「日本の国民よ。日本政府はイスラム国に対する戦いに2億ドルを払うという愚かな選択をした。お前たちは人質の命を救うために、2億ドルを支払う賢い決断をするよう、政府に迫る時間が72時間ある。さもなければ、このナイフがお前たちの悪夢となるだろう」――。
イスラム組織「イスラム国」が、1月20日午後、72時間以内に身代金2億ドル(約236億円)を支払わなければ、拘束している日本人2人を殺害するという犯行予告映像を公開した。
映像では、黒い覆面姿の男性が、オレンジ色のジャンプスーツを着た日本人男性2人をひざまずかせ、ナイフをちらつかせながら、2人の命と引き換えに、72時間以内に2億ドルを支払うよう、日本政府に要求した。
音信不通で行方不明となっていた2人の日本人
▲左・後藤健二氏 右・湯川遥菜氏
映像内の2人の日本人男性は、2014年8月にシリアでイスラム国に拘束された湯川遥菜氏と、フリージャーナリストの後藤健二氏だとみられる。
湯川氏は自称・民間軍事会社のCEOで、昨年8月16日、内線下のシリア、なかでもとりわけ激しい戦闘が続く北部のアレッポでイスラム国に拘束されていた。IWJは当時、湯川氏拘束の状況を専門家の意見を取材しながら、リアルタイムで報じ続けた。
ジャーナリストの後藤氏は、1967年生まれ、宮城県仙台市出身。番組制作会社を経て、1996年に映像通信会社「インデペンデント・プレス」を設立し、世界の紛争地などで取材を重ねていた。
家族に対して「イスラム国に拘束された湯川さんを救出に行く。ただ、危険だからシリアには入国しない」と話していたが、ツイッターで去年10月2日に「シリアに取材に入ります」とツイート。翌日の3日には「只今シリアで取材中です」と書き込んでいたが、10月23日を最後に、ツイッターは更新されなくなっていた。
「イスラム国」はこれまでに、身代金などの目的で、ジャーナリストや援助関係者など少なくともアメリカ人3人、イギリス人2人、フランス人1人を人質に取り、殺害している。
「日本政府はイスラム国への戦いに2億ドルを払うという愚かな選択をした」
今回、イスラム国メンバーがビデオで語った犯行予告全文は、次の通り。安倍総理へ向けた、「日本の首相よ」という言葉から始まる。
(字幕で)「日本の政府と国民へのメッセージ」
(映像で)「日本の首相よ。お前は『イスラム国』から8500キロ以上も離れているのに、自ら進んでイスラム国に対するこの十字軍に参加した。私たちの女性や子どもを殺し、イスラム教徒の家を破壊するために、誇らしげに1億ドルを供与した。
よって人質の命は1億ドルだ。さらにイスラム国の拡大を防ぐ目的でムジャーヒディーン(イスラム戦士)に対抗する背教者の訓練に1億ドルを供与した。よってこの日本人の命にはさらに1億ドルかかる。
日本の国民よ。日本政府はイスラム国に対する戦いに2億ドルを払うという愚かな選択をした。お前たちは人質の命を救うために、2億ドルを支払う賢い決断をするよう、政府に迫る時間が72時間ある。さもなければ、このナイフがお前たちの悪夢となるだろう」
安倍政権が支援を約束した対イスラム国用の「2億ドル」
イスラム国のいう「2億ドル」とは何か。