【IWJブログ】市民らを強制排除して強行配備された米軍「Xバンドレーダー」 現場の市民「『軍事占領がどのようにして起こるか』を、現在進行形で見せられた気持ちでした」 2014.10.22

記事公開日:2014.10.22 テキスト
このエントリーをはてなブックマークに追加

(IWJ・原佑介)

 「軍事占領がどのようにして起こるか、現在進行形で感じた」

 10月21日午前4時半頃、雨が降りしきる中、京都府京丹後市丹後町の米軍・経ケ岬通信所に「Xバンドレーダー」が搬入された。現場にいた市民のひとりは、民意をものともせずに進む基地建設を目のあたりにし、今も日本は米国の軍事占領下に置かれていると感じたという。

 Xバンドレーダーは米軍のミサイル防衛システムのひとつで、1000キロ先の小さな目標物も識別できるという高性能が装備されている。米軍が、北朝鮮などのミサイルを追尾・撃墜するため、経ヶ岬の航空自衛隊基地内にXバンドレーダーの設置を計画。2013年2月、日米間で設置を決定し、京丹後市もこれを了承した。

 経ヶ岬にレーダーが配備されれば、青森県つがる市の航空自衛隊車力分屯基地に続き、国内2例目となる。配備に伴い、米軍人20人、民間の軍属140人が常駐する予定で、今まさに近畿で初となる米軍基地が作られている最中だ。

 地元・宇川地区は海に面した静かな土地で、約1600人の住民が住む。そこに、住民の1割にもあたる160名もの米軍関係者が突然、移り住むということで、住民は不安を抱えている。

住民へ知らされなかった搬入「保安上の観点で移動方法や日時は公表できない」

 Xバンドレーダーは、地元住民にも知らされず、密かに搬入されようとしていた。

 長さ約13メートル、重量約34トンのレーダーを搭載したトレーラーは、搬入前日の20日夜9時頃、石川県の航空自衛隊小松基地を出発。一般道の信号はすべて青信号に切り替えられ、パトカーに先導される厳重な警備態勢のなか、京丹後市へ移動した。レーダーの搬入は「保安上の観点から、移動方法や日時は公表できない」として公開されずにいた。

 今月10月22日に、レーダーの運用を担当する米陸軍第14ミサイル防衛中隊の発足式が基地で行われる。それまでにレーダーは搬入されるだろう、と考えた住民らが昼夜、警戒にあたっていた中、レーダーは搬入された。

 米軍基地問題に取り組む京都の市民団体「スワロウカフェ」の大野光明さんは、20日の夜8時頃から基地周辺に張り付いた。大野さんはレーダー搬入後の基地現場の模様などを、IWJ京都チャンネルでツイキャス配信してくれた。

「レーダーがきたぞ!」

 大野さん曰く、20日の夜、平日にもかかわらず、多くの取材陣が基地の正面ゲート前に集まっていた。事情を聞くと、「米軍部隊の正式な結成式が開かれる前にはレーダーが搬入されるだろう」ということだった。

 深夜2時半頃、近くの道路にたくさんの警察車両、機動隊護送車両が姿をみせた。警察は警備を固め始め、取材陣に対し、車両をどかすよう指示。取材陣は「レーダー搬入が終わればどくので、それまではいさせてほしい」と応じた。周囲の警備も厳しくなり、「もうすぐレーダーが搬入される」と判断した大野さんたちは情報発信を始め、ただちに現場に集まるよう、仲間たちに呼びかけた。

 深夜3時半過ぎから基地ゲート前の動きも激しくなっていった。総勢50人ほどの警察関係者が、抗議に集まった市民らを端へと追いやり始めた。4時20分頃には、ゲート前の道路は完全に封鎖された。と同時に、これまで京丹後市で開かれてきた米軍基地に関する住民説明会で説明にあたっていた防衛省の担当者らが到着し、厳重な警備の中、基地内に迎え入れられた。

▲ 厳重な警備のもと出入りする関係者ら

 4時25分頃、大きな警察車両がさらに2台到着。「道を開けろ」と、機動隊が盾で市民らを強制排除し始めた。大野さんは最初、2台の警察車両を通すための排除かと思ったが、「レーダーがきたぞ!」という声が後方から上がり、振り返ると2台の警察車両に続くかたちで、Xバンドレーダーを載せた巨大な輸送車両と、レーダーに付属する設備を載せた大型トラックが現れ、ゆっくりと敷地内に進入した。

「軍事占領がどのようにして起こるか」を現在進行形で感じた

 抗議の市民らは、「米軍はいらない!」「戦争反対!」「基地はいらない!」と大声を上げた。大野さんは次のように振り返る。

 「忘れられないのは、レーダーが基地内に入った後、米軍関係者らはバンザイして喜び、それを笑顔の防衛官僚らが取り囲み、運び込んだ作業員らは安堵の笑みを浮かべていたことです。フェンスのこちら側と向こう側では、ひどく対照的でした。観ていてもどかしかったです」

▲ 搬入されたXバンドレーダー(手前のトラック)と附属設備(奥のトラック)

 大野さんは、普段、大阪大学グローバルコラボレーションセンターで特任助教を務めており、歴史社会学、社会運動論に詳しい。『沖縄闘争の時代1960/70(人文院書)』という本も著しており、米軍基地問題にも深く精通している。

 そんな大野さんは、「まるで『軍事占領がどのようにして起こるか』ということを、現在進行形で見せられるような気持ちでした。歴史的文脈の違いはあれど、沖縄や岩国でも同じようなことが起きていて、その一端に触れるような気持ちにもなった」と語る。

 「のどかな集落に50人以上もの警察が配置され、非暴力で抗議している市民が排除されました。そして、これから設置されるXバンドレーダー。私はいくつもの『暴力』を感じました。京丹後市の宇川地区の歴史、宇川の人々への尊厳を大切にしようという気持ちのかけらも感じない。そんなことを、国を上げてやっている。米軍を多くの警察や機動隊が守る中で搬入は行われました。『バカにするな』という気持ちがなによりも湧き上がってきました」

 午後には、地元の住民で結成された「米軍基地建設を憂う宇川有志の会」が抗議行動を展開するなか、米軍人を乗せたバスが到着。着々と準備は整えられていった。

IWJの取材活動は、皆さまのご支援により直接支えられています。ぜひ会員にご登録ください。

新規会員登録 カンパでご支援

関連記事

「【IWJブログ】市民らを強制排除して強行配備された米軍「Xバンドレーダー」 現場の市民「『軍事占領がどのようにして起こるか』を、現在進行形で見せられた気持ちでした」」への1件のフィードバック

  1. たれりん より:

    >「軍事占領がどのようにして起こるか」を現在進行形で感じた

    確かに。まちがいなくこうやって市民を装った敵性国家の工作員による浸透と占領が起こっている状況がよく理解できる

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です