小林節氏「アメリカにとって日本は財布であり2軍。憲法を破って国が滅びる」 前田哲男氏「安保法制は憲法破壊の地雷原」 〜2人の専門家が院内集会で警告 2015.6.18

記事公開日:2015.6.29取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根)

特集 集団的自衛権
※6月29日テキストを追加しました!

 「戦争ばかり続けてボロボロのアメリカにとっては、日本は財布であり2軍でしかない。結果、憲法を破って国が滅びる。だから憲法を守り、専守防衛に徹すること」──。憲法学者の小林節氏は、「『戦争法案』を葬ろう」と題された院内集会で歯切れよく持論を展開した。

 軍事評論家の前田哲男氏は、「安保法制の内容に踏み込むと、そこには憲法破壊の地雷原が広がっている」とし、憲法との関連を縦軸に、日米安保を横軸にしたシンボルが、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)なのだと語った。

 2015年6月18日、東京都千代田区の衆議院第一議員会館で、講師に憲法学者の小林節氏と軍事評論家の前田哲男氏を迎え、立憲フォーラム・戦争をさせない1000人委員会主催の「『戦争法案』を葬ろう 6.18院内集会~安保法制を廃案にするために、いまやるべきこと」が開催された。

 今回、与党・自民党は新ガイドラインのために、10本の自衛隊法、PKO法、周辺事態法などの改正法案と、1本の新法「国際平和支援法案」を決め、海外派兵を恒久化し、いつでも発動できるようにするという。

 前田氏は、「安倍首相は『自衛隊を戦闘地域には出さない』と何度も強調し、『戦闘現場で死者が出たら、すぐに活動を中断する』と言う。確かに支援活動の一次中止や避難などは、国際平和支援法の7条に書いているが、同8条6には『救助活動の遂行中の場合、継続する』ともあり、結果的に戦場に飛び込むような任務を付加している」と指摘。安保法案のトリックを暴いていった。

 「なぜ、このような自発的な米国隷属になったのか」との質問を受けた前田氏は、「第一次安倍内閣では、従軍慰安婦、侵略戦争を否定したにもかかわらず、第二次安倍内閣になると、アメリカに謝罪ばかりして隷従体制をあらわにした。しかし安倍さんは、そのうち(米国隷従を)ひっくり返す気があるのではないか。だから、アメリカは安倍首相を信用していない」と応じた。

記事目次

■ハイライト

  • 講師 小林節氏(憲法学者)、前田哲男氏(軍事評論家)

憲法9条、再びノーベル平和賞にノミネート

 冒頭、江崎孝参議院議員が、「国会議員61名が推薦人となり、今年(2015年)も憲法9条がノーベル平和賞にノミネートされた」と報告した。

 続いて、立憲フォーラム幹事長の辻元清美衆議院議員が、安保特別委員会の近況について、「維新の党は憲法違反について言及しなかった。また、今朝の予算委員会で小野寺元防衛相は、再び『海外にいる赤ちゃんを抱いた母親の邦人保護』を例に持ち出した」と話し、現在の焦点は、昭和47年政府見解と砂川判決根拠の2つだとした。

 その上で辻元議員は、「6月24日、会期延長には反対し、廃案を目指す。そのためには世論の声が必要です。国会議員は地元の選挙民の声が一番怖い。ぜひ、反対を直接、議員に請願してほしい」とスピーチした。

 次に、江崎議員が、吉川元衆議院議員、照屋寛徳衆議院議員、水岡俊一参議院議員、神本美恵子参議院議員、泉健太衆議院議員、相原久美子参議院議員、徳永エリ参議院議員、小西洋之参議院議員ら、出席議員を紹介した(近藤昭一衆議院議員は、途中から参加)。

憲法が有効である以上、自衛隊は「軍隊」ではなく「警察」だ

 まず、憲法学者の小林節氏が、「6月4日の憲法審査会の参考人招致は、まさにオウンゴール。長谷部恭男教授は、憲法学の一番の権威だ。長谷部氏の違憲表明で、サイレント・マジョリティーも安心して声を上げられるようになった」と述べ、「最近は、街を歩いていても、タクシーに乗っても、みんなに励まされる。2年前、96条先行改正を廃案にした時の空気に似ている。政治家は評判に敏感なので、今、廃案にすべきだ」と明言した。

 そして小林氏が、「憲法審査会後、国際法上では、個別的自衛権と集団的自衛権を持てることを言い始めたが、国際法より憲法が優先するのは自明の理だ。しかし彼ら(安倍政権)は、国際情勢が変わり、安全保障環境も変わったため、地球の裏側で有事があったら、必要最小限で何でもできる、と勘違いしている。実はこの論法は、以前、私が自民党の勉強会で教えたこと。使い方の知らない輩に凶器を与えてしまったと反省している」と話すと、会場に笑いが起こった。

 続けて、「元内閣法制局長官のアドバイスでもあるが、『自衛隊は軍隊ではなく警察だ』と言いたい。憲法9条2項で、軍隊と交戦権は持てない。憲法76条2項でも、軍法会議を持てないとしている。第二次世界大戦の戦勝国側は、日本の軍事力が外に出ることは考えられない、考えさせないための憲法にした。だから、自衛隊も警察予備隊として発足した。日本国憲法が有効である以上、警察を国外に出したら組織犯罪者にされてしまう。これを変えたいのなら、憲法改正しかない」と、小林氏は持論を展開した。

憲法破って、国が滅びる

 「憲法を守って国が滅んでいいのか、という本(『憲法守って国滅ぶ』)は、24年前、自分が書いた本だが、よく言ったよな」と、小林氏はジョークをはさみつつ、次のように訴えた。

 「安倍政権の言うことに従えば、われわれもキリスト教徒同様に、イスラムからのテロ対象になってしまう。神道と仏教の国民は(キリスト教、イスラム教以外の)第三者になれるところを、わざわざアメリカの助っ人になって、一緒にボロボロになる必要はまったくない。

 戦争ばかり続けてボロボロのアメリカにとっては、日本は財布であり2軍でしかない。結果、憲法を破って国が滅びる。だから憲法を守り、専守防衛に徹すること。南シナ海でも、中国、ベトナム、フィリピンの争いにわざわざ首を突っ込む必要はない」

(…会員ページにつづく)

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「小林節氏「アメリカにとって日本は財布であり2軍。憲法を破って国が滅びる」 前田哲男氏「安保法制は憲法破壊の地雷原」 〜2人の専門家が院内集会で警告」への1件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    「戦争法案」を葬ろう 6.18院内集会~安保法制を廃案にするために、いまやるべきこと ―講師 憲法学者・小林節氏、軍事評論家・前田哲男氏(動画) http://iwj.co.jp/wj/open/archives/249655 … @iwakamiyasumi
    「いまやるべきこと」それは、僕やあなた一人一人が出来る事。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/611889508972277760

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