日本が協力することが可能になるのか否か――。

 ISが中東で勢力を拡大し、日本人人質殺害事件が発生した今、この論点は極めて重要なはずである。しかし中谷元(げん)防衛大臣は、8月19日の国会質疑でこの点をただした福島みずほ議員の質問に対し、「判断しない」と逃げ続けた。

 一貫して、「国際平和支援法」の法理の問題として、有志連合によるISへの空爆に日本が協力することが可能かどうかを聞き続けた福島議員。これに対し中谷防衛大臣は、法理上ではなく、政策問題として「判断しない」という答弁を続けた。これでは、政策上「可能である」と判断すれば、空爆への協力を行うことができることになる。

 この中谷防衛大臣の答弁をめぐり、国会は紛糾。審議は4回にわたりストップしたが、中谷大臣は最後まで「判断しない」と繰り返し、明確な答弁を避け続けた。

 以下、福島議員の質疑の全文文字起こしを掲載する。

8月19日参議院特別委、福島みずほ議員の午後の質疑全文

福島みずほ議員「社民党の福島みずほです。予算、費用についてお聞きをいたします。ISIL、イスラム国に対する掃討作戦のアメリカ国務省が発表した費用、これは1日980万ドル、12億円ということでよろしいですか」

岸田文雄外務大臣「米国の国防総省の公開情報によりますならば、7月31日現在、昨年8月8日に開始された対ISIL作戦に掛かった費用は合計35億ドルとされています。この間357日ですので、一日当たりの平均費用、980万ドルになると承知をいたします」

福島みずほ議員「莫大なお金が掛かっています。年間4000億円、10年間やれば4兆円になります。集団的自衛権の行使には反対です。戦場で人を殺し殺されるわけですから、莫大な人たちの命が奪われます。それともう一つ、予算、まさに会計の問題があります。掃討作戦、これ一年間に4000億円、莫大なお金です。ISILへの空爆等に関する協力支援活動、これは条文上できないということではないですね」

中谷元防衛大臣「法案にはそのほか条件としてありまして、その三つの条件を満たさないとできないわけでございます」

福島みずほ議員「三つの条件というのは違うでしょう。それって新三要件のことじゃないんですか。違う。じゃ、言ってください」

中谷元防衛大臣「国際平和支援法で我が国が後方支援を行うためには、要件となる国連決議の存在のみならず、第一に国際社会の平和及び安全を脅かす事態に関し、第二にその脅威に対して国際社会が国連憲章の目的に従い共同して対処していること、第三に我が国が国際社会の一員として主体的かつ積極的に寄与する必要があると認められることといった法律に定められた要件、これを満たす必要がございます」

福島みずほ議員「重要影響事態法の方は国連決議など必要ではありませんが、ISILへの空爆等に対する支援活動は条文上できますか、できませんか」

中谷元防衛大臣「ただいま三要件を述べましたが、ISILに対する作戦への後方支援につきましては、現時点でこれらの要件を満たしているかどうか、これは判断をしておらず、また、その判断を行う必要があるとも考えておりません」

福島みずほ議員「法律上の定義に当てはまるかどうかを聞いています。どっちですか」

中谷元防衛大臣「まず、この法案で、先ほど言いましたけれども、国連決議があるか否かのみで決まるわけではなくて、ほかの要件を満たすか否か慎重に判断する必要があると。その上で、この国連決議の要件として申し上げるならば、これは同法の三条一項一号ロに規定する決議に該当し得ると考えますが、他方、先ほど申し上げました三要件ですね、これの要件も満たす必要がございまして、現時点でこれらの要件を満たしているかどうか、これは判断をしておりません。また、その判断をする必要があるというふうにも考えておりません」

福島みずほ議員「条文上当てはまるかどうかという判断はできるでしょう。法律は誰が解釈しても一義的にされなければおかしい。だとすれば、法律上できるんでしょう」

中谷元防衛大臣「ただいま述べたとおりでございますが、我が国は軍事的作戦を行う有志連合に参加する考えは全くありません。ISILへの空爆等への後方支援を行うことは全く考えておりませんし、これは今回の法律が成立した後であっても不変でございまして、我が国は今後とも、難民、避難民に対する食糧・人道支援など、我が国ならではの人道支援を拡充して、非軍事分野において国際社会における我が国の責任を毅然として果たしていくという考えでございます」

福島みずほ議員「止めてください」

鴻池祥肇委員長「速記止めてください」

〔速記中止〕

鴻池祥肇委員長「速記を起こしてください」

福島みずほ「定義上除外されていますか」

中谷元防衛大臣「国連決議につきましては、答弁したとおり、該当し得るということでございます。ただ、軍事的作戦をやることは全く考えておらず、この法案においての適用等につきましては全く判断をしてないということでございます」

福島みずほ議員「今の判断なんか聞いていません、法律上の解釈を聞いています。ここは国会です。政策論議なんか聞いていません。誰が考えても、定義に当てはまるか当てはまらないか、定義に当てはまるでしょう」

中谷元防衛大臣「この三要件に当てはまるかどうかにつきましては、個別具体的に判断する必要がありまして、この要件を満たさなければ実施できないし、仮に満たすとしても事前に国会の承認をいただくということが必要でございます。ISILに対する作戦への後方支援については、現時点でこれらの要件を満たしているか、これは判断をしておりません。また、その判断を行う必要があるとも考えておりません」

福島みずほ議員「止めてください」

鴻池祥肇委員長「質問を続けてください」

福島みずほ議員「答えてないですよ。時間を無駄にしないでください。真剣勝負やっています。法律の定義に当てはまるか当てはまらないか、十年後の内閣がどう判断するかですよ。そのことを聞いているんですよ。政策判断なんか聞いていません」

中谷元防衛相「全く判断をすることは現時点はないわけです。ですから、当てはまらないということでございます」

福島みずほ議員「現状で当てはまらないという解釈はできないということでよろしいですか」

中谷元防衛大臣「この国際平和支援法で我が国が対応措置を実施するためには、要件となる国連決議の存在のみならず、この三要件、これを共に満たす必要がありますが、現時点でこれらの要件を満たしているかどうか、これは判断をしておりません。また、その判断を行う必要は全くあるとも考えておりません」

福島みずほ議員「法律の、こんな、議論ができません。以前は当たると言ったじゃないですか。政策判断なんか聞いてないんですよ」

鴻池祥肇委員長「答弁しますか。速記止めて」

〔速記中止〕

鴻池祥肇委員長「速記起こして」

中谷元防衛大臣「我が国は、軍事行動を行う有志連合に参加する考えは全くなくて、このISILへの空爆等への後方支援を行うことは考えておりません。これは、今回の法案が成立した後でも不変でございまして、私は以前から答弁におきましては、最初の国連の決議の要件、これについては該当し得ると考えておりますが、残りの三要件につきましては、これを満たすというようなことは判断をしていないし、またその判断を行う必要がない、あるとも考えていないと、ずっと一貫をいたしております」

福島みずほ議員「中谷防衛大臣の下で論議はできません。法律の議論をしているのに、考えがあるかないかなんてそんな議論していません。法律は未来永劫、その法律がある限り内閣を縛るものです。こんな答弁の下で質疑はできないですよ。判断なんか聞いていません。定義を聞いています。じゃ、これについては明確な議論の整理を理事会でやっていただくようにお願いをいたします。
よろしいですか。それで、私が……」

鴻池祥肇委員長「速記止めてください」

〔速記中止〕

鴻池祥肇委員長「速記を起こしてください」

中谷元防衛大臣「法的には、一般論としては条文のとおりでございます。ただ、我が国は軍事的作戦を行う有志連合に参加する考えはなくて、ISILへの空爆への後方支援を行うことは全く考えておりませんし、これは今回の法律が成立した後でも変わっておりません。判断をしていないから、三要件を満たすことはありません」

福島みずほ議員「違いますよ。三要件を判断していなければ、二つの要件を、当てはまる場合があるじゃないですか。要件を満たせば行くということでよろしいですね」

中谷元防衛大臣「そのような意思もありませんし判断もしておりませんので、三要件を満たすことはあり得ません」

福島みずほ議員「済みません、重要で、こんな大臣の下でこの法案の審議はできません。法律の定義を聞いているのに、政策判断で答える大臣がいるなんて信じられません。次の大臣が別の判断をしたらどうするんですか。法律がどうかという議論をやっているんです。駄目ですよ。審議できない」

中谷元防衛大臣「全く軍事活動をするという意思もなければ選択もありませんので、三要件を満たしているかどうか、これは判断をしていないわけでございます」

福島みずほ議員「こんな答弁だったら、これ駄目ですよ。あなたの判断なんか聞いていないですよ。法律の解釈を聞いているんですよ。法律を作ったらそれが未来を拘束するから、こんな大臣の下で、まさに国会が何を審議したか分からないじゃないですか。こんな大臣の下で審議はできません」

鴻池祥肇委員長「速記止めてください」

〔速記中止〕

鴻池祥肇委員長「速記を起こして」

福島みずほ議員「あとの二つの要件を満たせば、後方支援することはあり得るわけですね。法理論上、あり得るわけですね」

中谷元防衛大臣「一般論として申し上げれば、国際平和支援法の下で我が国が対応措置を実施するためには、要件となる国連決議の存在のみならず、国際社会の平和及び安全を脅かす事態に際し、その脅威に対して国際社会が国際連合憲章の目的に従い共同して対処していること、また、国連決議の存在を前提に、我が国が国際社会の一員としてこれに主体的かつ積極的に寄与する必要があると認められることの要件を共に満たす必要があります。判断としては、一般論としては、あり得るわけでございますが、いずれにせよ、ISILにつきましては、全くそういった軍事活動、後方支援をする考えは持っておりませんし、今回の法案が成立した後でも不変でございまして、現時点でこれらの要件を満たしているかどうかは判断をしておりません」

福島みずほ議員「あり得るんでしょう。あり得ると初めから答えてくれればいいんですよ。僕はやりませんなんという答弁を繰り返して、こんなの国会の答弁ではないですよ。こんな防衛大臣の下でこの法案を審議することはできません。

 さっき、掃討作戦についてアメリカが使っているのが12億円。年間、ですから4000億円。10年やれば4兆円。日本が後方支援という名の下に様々な形で、だってミサイルも核兵器もクラスター爆弾も劣化ウラン弾も定義上弾薬ですから、消耗品をたくさん提供すれば莫大なお金が掛かる。将来、万が一この法律が成立した後、日本が負担するこれらの予算についてどう考えていますか。どうやって歯止めを掛けるんですか。大臣、どうぞ」

中谷元防衛大臣「これは一般論としてできるようになると申し上げておりまして、それはそれぞれの現状において政府が判断することでございますが、現時点におきましては全くそういった軍事活動を支援をするというようなことは考えておりませんし、今後とも難民、避難民に対する支援を、非軍事的な分野において我が国の責任を毅然として果たしていくということでございます」

福島みずほ議員「ひどいですよ。前の答弁言って、私の質問に答えてないじゃないですか。私の質問は、もしこの法案が万が一成立した後、莫大なお金が掛かるんですよ。掃討作戦だって何だって、後方支援だって、消耗品の弾薬を提供するので莫大なお金が掛かる。1兆5000億円、骨太方針で3年間抑制すると言っている。社会保障はばっさばっさばっさばっさ削ってるじゃないですか。にもかかわらず、日本には後方支援という名の下に、集団的自衛権の行使という名の下に莫大なお金を使うことはできないんですよ。誰がその抑制をするのか、誰が判断するのか。どうですか、大臣」

中谷元防衛大臣「これ、全部やるというわけではございません。これ、法律の判断をして実施するわけでございますが、我が国は当然財政的な状況等もございますので、実施する場合においても財政当局と調整を行って必要に応じて最適な対応を取るということで、現時点においては既存、既定の経費の範囲でその経費を賄うように努めているということでございます」

福島みずほ議員「予算をこんなことに使う余裕は日本の財政上もありません。戦争法案には断固反対ですし、政策と法律の定義を混同して答える防衛大臣の下で戦争法案の審議はできません。戦争法案廃案へ向けてしっかりやってまいりますし、大臣、この答えは全くできてない。こんなことでこれらの法案成立させることはできません。以上申し上げ、質問を終わります」

IWJの取材活動は、皆さまのご支援により直接支えられています。ぜひ会員にご登録ください。

新規会員登録 カンパでご支援

関連記事

「【安保法制国会ハイライト】対イスラム国空爆への支援、法理上可能か否か~福島みずほ議員の追及に中谷防衛相、「判断しない」と逃げ続ける」への2件のフィードバック

  1. 西遠寺 透 より:

    福島みずほ議員の質疑全文を拝見しました。
    中谷防衛大臣の答弁では
    (1)ISへの空爆に協力するかどうか、新三要件をみたすかどうかの判断は総理や防衛大臣なと関係閣僚にあり、他の人が客観的に満たしたと判断しても、公式な判断に当たらないというものです。
    (2)これでは法案審議ではなく、単なる政策議論であることは、福島議員ご指摘のとおりと思います。
    (3)法案のもと、かりにアメリカ軍からISの空爆の「後方支援」の要請があったら、安部政権はただちに協力するでしょう。
    (4)日本政府には、アメリカ軍からの後方支援協力要請を、その都度「判断する」主体性があるのかどうかが一つの焦点であると思います。
    (5)日本人ジャーナリストの安田順平とスペイン人ジャーナリスト3人がイラクで行方不明である今、ISについて日本政府の姿勢は、後藤さん湯川さんの事件後も何も変わっていないことが伺えます。

  2. 西遠寺 透 より:

    「後方支援」については米軍依存がはなだしく、政府答弁があやふやです。
    かつて旧日本軍がおこなった「兵站路」遮断作戦、安倍総理のまわりの世界情勢の変化に伴い「後方支援」と言い換える攻撃の顛末を見てみましょう。
    (1)1940年から1941年のフランス領インドシナ侵略は、援蒋ルートの遮断を目標としていましたが、英米の強い非難を浴びることとなりました。
    (2)1943年(昭和19年)3月のインパール作戦は、援蒋ルートの遮断を目標とした戦闘。日本陸軍に夥しい戦死者を出す無謀な作戦でした。 

    これらは、歴史の教訓です。兵站は、陸路、海路ともに「戦争相手国」以外の「中立国」を通ります。「中立国」の兵站路を攻撃したら、自国防衛のため攻撃しかえされます。安保法制では、米軍に要請があったら「敵地」以外でも日本は兵站路せん滅のため戦闘行為におよぶのでしょうか。たとえば「米軍が指定した敵国」にむかう、海路からの護衛艦つき資源輸入を自衛隊は公海上であっても叩くのでしょうか。このあたり、安保法制は未整理です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です