「悪しき先例となり、報道の自由が奪われることを危惧する…」パスポートを“奪われた”カメラマンが国を相手に提訴を宣言! 2015.2.12

記事公開日:2015.2.12取材地: テキスト動画
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(IWJ・原佑介)

 「私の事例が悪しき先例となり、報道の自由が奪われることを危惧している」

 「イスラム国」が一部を支配下におくシリアへの渡航を計画したことで、外務省からパスポートを強制的に返納させられた新潟在住のフリーカメラマン・杉本祐一氏。2月12日、外国特派員協会で記者会見を開き、パスポートを失うとともにフリーカメラマンという仕事も失い、「人生そのものが否定された」と主張。今後の日本の報道の自由への懸念も示した。

▲岸田外相の名前で発行された一般旅券返納命令書を見せる杉本祐一氏

※個人情報に当たる旅券番号は伏せております。

■ハイライト

発端は新潟日報の記事

 杉本氏は約20年間にわたって、イラクやアフガニスタン、パレスチナなどの紛争地帯や、北朝鮮、イランなど、日本に情報が入ってきにくい国に赴き、取材を重ねてきたベテランのカメラマンだ。

 「今回、パスポートの強制返納という事態に直面し、大変驚き、ショックを受けています。パスポートを失うということは、フリーカメラマンという仕事を失うことであり、私の人生そのものが否定されることだからです」

 パスポート強制返納の発端は、2月はじめに新潟日報の取材を受けたことにある。杉本氏がシリアで取材を検討していることは、朝日新聞の地方版に載った。それを知った新潟日報が改めて杉本氏に電話取材をし、杉本氏は仕事上の付き合いもあるため、電話取材に応じた。

 すると、新潟日報の紙面には、杉本氏が2月末にシリアへ取材に行くことだけでなく、詳細な取材日程までが書かれてしまったのだという。

 「本当に驚きました。静かにシリアに行き、静かに帰国することを望んでいたので、まったく不本意なことでした」

 イスラム国が撤退したシリア北部・コバニで、クルド人部隊が海外プレスを案内してまわるツアーを行っているため、杉本氏はそれに参加する予定だった。もともと「イスラム国」の支配地域に行く予定はなく、そもそも、シリアに入国するかどうかも、現地の信頼できる知人らと相談し、慎重に判断する予定だったのだという。

外務省「返納しない場合は逮捕する」

 新潟日報に掲載された直後の2月初旬、杉本氏のもとに外務省から「シリア取材はやめてほしい」との電話があった。しかし、チケットも手配していた杉本氏は当然、「行く」と譲らない。翌日、新潟県警からも接触があり、やはりシリアへの渡航を断念するよう要請があったが、杉本氏はここでも「行きます」と考えを変えなかった。

 そして2月7日夜、杉本氏が外出先から帰宅すると、家の近くの駐車場で外務省の職員が杉本氏を待ちかまえていた。

 杉本氏は2名の外務省職員と、同行した複数人の警官を招き入れた。外務省の職員は、外務省領事局旅券課の外務事務官の吉留修(よしとめ・おさむ)氏と、課長補佐・山澤義周(やまざわ・よしちか)氏。吉留氏は、渡航を自粛するよう改めて訴えたが杉本氏が応じないため、「パスポートを返納しろ」と迫り、岸田文雄外務大臣の名前入りの「パスポート返納命令書」を読み上げた。

 「『返納しない場合は逮捕する』と2、3回言われ、どうしようか悩みましたが、どちらにしても逮捕されればパスポートは没収され、狭い部屋で事情聴取を受け、起訴され、裁判費用もかかる。こうしたリスクを考え、パスポートの返納に応じざるを得ませんでした」

「悪しき先例」となることを危惧

 報道関係者が外務省にパスポートを強制返納させられたのは、戦後、初のケースだという。

 杉本氏は、「パスポートを取り戻したいのはもちろん、今回のことが悪しき先例になり、他の報道関係者まで強制返納を命じられ、報道の自由、取材の自由を奪われることを危惧しています」と話し、パスポート返納の取り消しを求め、国を提訴すると断言した。

 杉本氏は「外国ではこのようなことがあるのか、逆に皆さんに質問したい」と、外国特派員協会に集まった記者らに質問した。

(…会員ページにつづく)

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「「悪しき先例となり、報道の自由が奪われることを危惧する…」パスポートを“奪われた”カメラマンが国を相手に提訴を宣言!」への1件のフィードバック

  1. あのねあのね より:

     先ず、杉本さんを逮捕してゆるされる理由はどこにも無い。理由が無いのに行動の自由を奪う「逮捕をする」という違法行為宣言を何回も通告するのは刑法犯の脅迫である。

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