水島朝穂氏「21世紀型の脅威『テロ』に、集団的自衛権は無効」と指摘 ~安倍首相が安保法案の審議で「ISの脅威」に言及しない理由 2015.7.13

記事公開日:2015.8.7取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・富田)

 116時間におよんだ、衆議院での安全保障関連法案の審議。その大部分は、野党議員の質問への、安倍晋三首相の「はぐらかし」に費やされた。それでも首相は「審議は尽くされた」と胸を張り、国民に不人気なのを承知の上で、11本の法案からなるこの法案を衆議院で強行採決した。

 衆院平和安全法制特別委員会で強行採決された2日前の、2015年7月13日。東京都新宿区の大隈記念講堂で、早稲田大学の学生サークルが主催するシンポジウム「Who Are the Rulers?」が開かれた。登壇した早稲田大学法学学術院教授の水島朝穂氏は、安倍首相が法案成立を急ぐ理由に挙げる「安全保障環境の変化」について、現実的ではなく、大きく取り上げられるべきものが過少にしか触れられていないなどの瑕疵がある、と批判した。たとえば、前者は中東・ホルムズ海峡への機雷敷設、後者は「イスラム国(過激派組織 IS)」によるテロ行為である。

 冷戦期の1979年時点で、すでに、「これからは戦争ではなくテロの時代」と予見していたという水島氏は、「ISの脅威」は軍事力拡大で向き合える問題ではなく、集団的自衛権による自衛隊と米軍の一体化は、何ら効力を持たないと言い切った。

 水島氏は、「民主も維新も、政府・与党が言い立てる極めてナンセンスな『グレーゾーン事態』の議論に、つき合ってしまった」とも述べ、7月8日に民主党と維新の党が共同提出した「領域警備法案」は、屋上屋を架すようなもの、と切り捨てた。

記事目次

■ハイライト

  • 第1部 超人気教授 水島朝穂先生の白熱講義!
  • 第2部 戦争ジャーナリストと徴兵経験者によるトークショー
  • 日時 2015年7月13日(月)16:30~
  • 場所 早稲田大学大隈小講堂(東京都新宿区)
  • 主催 イベント企画サークルqoon (告知

アメリカの「対テロ戦争」は国際秩序を乱しただけ

 「18~19歳が投票できず、しかも、投票率が50%台と低い昨年(2014年)末の衆院選で選ばれた安倍首相が、『十分議論は尽くした』と表明し、安保法案を通そうとしていることを、みなさんはどう思うか」──。未成年の大学1年生も参加するこの集会で、水島氏はまず、客席に向かってこう語りかけた。

 そして、安倍政権が、安保法案の成立を急ぐ理由に挙げる「安全保障環境の変化」のひとつであるテロについて、「テロとの戦い」と称すれば、何でも正当化されてしまう風潮が(ことに米国には)あるとし、次のように強調した。

 「2001年の9.11同時多発テロで、貿易センタービルへの旅客機のアタックを受け、ブッシュ政権が攻撃したのはアフガニスタンだった。だが、ハイジャックされた4機の旅客機に乗っていた、合計19人のアルカイダ(過激派組織)メンバーの中には1人もアフガン人はおらず、アフガンへの攻撃はまったく説明がつかないものとなった。小泉純一郎首相は、9.11を受け、2001年10月に時限立法(テロ対策特措法)を作って、米軍の攻撃を後方支援した。2003年3月に始まったイラク戦争の時も、結局、大量破壊兵器は見つからなかったが、自衛隊は、やはり小泉政権下の時限立法(イラク特措法)で米軍の後方支援を行っている」

 「ISは、イラク戦争を仕掛けた米国への恨みから生まれたようなもの」と強調する水島氏は、米国はこれまで「これはテロとの戦いだから」と、もっともらしく繰り返してきたが、結果は、国際秩序を乱しただけだと喝破。新安保法制で日米同盟が強化された暁には、集団的自衛権によって自衛隊が、その「秩序乱し」に深く加担する恐れが出てくることを、言外に匂わせた。

中東演説「失敗」は安倍首相のトラウマ

 「安全保障環境の変化」では、中国の台頭を指摘する向きが多いが、もっとも相応しいのは「ISの脅威」だと訴える水島氏は、今後、ISとどう対峙していけばいいいかという課題には、「武力」はキーワードにならないと力を込めた。

 「各国の困窮者が格差社会に嫌気がさしてISに向かい、戦士になって、復讐するために自国に戻ってくる。すでに、世界各地で実例が起きている。新宿駅西口の地下が自爆でやられることも十分あり得るが、日本でそういうことが頻発するようになっても、憲法上、イスラム社会に渡った日本人の帰国を拒絶することは許されない」

 安保法制の審議で、安倍首相が「ISの脅威」に言及したがらないのは、「彼が、ISによる邦人人質事件で大失敗しているためだ」と水島氏は言い、2015年1月に、首相がイスラエルでISへの挑発とも受けとれる演説をし、ISの人質になっていたジャーナリストの後藤健二さんらを救えなかったことを指摘した。

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