「維新案」は合憲か違憲か——。紛糾する安保法制の対案として、維新の党が提出した対案をめぐり、今、専門家のあいだで評価が分かれている。
2015年7月9日15時、日本外国特派員協会で維新の党の松野頼久代表、小野次郎安全保障調査会長、憲法学者の小林節・慶應義塾大学名誉教授が会見を行い、あらためて政府案を「違憲」と批判した。
しかし、水島朝穂・早稲田大教授や青井未帆・学習院大学大学院教授など憲法学者からは、この「維新案」についても、安倍政権が2014年7月1日に閣議決定した「集団的自衛権の行使容認を認める政府の憲法解釈」をベースにしている以上、「違憲」であるとの指摘(※)があがっている。
(※)政府案が新たに盛り込んだ「存立危機事態」とは、自衛隊法76条の「出動要件」であり、自衛隊法88条の「武力行使が可能」とする文言はそのままに、昨年7月1日の閣議決定で「集団的自衛権も含まれる」と解釈を変更している。維新案は76条(出動要件)の「存立危機事態」を「武力攻撃危機事態」に変更しただけで、政府閣議決定を反映した88条は変更していない。つまり維新案では、「武力攻撃危機事態」により防衛出動した自衛隊は、(安倍政権によって解釈が変えられた)88条により結局、集団的自衛権を行使が可能になるという指摘。
- 出席 松野頼久議員(維新の党代表)、小野次郎議員(維新の党 安全保障調査会会長)、小林節氏(慶應義塾大学名誉教授)
小林節氏「維新の党が言ってきたことだけをまっすぐ見て評価すべき」
この指摘について、IWJの質問に応えた小林氏は、青井氏から直接メールのやり取りで「維新案は形を変えた集団的自衛権だ」「自民党の議論の土俵に乗ること事態がおかしい」と意見を受けたことを明かし、こう続けた。
「私はこれ(青井氏のメール)に対して、維新の案はあくまでも現代の科学技術の中で、日米安保条約で日本を守りに日本海に来ている米軍の艦船への攻撃は、それは当然在日米軍基地があるわけですから、日本に対する攻撃の着手と理解する。柿沢未途議員にも確認しましたけれども、これは明らかに個別的自衛権であると。
それから相手の土俵に乗る、という話はよく理解出来ないのだが、私は相手の土俵に乗って議論しあわなければ意味がないし、乗って負けない自信がある、という趣旨のコメントをしたら、それきり(青井氏は)沈黙しています」
また水島氏とも電話で話したことを明かしたうえで、「(水島氏は)昨年の7月1日の閣議決定をベースにしているからいけないという理由ですが、私は、維新の党が言ってきたことは、それだけをまっすぐ見て評価すべきだと思います」と語り、違憲にはあたらないという認識を示した。
維新・松野代表、昨年の政府閣議決定の論評避ける
IWJは松野代表に、昨年の閣議決定を「合憲」か「違憲」か、どう捉えているかを聞いた。
「閣議決定もいろんなところが入っているので、閣議決定が違憲か合憲かという論評をすることはありえないと思います。やはり一つ一つの行動だと思う。私は政府が行うと説明している『ホルムズ海峡での機雷掃海』はあくまでも今までの憲法解釈の中では海外での武力行使であり、憲法には抵触していると思っています」
安保法制を「違憲」と断じながらも、そのベースとなっている安倍政権の憲法解釈(閣議決定)については評価を避ける維新。同日14時に行った党の定例会見でも松野代表は、閣議決定による憲法解釈の変更は認めるのか、認めないのか、閣議決定を前提とし、集団的自衛権の行使を認めた上での法案なのかどうかというIWJの質問に対し、「認識の差はあると思っている」と述べるにとどめている。
青井氏は7月8日に岩上安身のインタビューに応え、この維新の態度に疑問を呈している。
「憲法解釈は内閣が行うものと勘違いされがちだが、国民の代表である国会にも、憲法解釈権がある。今、問われているのは国会の憲法解釈。しかし維新はその部分を曖昧にしている」
「合憲」か「違憲」かで分かれる維新案。IWJでは、7月12日11時に「違憲」派の水島朝穂氏に、7月16日15時に小林節氏に、岩上安身が緊急インタビューを行う。
一語訂正お願いします。小林教授発言
乗って負けない自身がある → 自信がある
ご指摘ありがとうございます。急ぎ、訂正致しました!
【速報】維新案も「違憲」との憲法学者の指摘に小林節氏「維新案をまっすぐ見て評価を」 昨年の政府閣議決定について維新・松野代表「違憲か合憲かの論評ありえない」 IWJの質問に http://iwj.co.jp/wj/open/archives/252193 … @iwakamiyasumi
そもそも維新案は必要なのか。
https://twitter.com/55kurosuke/status/619131253271298048