※3月10日テキストを追加しました!
東日本大震災から4年が経つ。ヒューマンライツ・ナウ震災プロジェクトのメンバーは、東日本大震災の直後から被災地に入り、現地調査や弁護士による法律相談を継続的に行ってきた。この報告会では、宮古市、釜石市、大船渡市、陸前高田市で活動したゲストスピーカーたちが、被災地の現状と課題を語った。
2015年3月6日、東京都渋谷区の渋谷区勤労福祉会館にて、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ(Human Rights Now)主催による、「ヒューマンライツ・ナウ震災プロジェクト報告会:大震災から4年。私たちに何ができて何ができなかったか。そしていま、私たちにできることは。」が開催された。ゲストスピーカーとして、在間文康弁護士、夢ネット大船渡理事長の岩城恭治氏、瀧上明弁護士、小口幸人弁護士、報告者として吉田悌一郎弁護士が登壇した。
吉田氏は、ヒューマンライツ・ナウによる仮設住宅避難者へのアンケート調査で見えてきた現実を、次のように報告した。
「仮設住宅の避難者が最も悩んでいる事柄は、持ち家を失ったことによる住居の問題だ。仮設住宅も来年(2016年)で取り壊しが始まるが、新居に移ることができない被災者たちは、高齢者が多い。今まで、戸建て住宅に住んでいた人が、災害公営住宅という集合団地への移転を余儀なくされる。それによってもたらされる精神的苦痛、家賃の支払いへの不安などが、調査結果から明らかになった」
小口氏はそれを、「戸建て+年金=老後の生活」という方程式が、被災地では崩れてしまったのだ、と話す。自身も宮古市で被災した小口氏は、「希望は、若者や子どもたちの意識が変わる『震災バネ』が育まれること。地域活性化に成功した宮古市重茂のように、地域で協力して外からお金を呼び寄せるか、支出を減らして、うまく生活できるようにするかの二択ではないだろうか。それも、住民が自ら行動するしかない」と述べた。
在間氏は、被災ローン減免制度の審査の矛盾点を指摘した。相談件数が5497件もありながら、この制度を利用できたのは1366件。4人のうち3人が断られていたのが現状だという。
釜石市で働いた瀧上氏も、「住宅ローンは返済額を半減する代わりに、返済期間を伸ばす『リスケジュール』や、親子ローンの適用がとても多い」と明かし、住宅とお金、人口減少=産業の衰退と直面する被災地の問題は、「日本全国の過疎地域の構造的問題が集約されて、あぶり出されている。被災地では、それが急速に進んだのではないか」との見解を語った。
- ゲストスピーカー 在間文康氏(弁護士)/岩城恭治氏(夢ネット大船渡理事長)/瀧上明氏(弁護士)/小口幸人氏(弁護士)
- ヒューマンライツ・ナウ震災プロジェクト報告者 吉田悌一郎氏(弁護士)
- 日時 2015年3月6日(金)18:30~20:30
- 場所 渋谷区勤労福祉会館(東京都渋谷区)
- 主催 ヒューマンライツ・ナウ
持ち家が全壊──家賃支払いの不安が募る
はじめに吉田氏が、ヒューマンライツ・ナウ震災プロジェクトのアンケート調査の結果を報告した。
このアンケートは、2014年9月から11月に実施。57世帯で、生活状況、生活全般、住宅問題、高台移転について尋ね、生活の困窮、高齢者の健康不安、医療・介護へのサポート不足、仮設住宅の不自由さ、自宅再建の困難さなど、将来の生活への不安が浮き彫りになっている。
生活困窮世帯への支援、高齢者への補助支援、そして、一番切実だったのは住宅問題だ、と吉田氏は言う。
「(それまで持ち家で暮らしてきた人たちは)家賃が発生することへの抵抗感が、とても強かった。住居の長期無償提供を検討すべきではないだろうか。さらに私たちは、これによって浮き出てきた課題を、国、自治体へ訴えようと考えている」
新居を建てられる人、仮設に残る人──格差が生じる現実
次に、元市議会議員で、夢ネット大船渡理事長の岩城恭治氏が登壇した。大船渡市の犠牲者は419人で、震災から現在まで1992人の人口減少となった。被災状況は、69ヵ所に5196人が避難、建物全壊2787件、被災世帯約2500世帯(全世帯の17%)、被災事業所約1400ヵ所(全事業所の約54%)、応急仮設住宅37団地1801戸で、現在は1407戸に約3000人が住む、と現状を報告した。
続いて、行政の方針を説明し、「2016年9月までに小・中学校の校庭の仮設住宅を撤去、同年度末に5ヵ所に集約する。2017年は、361戸の入居者を想定している。課題は、新居を建てられる人と、仮設に残る人との格差が生じることだ」と述べた。
仮設住宅から退去できない理由は、家賃、保証人の有無、家財道具の購入への経済的な支障だと言う。それ以外にも、福祉や生活困窮者支援などの連携も考慮すべき、とした。
また、大船渡市の課題は、行政側が津波高さ2メートル以上のところは第1種区域に指定して、住居建設を禁止するのだが、土地の買い上げに際し、地権者探しなどの問題があることだ。
岩城氏は、「産業の振興と雇用では、大船渡市での事業の継続・再開は81%(陸前高田市55%、釜石市約70%)である。求人倍率は1.82倍だが、建設業中心で、長期雇用が望めず、求人者とのミスマッチな現状がある」と語った。
被災ローン減免審査は東京で実施――適用は4人に1人だけ
在間氏は、総被災戸数3368戸、1773名の死者が出ている今回の状況を、「12人に1人が亡くなった。いまだに50ヵ所の仮設住宅に、4100人が住む」と話し、被災ローン減免制度、災害公営住宅の問題、災害関連死について、無料相談で受けた事例を挙げて、それぞれ説明した。
被災ローン減免制度についての相談内容は、4家族で、家は全壊して流失、約2700万円ローンが残り、再建を希望するが二重ローンとなる。そのため、被災ローン減免制度に申請したが、運営委員会に却下されたというもの。却下理由は、共働きで、合計年収が710万円(額面)あったためだ。
「結局、家の再建をあきらめ、他市への移転しかない。ちなみに、相談件数5497件のうち、被災ローン減免制度が利用できたのは1366件。4人のうち3人が断られている」と在間氏は憤る。
在間氏は、「人間の復興への唯一の道は、個人として尊重されることだ」と力説する。「憲法13条に『すべての国民は、個人として尊重される』とある。被災地を見る時、これを常に心すべきだ。被災者という言葉から、ひとりひとりの顔が想像できるだろうか? 今日、被災者が直面している問題は、将来、東京大地震や南海大地震など、私たちが直面する問題でもある」と警鐘を鳴らした。
被災地の問題は、日本全国の過疎地域の構造的問題
釜石市で活動した瀧上氏は、「私は、弁護士過疎地に日弁連が出資した、釜石市のひまわり基金法律事務所に赴任した。3.11の2週間前に東京に戻っていたが、3月25日、内閣府の調査に同行し、被災地で起きている事態の重大さを知り、再び釜石市に戻った」と自己紹介をした。
瀧上氏は、「住宅ローンの問題では、返済目処がたたない人は、仮設住宅の居住者全体では7%だが、住宅ローンの返済額を半減する代わりに、返済期間を伸ばす『リスケジュール』や親子ローンの適用がとても多い」と明かす。
そして、住宅とお金、人口減少=産業の衰退、と直面する被災地の問題は、「日本全国の過疎地域の構造的問題が、あぶり出されている。被災地では、それが急速に進んだのではないか」とも指摘し、スピーカーは小口氏に変わった。
東京など遠方から人が来てくれることは、とても嬉しい
宮古市に赴任し、1年後に被災した小口氏は、震災直後の4月から避難所相談を開設したという。まず、被災地での弁護士活動について、「国には便利な制度がたくさんあるが、その情報を一般の人とつなげて、支援すること。かつ、被災地の悩みを国に訴える仕事でもある」と述べ、こう続けた。
「避難者は今でも23万人いる。自治体支援も疲弊した。大船渡市の震災前の市民の平均年収は188万円だったのが、震災後、224万円に上がってはいる。しかし、復興事業が終われば土建業も撤退し、経済的に衰退することは明らかだ」
「戸建て+年金=老後の生活」の方程式が崩れてしまった被災地の現実──慣れない生活での精神的苦痛、仮設住宅撤去で生じる移住先での家賃支払いの不安、あらゆる経済的な問題が明らかに http://iwj.co.jp/wj/open/archives/237347 … @iwakamiyasumi
震災当時ではない、現在の話だ
https://twitter.com/55kurosuke/status/575281087607271425