アメリカの宇宙衛星を守るよう要求されている日本、集団的自衛権で宇宙戦争に巻き込まれ、原発が攻撃される危険性を立命館大学・藤岡惇教授が指摘 2015.7.15

記事公開日:2015.7.30取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・奥松)

特集 3.11から11年!『ウクライナ侵攻危機』で、IWJが警告し続けてきた『原発×戦争リスク』が明らかに!
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 「ドローンを使うアメリカの戦争は、宇宙衛星を利用する。攻撃される側は『宇宙衛星をマヒさせればいい』と考える。事実上の宇宙戦争であり、衛星が狙われる時代。つまり、集団的自衛権には、日本がアメリカの宇宙衛星を守ることも含まれる」──。

 「宇宙戦争も核戦争もNO!『ミサイル防衛』『集団的自衛権』の真実を探る」と題した記者会見が2015年7月15日、京都市左京区の京都大学にて行なわれ、立命館大学特任教授の藤岡惇(あつし)氏が、現実味を帯びてきた宇宙戦争の危険性について訴えた。

 「宇宙で核爆発を起こすと、真空なので風も音も出ない。熱線と放射線だけが何万キロも飛んで行く。大きな核兵器を1発、宇宙で爆発させたら、それだけでアメリカの戦争システムは終わる。放射線はゆっくり地球に降り注ぎ、人類は簡単に終末を迎えるだろう。今の状況は、その一歩手前だ」

 「兵器と核エネルギーの宇宙配備を許さない地球ネットワーク(Global Network against Weapons and Nuclear Power in Space)」は、設立23周年の今年、初めて日本で総会を行う。ミサイル防衛(MD)や宇宙軍拡に反対し、核廃絶に取り組んできた各国35名の専門家や市民が、今年の夏、京都に集う。

 これを受けて藤岡氏らは、「宇宙と平和」国際セミナー@京都、と名付けたセミナーを開催する。藤岡氏は、「京都には、経ヶ岬に米軍のXバンドレーダー基地ができた。今、日本で問題になっているミサイル防衛や集団的自衛権の問題点を、宇宙的視野から立体的に考える絶好の機会だ」と意気込みを示した。

 国際セミナーは、7月30日に同志社大学、8月1日に立命館大学で開催され、一般市民の参加も可能。7月31日には、2014年12月から運用が始まった米軍のXバンドレーダー基地がある、京丹後市の経ヶ岬を訪ねるツアーも実施する。

 また、セミナー2日目には、毎年8月に米国の学生を引率して、原爆が投下された広島と長崎を訪問している(2013年には映画監督のオリバー・ストーン氏も同行)アメリカン大学の歴史学教授、ピーター・カズニック氏の登壇も予定されている。

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■全編動画

  • 日時 2015年7月15日(火)14:00~15:00
  • 場所 京都大学

このままでは宇宙が戦場になる

 藤岡氏は、兵器と核エネルギーの宇宙配備を許さない地球ネットワークについて、「宇宙の軍事利用や、新型の核戦争の危機に警鐘を鳴らす市民団体で、1992年に米国で設立された。現在は、各国の200くらいの団体とグローバルネットワークを築いており、年1回の総会を世界各地でやってきた」と説明し、このように続けた。

 「昨年(2014年)、京丹後市の経ヶ岬にXバンドレーダー基地ができた。あれは宇宙基本法(2008年)によるものだが、このままでは宇宙を本格的な戦場にしてしまう。そんな局面を迎えたこともあり、今年は総会を京都に誘致したいと考えて、それが実現することになった。総会を兼ねて、7月30日(午後)に同志社大学、8月1日(午前・午後)に立命館大学で、合計3回の『宇宙と平和』国際セミナー@京都を開催する。10数ヵ国から35名の専門家たちが参加する予定だ」

 現在、進んでいる宇宙戦争の危機について、藤岡氏は、「ミサイル防衛とは何か。経ヶ岬のXバンドレーダー基地はどういう位置づけか。ほとんどの日本人は知らない。今、日本で問題になっているミサイル防衛や集団的自衛権の問題点を、宇宙的視野から立体的に考える絶好の機会になると思う」と力を込めた。

日本が宇宙戦争に参戦すれば、狙われるのは福島第一原発

 日本では、宇宙戦略を含めた戦争研究者は非常に少なく、宇宙基本法や、第3次宇宙基本計画の策定(2015年1月)も、ほとんど問題にされていないが、藤岡氏は、「その内容は、今後は宇宙戦争が必至で、日本の方針として、核攻撃などを想定した宇宙衛星を作らなければいけない、と書いてある」と言う。

 「今、アメリカの戦争の半分は、事実上、宇宙戦争だ。アメリカは、すでに10年前からドローンを使う戦争をやっているが、それは全部、宇宙衛星を利用する。ドローンで攻撃される側は、『宇宙衛星をマヒさせればいい』と考える。だから、衛星が狙われる時代になり、日本はアメリカの宇宙衛星を守るように要求されている」

 こう話した藤岡氏は、現在は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が準天頂衛星7基を使ったシステム構築を目指しているとし、「目的は、アメリカのGPS衛星すべてがマヒした場合に、日本がアメリカの戦争システムを維持できるようにすること。つまり、集団的自衛権には、アメリカの宇宙衛星を守るという役割もある」と述べて、次のように危機感を示した。

 「これを放置しておくと、日本は宇宙戦争に参戦して攻撃されてしまう。日本の衛星が攻撃されるだけではなく、狙われるのは日本の原発。特に、福島第一原発だろう。原発が集中する若狭湾もそうだ」

これは、新しいマンハッタン計画

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 藤岡氏は、「原発への攻撃は、新しいかたちの核戦争だ。また、宇宙衛星への攻撃とは、宇宙で核爆発を起こすこと。つまり、日本がミサイル防衛に加わっていくことは、地上と宇宙、二重の核戦争を招き寄せることになる」と述べ、今までにはない核戦争のリスクを認識してほしいと口調を強めた。

 また、イランの核協議が最終合意に至ったことを高く評価した藤岡氏は、「日本も軍事力ではなく、外交の力で北朝鮮の核問題を解決するべきだ。一番いいのは、65年間続いている朝鮮戦争の調停を日本が行うこと。イランに続いて北朝鮮、中国。(核武装を解除させていく)絶好の機会だと思う。核兵器を封じ込める方法は、軍事力ではない」と主張した。

 さらに、「ミサイル防衛=安全を守る良いもの」だと考える人が多いが、まったく逆だと指摘し、「これは、新しいマンハッタン計画。世界最大の軍拡競争が、東アジアで始まる可能性がある。莫大な軍事費が宇宙に吸い込まれて、日本の経済力が萎えていく。ミサイル防衛の神話と真実を知ってもらいたい」と訴えた。

世界中に張り巡らされた「目」

 「8月の京都セミナーは、日本国内の政治状況と、国際的な安全保障環境との接点を探るものになる」と発言したのは、同セミナーの実行委員で、大阪大学の大野光明氏である。

 「今日ちょうど、衆議院で安保法制の可決があったが、大変遺憾だ。今回の安保法制、集団的自衛権、特定秘密保護法という日本国内の流れと、アメリカが進めているミサイル防衛システムが、いかにリンクしているかが、京都セミナーの中で明らかになると思う」

 このように話す大野氏は、2014年から運用が始まった京丹後市の米軍基地についても、ミサイル防衛システムの一端を担うXバンドレーダーが配備された通信基地だと説明し、「日本政府は京都府や住民らに対し、Xバンドレーダーは日本の安全保障を強化すると説明したが、アメリカ政府のグローバルな安全保障政策の中で、Xバンドレーダーがいかなる機能を持つのか、今回のセミナーで確認されるはず」と明言した。

 ミサイル防衛について、大野氏は、「アメリカは、ミサイルをウォッチする目としてのレーダーを世界各地に張り巡らせており、その中には自衛隊のレーダーも組み込まれる。アメリカと各国の軍隊がネットワークを形成し、情報を瞬時に共有、(有事には)ミサイルを撃ち落とすためのミサイルが、日本本土も含めて各地から発射される」と具体的に語った。

米国の安全保障政策上の重要拠点、京都の日本海側

 そして、京都のXバンドレーダー基地や、国際情勢の変化を考えると、秘密保護法の施行と集団的自衛権の行使容認が、拙速に行われた理由が明らかになってくるとし、このように言い重ねた。

 「東アジアのどこかの国から、アメリカ本土へ向かってミサイルが発射された時、日本にあるレーダーでそれを追尾して、途中で撃ち落とすためには集団的自衛権が必要。これを可能にする法案が、今、国会で審議されているが、それを先取りするかたちで、京都ではレーダー基地ができた。

 また、舞鶴には自衛隊のイージス艦が配備されているが、これも、グローバルなミサイル防衛システムのネットワークの中で機能を果たすものだと、アメリカ政府は考えているだろう。つまり、京都の日本海側は、すでにアメリカの安全保障政策を遂行する一大拠点になっている」

 大野氏は、「秘密保護法の成立には、日米間の防衛情報を秘密裏に共有し、漏えいした場合は厳罰を科す法制度を、アメリカから求められたという背景がある」と指摘。ミサイル情報、防衛情報を瞬時に共有するネットワークに、日本が組み込まれる前提ができていたことを示唆した。

宇宙戦争と核爆発──今は終末の一歩手前

 質疑応答の中では、7月31日にセミナー講師も含む50名ほどが、バスで京丹後の経ヶ岬に向かい、基地見学や現地の人と情報交換を行うこと、一部の人はプレツアーとして、7月26日から28日まで沖縄の辺野古に行くことが報告された。

 最後に再び、藤岡氏がマイクを握ると、「日本で宇宙計画といえば、『火星に行きたい』というような夢と希望があふれるものだが、元々、宇宙は軍事利用のメッカだ。ミサイル防衛にお金を注ぎ込めば、必然的に宇宙戦争に発展する」と述べ、このように警鐘を鳴らした。

 「宇宙で核爆発を起こすと、真空なので風も音も出ない。熱線と放射線だけが何万キロも飛んで行く。軍事衛星は地上の米軍基地より攻撃しやすく、受けるダメージも大きい。大きな核兵器を1発、宇宙で爆発させたら、それだけでアメリカの戦争システムは終わる。放射線はゆっくり地球に降り注ぎ、人類は簡単に終末を迎えるだろう。アメリカは、それを一番よく知っている。今の状況は、その一歩手前だ」

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「アメリカの宇宙衛星を守るよう要求されている日本、集団的自衛権で宇宙戦争に巻き込まれ、原発が攻撃される危険性を立命館大学・藤岡惇教授が指摘」への1件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    【京都】アメリカの宇宙衛星を守るよう要求されている日本、集団的自衛権で宇宙戦争に巻き込まれ、原発が攻撃される危険性を立命館大学・藤岡惇教授が指摘 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/253118 … @iwakamiyasumi
    宇宙戦争と核爆発。今は終末の一歩手前、SFではないのだ。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/627087112664264705

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