【安保法制国会ハイライト】核兵器の輸送問題で安倍総理「非核三原則の上に法律を運用するのは当然」と否定するも、広島・原爆の日式典で挨拶文から「非核三原則の堅持」をあえて削除! 2015.8.16

記事公開日:2015.8.16取材地: テキスト
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(佐々木隼也)

特集 安保法制

 安保法制における核兵器の輸送について「国是である非核三原則があるから絶対にあり得ない」と主張する安倍総理だが、その「非核三原則の堅持」を広島「原爆の日」の式典での挨拶文から、総理自ら「あえて」削除したことが明らかになった。

 国会はお盆休みに入る前、安保法制の参議院審議は「核兵器」の輸送が可能になるのかどうかで紛糾した。2015年8月4日、5日には、野党の追及により、この法案が「法文上は」クラスター爆弾や劣化ウラン弾などの非人道兵器、果ては核兵器についても、輸送や提供が可能となっていることが明らかになった。

 「法文上は排除はしていないが、日本には非核三原則があるので、そういうことは全く想定していないしあり得ない」と強調する中谷大臣だったが、ではなぜ法案に「大量破壊兵器や非人道兵器は除く」と明記しないのかについては「(要請があっても)断固拒否する」と繰り返すのみで、明言を避けた。

 8月7日の衆議院予算委員会で、民主党の山井和則議員は安倍総理に同様の疑問をぶつけた。法律的に可能のままだと、仮に次の政権が「違法じゃないから核兵器を運ぶ」と言い出した時、法律の歯止めが存在しないことになる。なぜ法案に「核兵器は除外」と明記しないのか。

 厳しい追及に安倍総理は「私は総理大臣として(輸送を認めることは)あり得ないと言っているのだから、間違いない。総理大臣として間違いないと言っている」といら立った様子で、答弁にならない答弁を繰り返した。

 山井議員は「憲法を解釈変更して、憲法違反の安保法案を出している安倍総理があり得ないと言っても、国民は信用しない。あり得ないことをやろうとしているから、国民は不安に思っているのではないか」と批判。核兵器、毒ガス、大量破壊兵器などを「絶対に弾薬に含まない」と法律に明記するよう、再度求めた。

 これに対し安倍総理は、 「国是として非核三原則がある。この国是の上に法律を運用していくのは当然だ」と述べた。しかし、この前日の8月6日「原爆の日」、広島での平和記念式典で挨拶に立った安倍総理は、これまでずっと言及してきた「非核三原則を堅持」という文言を削除した。

 8月10日の参議院予算委員会で、民主党の蓮舫議員がこの件について追及すると、安倍総理は「文案を官邸で見る段階で、最終的に私が判断した」と答弁。総理自らが「あえて」挨拶文から「非核三原則を堅持」を外したことを認めた。

 総理が、核兵器の輸送を法案から頑に除外せず、国是である「非核三原則の堅持」を挨拶文から外す理由は何か。2006年11月14日、第一次安倍内閣は閣議で、「核兵器であっても、自衛のための必要最小限度にとどまれば、保有は必ずしも憲法の禁止するところではない」との答弁書を出している。

 2014年3月の「武器輸出三原則」の見直しで、武器の輸出入や国際共同開発を解禁した安倍総理。こうした安倍総理の姿勢の先に、防衛産業を潤すための軍事国家化、核保有への欲求があるのではないか。そうした懸念の声に、安倍政権は真っ正面から応えることができるのか。18日から再開される今後の国会審議は注目だ。

 以下、8月7日の山井議員の質疑と、8月10日の蓮舫議員の質疑から、該当部分を抜き出し、以下に文字起こしを掲載する。

8月7日衆院予算委での山井議員の質疑より

安倍総理「そもそも、そんな、弾頭自体を日本に運んでくれと米国が言うこと自体は120%あり得ませんよ。そして、日本側が、120%ないということを前提に、頼まれたとしても、それは絶対にやりませんよ。それは当たり前ではありませんか、非核三原則もあるんですから。なぜそのことは聞かれないんですか。周辺事態安全確保法、今でもそうなんですよ、それは、純粋に議論であれば。ですから、それをこの法律だけについてだけどうかと言うことは、まさに国民に誤解を与えようとしている意図を感じざるを得ない。ですから、今私が申し上げたとおりであります」

山井議員「安倍総理の答弁はおかしいと思いますよ。私たちが今、国会で議論しているのは法律ですよ。この法律は、50年、10年、20年、30年、将来の日本の国を左右するんですよ。今の政権が政策判断で核兵器は輸送しませんと、そんな答弁じゃ、全く安心も納得もできるはずないじゃないですか。法律的に可能だったら、次の政権が違法じゃないから核兵器を運びますと言えば、違法じゃないんですよ。絶対にあり得ないというならば、安倍総理、今回の法案の中で核兵器は除外するとしっかり明記してください。そうしないと納得できません」

安倍総理「それは、先ほど申し上げましたように、周辺事態安全確保法、今既にある法律においても同じことなんですよ。法理上は同じだということは中谷大臣も述べているじゃないですか。ですから、それはそもそもそこでも起こり得なかった、これはあり得ないことだからであります。私は総理大臣として、あり得ない、こう言っているんですから、間違いありませんよ、それは。総理大臣としてそれは間違いないということを言っているわけですから 。これはそもそもあり得ないということについて、それはまるで政策的にあり得るかのごとく議論することは間違っているということを申し上げているわけであります。

山井議員「憲法を解釈変更して、憲法違反の安保法案を出している安倍総理があり得ないと言っても、国民は信用しませんよ。あり得ないことをやろうとしているから、国民は不安に思っているんじゃないですか」

(略)

山井議員「あり得ない、あり得ないとおっしゃるんだったら、政策判断であり得ないんじゃなくて、安倍総理のあり得ないという言葉ほど説得力のないものはないんですよ、法律で、安倍総理の言葉じゃなくて。私たち政治家は、後世の子供や孫たちの時代にも戦争のない、核兵器を絶対に輸送もしない、そういう日本を残す責任があるんですよ。その担保は、安倍総理の答弁ではだめです。法律にしっかり書いてください。核兵器、毒ガス、大量破壊兵器、それは絶対に弾薬に含まれない、そのことを法律に書いてください。書けない理由は何ですか」

安倍総理「国是として非核三原則を我々は既に述べているわけでありますし、はっきりと表明をしております。それを例えば全ての法律に落としているかといえば、それはそうではないわけでありまして、国是は国是として確立をしているわけでありますが、この国是の上に法律を運用していくのは当然のことであろう、このように思うところでございます」

山井議員「その国是を、きのうの平和式典で非核三原則、国是を言わなかったのはあなたじゃないですか」

8月10日参院予算委での蓮舫議員の質疑より

蓮舫議員「総理の公式行事における挨拶の原稿というのは非常に重いものです。総理秘書官あるいは関係省庁の担当者、二重三重にチェックをして、毎年度の整合性とか、あるいは新しい成果とか取組を盛り込んで、そしてチェックをして総理にお示しを して、総理が目を通して加筆修正することもあります。 この広島での平和祈念式の御挨拶文には、元々、非核三原則という言葉はありましたか」

安倍総理「今回、文案ができ上がる過程においては、これは官邸と外務省、そして厚労省において協議をするわけでございますが、その中において、協議をしたものについて 最終的に官邸でそれを見るわけでございますが、その段階で、言わばそれを使用するかどうかというのは最終的に私の判断でございますが、私が判断をして、そして広島、長崎、それぞれ御挨拶を申し上げたところでございます」

蓮舫議員「つまり総理が非核三原則を堅持という言葉を削除をした、そして、いろいろ誤解を招きかねなくて、長崎では入れたと。 誤解を招いたことについておわびするべきではないですか」

安倍総理「これはもとより 非核三原則を堅持をしていくということは大前提でございまして、当然それを前提としてそれぞれ御挨拶を申し上げるわけでございます。 私の場合におきましても、これは当然の前提として、今回も、核兵器のない世界について我々はしっかりと国際社会の中において役割を果たしていく、国際社会においてリードしていくということを表明をしている、るる述べているわけでありますから、その文面を見ていただければ、当然、 三原則を前提としているということは御理解いただけると、こう思ったわけでございます。その上において、国会においてまた様々な御指摘もいただきましたので、今回は、長崎における御挨拶においては、文言について、もう一度この文言を入れたわけでございます」

蓮舫議員「ということは、御自身の判断で広島の原稿から削除をしたのはやっぱり間違いだった、そういうふうに認めていいですね」

安倍総理「これは、今申し上げましたように、大前提として、非核三原則を堅持をしていくということが大前提の上にお話をさせていただいているわけでございますが、しかし委員会においてそうした御指摘もいただきましたので、誤解のないように長崎においては言及したわけでございます」

蓮舫議員「一方で、長崎の市長が、昨日、挨拶の中で、日本国憲法の平和の理念が揺らいでいるのではという不安と懸念が広がっていると、安保法案の慎重審議、それを求めました。被爆者代表の谷口さんは、戦争につながる安保法案は被爆者を始め平和を願う人々の思いを根底から覆そうとす るもの、許せないと挨拶している。 これは、単に法案への理解が足りないんでしょうか」

安倍総理「私どもは、まさに憲法の平和主義、この理念に基づいて、今回の法案におきましても、最大限まず外交において努力をしていく。そしてまた、70年前の戦争の惨禍は二度と繰り返してはならないと、この決意の下に歩んできた平和国家としての道はいささかも変わりがないわけでありますが、その上においての万が一への備えをするものであり、かつ憲法の基本的な考え方を変えているわけではございませんし、憲法の範囲内における解釈を行い、そして今回の法整備を行っているわけでありますが、あくまでも国民の命を守り、そして平和な暮らしを守るために必要不可欠なものであると、このように思いますし、そのように先般もお話をさせていただいたところでございます」

蓮舫議員「その安倍総理の言葉が心に響かない、 寄り添おうとしない姿勢が、私は国民の皆様方の安倍総理への不信につながっているんだと思います」
(了)

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「【安保法制国会ハイライト】核兵器の輸送問題で安倍総理「非核三原則の上に法律を運用するのは当然」と否定するも、広島・原爆の日式典で挨拶文から「非核三原則の堅持」をあえて削除!」への1件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    【安保法制国会ハイライト】核兵器の輸送問題で安倍総理「非核三原則の上に法律を運用するのは当然」と否定するも、広島・原爆の日式典で挨拶文から「非核三原則の堅持」をあえて削除! http://iwj.co.jp/wj/open/archives/258262 … @iwakamiyasumi
    本心は隠せない、隠さない。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/632864491483435010

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