キャンパスから生まれた共同行動! 学生と学者が「民主主義はこれだ!」4000人の集会とデモ 〜闘病中の坂本龍一氏がメッセージ「安保法制はクーデターに近い」 2015.7.31

記事公開日:2015.8.2取材地: テキスト動画
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(取材:石川優・ぎぎまき、記事:ぎぎまき)

 「安倍晋三は私の20年来の敵です」――。

 1万2千人を超える学者たちが賛同人に名を連ねる「安保関連法案に反対する学者の会」と、毎週金曜日に国会前で抗議集会を続ける「SEALDs」を中心とした若者たちが2015年7月31日、初めての共同行動となる集会とデモを行ない、約4000人が参加。その後の金曜国会前行動は2万5千人に及ぶ規模となった。

 集会は2部に分かれて行なわれ、各回ともに、座りきれないほどの参加者で溢れ、学者や学生が次々にスピーチ。壇上に立った同志社大学の岡野八代教授は、初めて参加したというこの日のデモ行進で、IWJのインタビューに答えた。

 「関西の学生のデモでスピーチしたことはありますが、こうやってデモから参加するのは初めてです。ここはもう市民として、研究者として、できることはなんでもしようと思っています」

 同志社大学大学院で政治思想史を教えているという岡野教授の専門はフェミニズム思想。安全保障という言葉の陰に隠れた戦争を、女性の視点、被害者の立場から研究しているといい、従軍慰安婦の問題にもずっと関わってきた。

 「安倍晋三は私の20年来の敵です。彼は酷いですね。特に従軍慰安婦に関しては政治家になって以降、すぐ慰安婦問題を否定するような活動を始めています。私はやはり彼を許せません。

 黙っていられないと若いお母さんや学生が立ち上がっています。自分の言葉で語ることができる彼らのパワーと可能性はとても大きい。

 立憲主義は人類の失敗の中で生まれてきた叡智です。権力者の暴走によって多くの人々の命が奪われた中で生まれてきた歴史を、研究者として伝えられればと思っています」

▲学生と学者らが日比谷公園を目指して行進した。「民主主義って何だ!?」「民主主義はこれだ!」

 都市計画や都市デザインが専門の「学者の会」のメンバーの一人である男性も「安倍政権打倒」の思いを語った。

 「70年の歴史を持つ新憲法と民主主義、平和と自由と人権。こういう問題が安倍内閣によって、ことごとく覆されている危機的な状況だと思います。

 あまりこういう行動は参加して来なかったんですが、やはり、もう家に留まっている気がしなくて。私は70歳を超えています。子どもや孫たちが戦争法案に巻き込まれて行くと、戦前の繰り返しになる。それはどうしても止めたいと、我々世代の責任だと思って、安倍政権を倒さないといけないという思いで参加しています」

■第1部
・ハイライト

■第2部
・ハイライト

  • 17:00〜 第1部 集会(砂防会館)
    • 司会 芝田万奈氏(SEALDs)×佐藤学氏(学習院大学教授・東京大学名誉教授)
    • スピーチ 津田研人氏(SEALDs KANSAI、神戸大学大学院)/廣渡清吾氏(学者の会発起人、専修大学教授・東京大学名誉教授、日本学術会議前会長)/斎藤雅史氏(SEALDs TOHOKU、東北大学)/岡野八代氏(学者の会呼びかけ人、同志社大学教授、京都96条の会代表)/奥田愛基氏(SEALDs、明治学院大学)
    • メッセージ 坂本龍一氏(ミュージシャン)/集会アピール
  • 17:40〜 国会請願デモ 砂防会館 → 議員会館 → 日比谷公園
  • 18:10〜 第2部 集会(砂防会館)
    • 司会 神宮司博基氏(SEALDs、立教大学大学院)×大澤眞理氏(学者の会呼びかけ人、東京大学教授)
    • スピーチ 桑島みくに氏(SEALDs、横浜市立大学)/高山佳奈子氏(学者の会呼びかけ人、京都大学教授)/千葉泰真氏(SEALDs、明治大学大学院)/中野晃一氏(上智大学教授)
    • メッセージ 坂本龍一氏(ミュージシャン)/集会アピール
  • 18:40〜 国会請願デモ 砂防会館 → 議員会館 → 日比谷公園
  • 19:30〜 戦争法案に反対する国会前抗議行動

安倍内閣は「違憲内閣」

 「『専守防衛にいささかの変更もない、戦争に巻き込まれることは絶対にない』と断言に次ぐ断言を重ねていますが、もし、彼が言っていることが彼の本心であるとすれば、法案を理解していない『馬鹿』だということになります」

 こうスピーチしたのは、「学者の会」発起人の廣渡清吾・専修大学教授だ。

▲専修大学・廣渡清吾教授「違憲内閣を許すわけにはいかない」

 「まず、SEALDsのみなさんに連帯のエールを送りたい。みなさんのこれまでの活動は、私たちを大いに励ましてくれました。また、今回の法案に反対する色々な運動が全国で展開していますが、この法案に反対する国民を大きく勇気づけたと思います」

 冒頭で若者たちへの謝意を述べた廣渡教授は、続けて、安保法案の問題点を指摘。法案は「憲法9条にとどめを刺す法案に他ならない」と断じ、この法案を許せば、過去の希望が踏みにじられることになると訴えた。

 「憲法9条は、日本国民が戦後、侵略戦争と植民地支配を反省し、もう二度と外国と戦争はしないと、世界に約束し、二度と戦争に駆り立てられることはない、平和のうちに生きることができるという国民の希望を託したものだと思います。

 この法案を許せば、この約束もこの希望も踏みにじられることになります」

 また、安倍総理を「馬鹿」だと揶揄した廣瀬教授だが、安倍内閣については「違憲内閣」だと批判した。

 「安倍総理は客観性や立証性を無視して、自分の思うがままに世界を理解する。反民主主義的、反立憲主義的な違憲の内閣を許す訳にはいかない。

 強行採決を強行させない状況を作り出すことが大事。安倍内閣の支持率をうんと引き下げること。この法案に対する国民の声をますます結集すること。国会や官邸を10万人、20万人の国民で包囲し、安倍内閣を立ち往生させるとが必要だと思います」

“I have a dream”「本当に止めたい」

▲1部、2部ともに1200人以上の参加者で溢れた

▲スピーチをするSEALDsメンバーの一人、明治学院大学4年の奥田愛基さん

 集会では、SEALDsのメンバーの一人、明治学院大学の奥田愛基さんもスピーチ。憲法、安全保障、民主主義の観点に立って安保法案の問題点を列挙し、その中で、11個の関連法案の名称を言えなかった安倍総理について批判した。

 「安全保障関連法案の11個の法案がまとめて審議されています。11個の法案をまともに知っている議員はどれほどいるのでしょうか。一応、僕は全部の法案について見てみました。とんでもない量で気が遠くなって、学期末でしたが、もう2度と見たくないと思いました。

 案の定、安倍晋三さんはこの11個の関連法案の名前すら言えませんでした。法案の名前すら言えない国会審議を見ていて、非常に腹が立ちます。まともに議論できていないのに(法案が)必要だと言う。憲法上の議論も何も説明できていない。この状態で強行採決すると聞いて僕は本当に腹が立ちました。

 憲法は国民の権利です。それを無視することは国民を無視するということ。その状態で強行採決する、民主主義の議論としても相当なめていると思います」

 奥田さんをはじめとする「SEALDs」は、安保法案を「本当に止める」というスローガンを掲げて活動しているが、止めるための具体的なプランは何かと尋ねる声も多いという。

 「『本当に止める』と言っている僕たちですが、具体的なプランを出せとよく言われます。しかし、よく考えてください。誰か、黒人の人種差別を撤廃するという時にワシントン大行進の中で、”I have a plan”と言った人がいるでしょうか。いないんです。私が言いたいことはこれです。

 ”I have a dream”です。本当に止めたいんです。

 この段階からなぜ日本の民主主義が腐っているか、若者の投票率がなぜ低いのか、そんなことを議論していても仕方ないのです。できない理由を実証して何になるのでしょうか。我々には夢があります。変えたい未来があります。その未来を私たちは生きていきます。

 繰り返しましょう、何度でも言いましょう。民主主義とは何なのか。この政権に対して、何度も言っていきましょう」

音楽家・坂本龍一氏「安保法制はクーデターに近いもの」

 学生や学生たちのスピーチ終了後、世界的な音楽家、坂本龍一氏のメッセージが読み上げられた。現在、癌で闘病中だという坂本氏は、SEALDsがまだSASPLとして特定秘密保護法に反対していた時から若者にエールを送ってきた一人だ。

 「私は今回の安保法制は正面から改正することなく、解釈によって憲法をなし崩しにしようという『クーデター』に近いものだと思っています。しかし、それによって多くの日本人、特に女性の中に兵器への危機感、戦争への拒否感、つまりは憲法9条の精神が、今でも深く刻み込まれていることが分かりました。

 また、これまで、生死、憲法について深く考えたことがなかったであろう多くの若い世代の人たちが、それらを身近に考え、自分の考えを述べ、行動に移しています。これらのことが私にとって、唯一の希望です。7月31日 坂本龍一」

(…会員ページにつづく)

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