【大義なき解散総選挙22】「いずれまた、政権交代の機運が高まる時が来る」 反自民の受け皿をいかにして作るか、生活の党・小沢一郎代表に岩上安身が聞く ~ 岩上安身によるインタビュー 第491回 ゲスト 生活の党・小沢一郎代表 2014.12.9

記事公開日:2014.12.10取材地: テキスト動画独自
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(IWJ・平山茂樹)

 「自民党が300議席を超えようが、怖くない」――。

 安倍総理の判断により、急転直下のスケジュールで始まった、今回の衆議院選挙。野党による受け皿作りの体制が整わないうちの解散だったためか、自民党が単独で300議席を獲得して圧勝するのではとの観測が出ている。

 自民圧勝のムードが漂っているが、水面下では、野党連携の動きも消えていない。民主党と維新の党は候補者の調整を行うなど選挙協力で合意し、小沢一郎氏が代表を務める生活の党からは、鈴木克昌幹事長と小宮山泰子国対委員長が民主党に復党した。

 「自民ひとり勝ち」と言われるなか、かつて政権交代の実現を目指して自民党を離党し、2009年にそれを実現させた小沢一郎氏は、今後の野党連携についてどう考えているのか。小沢氏は、「自民党が300議席を超えようが怖くない。野党がしっかりとした受け皿を作ることが大切だ」と語る。

 今回の選挙戦で生活の党が掲げる公約の他、アベノミクスに対する評価、原発の再稼働、解釈改憲による集団的自衛権行使容認、特定秘密保護法、辺野古新基地建設などについて、岩上安身が話を聞いた。

■ハイライト

  • 日時 2014年12月9日(火) 17:00~

消費税増税延期なら、会期中に修正法案を出すのが筋

岩上安身(以下、岩上)「本日は、生活の党代表の小沢一郎さんにお話をうかがいます。今回の解散、不意打ちのように思えますが、これを予測することはできなかったのでしょうか。7月のロイターのインタビューでは、『年内の解散はない』とご発言されていましたが」

小沢一郎氏(以下、小沢・敬称略)「今回の解散は、大方の人は予想をしていなかったと思います。先日の政府の発表にあったとおり、景気が下振れしてきており、アベノミクスに実態がないということが、国民に分かってきたのでは。それで、野党が結集しないうちに、やってしまおう、と」

岩上「今回の解散では、野党が内閣不信任案を出していません。その意味で、大義なき解散ということが言えると思います」

小沢「安倍さんは、消費税増税延期ということも言っています。それなら、増税延期のための修正法案を提出することが先決ではないでしょうか」

岩上「本気で増税の延期をやる気であれば、解散前に法案を通していただろう、と。そうなると、多数の議席を占めた後、延期しないということもあり得るのでしょうか」

小沢「修正しないと、そのままになってしまうわけですからね」

共産党との連携可能性~沖縄の「保革共闘」をモデルにできないか

岩上「小沢さんはこの間、民主党の幹部と会ったり、エールを送ったりということがありました。野党は、大同団結ができるような動きを模索していたのでしょうか」

小沢「なんとかして、自民党に対する受け皿を作ろうという動きは強まっていました。しかし、民主党が、『民主党のもとに一つになるのなら』という話でした。それが、今回、受け皿ができなかった大きな理由の一つだろうと思います。もう一つが、今回の解散に不意をつかれた、ということがあげられます。

 民主党が主導してもいいんですけど、民主党の中に入る、というのは難しいという人がたくさんいます。政権の交代がない選挙というのは、国民の関心を呼びにくいと思います。やはり、選挙というのは、政権の交代がないと」

岩上「受け皿を作るという時に、共産党のことはどう考えていらっしゃるのでしょうか」

小沢「共産党が政権の枠組みに入るためには、基本的な理念、政策において、共産党が変わらなければいけないですよね。憲法を不磨の大典にするのではなく、もう少し柔軟にならなければ。

 共産党は、候補者を全選挙区に立ててしまっています。これでは、野党の足を引っ張っているので、自民党の補完勢力になってしまっています。しかし、柔軟な姿勢に転じれば、共産党を仲間に入れてもいい、ということにはなるかと思います」

岩上「沖縄では、元自民党の人たちも参加し、保革共闘が実現して、『オール沖縄』が成立しました。そこには、共産、社民、生活、そして元自民党の仲里さんが入っています。これは、野党連携の、ひとつのモデルを示したのではないでしょうか」

小沢「野党の統一体を作ろうと言う時、最初から共産党を含めるという姿勢では、うまくいかないと思います。まずは、共産党以外の政治家で統一体を作って、そこに共産党に入ってもらう。そういうかたちでなら、可能だと思います」

岩上「原発、消費税増税、集団的自衛権、TPP、これらだけでは、沖縄の基地問題と同様に、各党が連携するためのテーマにはならないということでしょうか」

小沢「いや、そういうことでもないと思います。例えば、維新は、だいぶ柔軟になっていると感じています」

安倍氏が一年半後に総理をやっているかは分からない

岩上「安倍総理は、消費税増税に関して、景気弾力条項を削除すると言っています」

小沢「まあ、一年半後に、安倍さんが総理をやっているかどうか、分からないですからね。国の内外の情勢が、非常に厳しい。中国の景気が腰折れしたら、全世界への影響が大変なことになります」

 習近平国家主席になり、自由主義的な動きを、非常に強く押さえています。中国が落ち込むと、すぐに世界に波及します。そうなると、安倍さんは安泰というわけにはいかなくなるでしょう。

 憲法改正ということが言われていますが、私は、そこまで自民党の腹は固まっていないと思います。そうなると、さすがに国民も黙っていないでしょう。だから、安倍さんは、自分の地位を危うくしてまで、そうしたことはやらないでしょう」

アベノミクスは一部のパワーエリートのための政策

岩上「自民党が勝利すると、アベノミクスが継続されることになると思いますが、その結果はどうなるとお考えですか」

小沢「ごく一部のパワーエリートだけを正規社員にして、大多数を非正規にしようという答申が出ています。しかし、これは社会不安につながりますね。

 円安で物価がどんどん上がるので、消費者は財布のヒモを締めるしかない。非正規は簡単にクビを切られ、悪循環に陥っていきます。それから安倍さんは、農業にまったく関心がありませんね。欧米は、農業に補助金を出し、自給率を維持しています。これを見習うべきです」

岩上「安倍総理は、前回の衆参の選挙で、TPPはやらないと言っていました。自民党の大西英男議員にインタビューした際、関税は段階的に撤廃すると自民党の議員はみな考えている、と言いました。自民党は、JAの解体まで唱え始めています」

小沢「私は、規制改革に関しては賛成なんです。農協の中央組織は巨大化し過ぎて官僚化しているので、ある程度改革をすることは必要だと思います。しかし、農協をやっつけるのと、農家をやっつけるのとは違います。農協は、もっと農家と密着した組織にならないといけない」

岩上「小沢さんはもともと、民主党の中枢にいらっしゃいました。それでも、政策論議を戦わせる中で、民主党を割って出ました」

小沢「一番の理由は、やはり消費税です。国民にウソをついてはいけません。これでは、自民党と同じ。だから、選挙で負けてしまったんです」

岩上「強い思いで党を割ったにも関わらず、民主党と合流するのは難しいとも思います。公約をよく見ると、生活の党の公約は、社民党や共産党と近いように見えます」

小沢「共産党は、物事をスパスパっと結論を出しているから、分かりやすいのでしょう。選挙の戦術的な点では、共産党と話しあう余地はあると思います。候補者擁立という点で、ひとつの受け皿ができれば、候補者は出てくると思います。

 共産党との問題は、安全保障と日米関係。国民を守るための、一定の武装組織は必要だし、政治的、経済的に日米関係は非常に大事ですから、その点で共通の認識を持つ必要があります」

新自由主義は、民主主義の否定につながる

岩上「小沢さんの演説を聞いていますと、『かつての自民党は』という言い方をされます。それは、いつの自民党のことなのでしょうか。実は、中選挙区制の時の自民党のことではないのでしょうか。自らが壊した自民党を、自らで懐かしんでいるのでは」

小沢「そうではなく、政治思想、政治哲学の問題です。自民党が、新自由主義的な政党になるなら、それはかつての自民党ではない、ということです。私は、日本の伝統に立脚した自民党と、より開放的なもうひとつの政党による、二大政党制を目指しました。

 新自由主義というのは、当面の大企業の利害と一致するだけのものです。目先の利益ばかり。国民全体に、一定量を分配し、セーフティネットを整備しなければなりません。新自由主義は、反民主主義の考え方だと思います」

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  1. 清水 博 より:

    http://www.selfdecl.jp/massege/taiou.html「社会を公平にする消費税の正しい価格表示」という考え方があります。

    電気料金、燃料費、公共料金、広告宣伝費をはじめその考え方と異なる消費税の価格表示が日常生活や生産・流通・営業などのあらゆる側面で消費者の負担を重くしています。

    そこで、現行外税税率8%のうち消費者負担を3%分減じ、5%分を地方で自由に使えるようにする枠組み作りについて各界に情報提供し始めたところです。

    消費税法第63条にある「課税資産又は役務に係る消費税」について、また、二重課税になっている外税消費税分を地方で思い通いどおりにできるかについて、考えをおもちの方を求めています。

  2. 高瀬 博文 より:

    やっぱり 日本人は浪花節と信念でがんばってほしい!!!

  3. 今関二郎 より:

    インタビューを見て小選挙区制度が国民にとってのセフティーネットになっている
    そう思いました。

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