「米艦を守るための武器使用が可能に」安倍総理が国民にひた隠す「戦争リスク増大」を柳澤協二氏が指摘 〜国際地政学研究所ワークショップで専門家らが安保法制を徹底解剖! 2015.5.28

記事公開日:2015.6.2取材地: テキスト動画
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(佐々木隼也)

 「自衛隊が武力行使を目的として、湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことは、これからも決してない」──。2015年5月27日から始まった安保法制の国会審議で、安倍総理は繰り返し強調している。しかし一方で、安倍総理は「(湾岸戦争やイラク戦争のような戦争でも)『後方支援』はありうる」とする見解を示している。後方支援とはつまり「兵站」のことを指す。米海兵隊は「兵站」について「戦争の一機能であり、軍事攻撃の格好の目標である」としている。

 戦争の一翼を担う「兵站」を「後方支援」と言い替え、「戦争に参加しない」かのように国民に喧伝する、安倍総理の「ごまかし」である。

 元内閣官房副長官補の柳澤協二氏は5月28日、自身が理事長を務める国際地政学研究所のワークショップで講演し、「アフガン戦争や湾岸戦争、イラク戦争、またはISIL掃討で『後方支援』が可能になる。一言でいえば『多国籍軍支援』だ」と指摘した。

 また柳澤氏は、今回の安保法制によって自衛隊法95条が改正され、自身を守るために認めている武器使用の対象を米艦艇にも広げていることを問題視。「これは外から見たら戦闘行為だ」と強調した。

 自衛隊法95条は、平時において自衛隊の武器を防護するため、自衛隊員に武器の使用を認めている。つまり現行法では、自衛隊以外の武器防護はできない。しかし今回の法改正で、日本の防衛のための活動を行う外国軍隊にも適用される。これにより、自衛隊が現場の判断で、他国の軍隊を守るために武器を使うことが法的に可能となる。

■ハイライト

  • テーマ 安保法制・日米防衛協力新ガイドラインを解剖する
  • 登壇者 柳澤協二氏、佐藤丙午氏(拓殖大学海外事情研究所教授)

武器使用条件の緩和、拡大する業務…「リスクを語らない政府は衆愚政治だ」

 さらに柳澤氏によれば、自衛隊の武器使用の拡大は広範にわたる。今回の法改正では、自衛隊法84条に3項を新たに設け、「邦人の救出・護衛・妨害者排除」のための武器使用を認めている。また「外国軍隊と一緒に駐留している宿営地を合同で守るため」の武器使用も許される。

 これに加え、今回の安保法制におけるPKO法改正では、住民の保護(地域保安)や活動関係者の警護(いわゆる駆けつけ警護)、軍隊の再建(教育訓練等)など、「住民の保護を目的とする活動」ができるようになり、業務が大幅に拡大する。柳澤氏は「対ISIL有志連合も何らかの決議があれば可能になる。イラクにけるオランダ軍の役割を担えるようになる」と分析した。

 そして日本有事の際には、これまで外国領域における武力行使、いわゆる「海外出動」は「『必要最小限度』を超えるから違憲だ」とされていたものが、米艦防衛を認めてしまうと米艦の位置によって、「必要最小限度」の基準点が変わってしまうことを指摘した。

 こうした様々なリスクを列挙したうえで柳澤氏は、「政治家はリスクを語り、リスクの意義を語らなければならない。リスクを語らない政府は衆愚政治だ。国民に何を『理解』してほしいのかをしっかり語らなければならない」と語り、「リスクは増大しない」と答弁する安倍政権の姿勢を批判した。

米艦防護による「戦争リスク増大の論理」を無視する安倍政権

 そして講演の最後に柳澤氏は、米艦防護による抑止論に異議を唱えた。

 「安倍総理は、米艦を守る事は日米が強固であることを示すから抑止力が高まる、結果戦争のリスクが減る、という論理だ。しかし米艦を守ることで日本が敵対国になり、日本への攻撃を誘発し、戦争リスクが増えるという論理の方を無視している。前者の論理ばかりで、後者の論理が議論されない」

 4月28日に日米両政府のあいだで結ばれた、自衛隊と米軍の役割分担を定めた防衛協力の指針(ガイドライン)では、平時における米軍と自衛隊との共同パトロールを可能にする内容が記されている。これに沿うかたちで現在、米軍が自衛隊の活動に期待を寄せる南シナ海での哨戒活動について、防衛省が検討を始めている。

佐藤丙午氏「中国との安全保障ジレンマをどう埋めるか」

(…会員ページにつづく)

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「「米艦を守るための武器使用が可能に」安倍総理が国民にひた隠す「戦争リスク増大」を柳澤協二氏が指摘 〜国際地政学研究所ワークショップで専門家らが安保法制を徹底解剖!」への1件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    「米艦を守るための武器使用が可能に」安倍総理が国民にひた隠す「戦争リスク増大」を柳澤協二氏が指摘 〜国際地政学研究所ワークショップで専門家らが安保法制を解剖 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/247093 … @iwakamiyasumi
    リスクを語らない政府は衆愚政治だ。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/605839029049769984

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