「東京弁護士会、第一東京弁護士会、第二東京弁護士会が一同に介するという、かつてないことになっている」——。
年齢や支持政党を超えた3つの弁護士会に所属する女性弁護士ら140人が、2015年7月10日、政府与党が進める安全保障法制に反対する集会を開いた。
これまでも、毎月、共同で街宣活動を続けてきた弁護士会だが、「ここへきて、安保法制に対する市民の関心がかつてないほど高まっている」とし、命や暮らしに敏感な女性弁護士を集めた会を企画したと、東京弁護士会副会長の大森夏織さんが説明した。
「先月6月の街宣行動では、道行く女性たちが進んでパンフレットを受け取って行きました。署名にも順番待ちが生じるほど。安保法制が自分の子どもや孫たちにどんな影響を与えるのか不安を感じている女性たちが増えています。その声に応えるため、今日の集会と街宣活動を企画しました」
- 女性弁護士によるリレートーク
- 特別ゲスト 小林節氏(慶應義塾大学名誉教授)/雨宮処凛氏(作家)
- 街頭宣伝 東京交通会館前(東京・有楽町)
「立憲主義を知らない国会議員がいることに驚いた」
▲職種、年齢、支持政党がさまざまな弁護士140人が集まることは「異例」の事態だという
140人の女性弁護士たちは集会でリレートークを行ない、安保法制に対する法律家としての想いを女性の視点から訴えた。
「毎年8月になると、当然のように平和について考えてきました。このまま寿命が尽きるまで、平和の中で生きていくものだと思っていましたが、まさか、戦争を経験した人が生きているうちに、こんなことになってしまうとは。
立憲主義を知らない国会議員があれだけいることに驚いています。この機会に、主権は国民にあるということを訴えていきましょう」
3人の子どもがいるという女性弁護士は、高校生になる息子宛に自衛隊の申込書が送られて以来、不安が現実になったと話す。
「子どもが3人いますが、先日、高校生の息子に自衛隊の申込書が送られてきました。21歳の息子の時にはありませんでした。こういった事実に直面すると、リアルに危機感を感じます。法律家として、この危機的状況に対して反対活動をしていきたいと思います」
小林節氏「安倍政権は確信犯のバカだと気づいた」
▲小林節氏があいさつで「空っぽな人たちが軍隊の突撃ラッパなんですよ」
さらに、2年前にアウシュヴィッツを訪れたという弁護士の女性は、ナチス政権時のドイツと今の日本を重ねて、次のように説明した。
「2年前にアウシュヴィッツを訪れた時に、なぜ、あんな虐殺が起きてしまったのか考えました。ドイツには素晴らしい憲法がありました。しかし、『全権委任法』という、政府に全ての権限を委任しようという法律が通ってしまったのが、そもそものきっかけだったのだと思います。
法律が憲法を超えるということがいかに恐ろしいことなのか。それと同じようなことが今起こっているのではないでしょうか。政府が、法律が、憲法を超えるようなことがあっては絶対にいけないと思います」
集会には憲法学者の小林節氏も参加。小林氏は挨拶の中で「安倍政権は本物のバカだ」と痛烈に批判した。
「最近気づきましたが、安倍内閣は本当に賢くないんですよ。真面目に議論して空回りして、本当にイライラしていたんですけど、相手は本物の、確信犯のバカだと気づきました。あの空っぽな人たちが軍隊の突撃ラッパなんですよ。国会の最高トップにブレーンがないんですから、本当に恐いことです」
民主党・枝野幸男幹事長「共産党と肩を並べて街宣活動をすることになるとは」
集会散会後、女性弁護士らはJR有楽町駅前に移動。仕事帰りのサラリーマンなどが行き交う中、街宣活動やビラを配布し、安保法制は違憲だとするスピーチを行なった。中には、民主党の枝野幸男幹事長の姿もあり、山下芳生共産党書記局長とともに、演説を打った。
▲弁護士でもある枝野幸男民主党幹事長と握手をする共産党の山下芳生書記局長
「共産党さんと肩を並べて街頭演説をすることになるとは、思っていませんでした。でもまさにそういう事態なんです。個別の主義主張、政策の違いがあったとしても、法の支配と立憲主義というのは、近代社会の共通のルール。
その土俵の上で政策の違いをぶつけ合うんです。それにも関わらず、誰が言ってきたわけではない、歴代の自民党政権が自ら言ってきた憲法解釈を、勝手にがらっと変えて、集団的自衛権を行使できるようにする。それは戦争への道であると同時に、私たちが当たり前だと思ってきた法の支配と立憲主義、近代主義の基本を根底から覆す事態です。
党派を超えて、日本社会の基礎を守らなければいけない闘いです。しかし、国会の中での闘いだけでは勝つことはできません。この1、2ヶ月、世論の声が急激に大きくなっていることは、与党も含めて感じているところだと思います。国会でも最大限の共闘を組んで闘っていきます」
この日、国会内では民主、維新、共産、生活、社民の野党が集結し、「早期採決への断固反対」のため、「緊密な連携」を確認し合う野党5党の党首会談が行なわれている。
36歳、女性弁護士「法律で憲法を変えることがどれだけ矛盾したものか、法律家が声をあげなければ」
▲有楽町駅前ではピンクの風船の前で女性弁護士たちが次々にリレートークを行なった
▲弁護士らの訴えに足を止める通行人の群れ
有楽町駅前でのアピール行動終了後、IWJは女性弁護士たちに話を聞いた。