基準値を超えた2013年産の米「がれき撤去作業が原因ではない」 ~2014年度 第41回原子力規制委員会 2014.11.26

記事公開日:2014.11.26取材地: テキスト動画
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 2014年11月26日(水)10時30分から、2014年度第41回原子力規制委員会が開催された。福島第一原発3号機がれき撤去時における放射性物質の放出量、降下量の評価結果から、セシウムが基準値を超えていることが見つかった南相馬市の2013年産米は、3号機がれき撤去が原因ではないと結論づけた。

■全編動画

  • 日時 2014年11月26日(水)10:30~
  • 場所 原子力規制庁(東京都港区)

議題 1 特定原子力施設(福島第一原子力発電所)の施設定期検査の実施状況について

 東京電力福島第一原子力発電所が特定原子力施設となってから、初めての施設定期検査が行われた。施設定期検査は、認可された実施計画が、計画通りに実施されているかを確認する。検査は2014年6月24日から11月7日に行なわれた。原子力規制庁は、その結果概要を原子力規制委員会に報告した。

 田中知委員は、中長期的なことを扱う特定原子力施設監視・評価検討会との関係にも注意して、効果的な検査を続けるようにとコメント。

 更田豊志委員は、特定原子力施設、つまり福島第一原子力発電所は、他の通常の発電所と著しく異なり、状況が変化する。それに応じて検査も変化していく。そこで、実際の検査者と、東電の状況についてよく議論して柔軟に対応してほしいとコメント。まず検査を一回、二回と経験して、具体的な対応を考えるのも方法だとした。

 田中俊一委員長は、検査実施内容一覧表を見て、なるほどと言えない違和感があるとコメント。検査を行うのは法的には大事だが、現場保安官の日々の検査も大事であるとし、よく相談し、工夫してほしいとコメントした。

議題 2 3号機ガレキ撤去作業(平成25年8月)に伴う放射性物質の敷地外への降下量について

 福島第一原子力発電所3号機で2013年8月に行ったがれき撤去が、南相馬市で見つかった2013年産米の汚染原因とは考えられず、事故によって飛散した放射性物質が移行したのだろうと評価した。

 南相馬市の2013年産玄米から基準値(セシウム100Bq/kg)を超える値が検出され、2013年8月の福島第一原子力発電所3号機のがれき撤去作業時のダスト飛散が原因ではないかと疑われていた。規制委員会は特定原子力施設監視・評価検討会にて、ダストの飛散量を推定算出している。

 今回、被災者支援チームからの要請により、3号機からの飛散による、福島第一発電所敷地外でのセシウム降下量を検討、その結果を委員会に報告した。

 降下量の実測値では、2013年8月に顕著な上昇があったのは5地点中、1地点のみだった。規制庁の検討結果では、3号機から飛散したセシウムの降下量は、実測値の0.4%~16%だった。

 田中委員は、降下量の測定方法について、どこから来た何を測っているのかの詳細を明確にしてほしいとコメント。

 中村佳代子委員は、何か事態が起きてからデータを出すのではなく、平時のデータも公表できることが大事。今頃昨年8月のデータが出てきても遅いと意見。さらに、今回の測定方法は簡易的なものであるため、グラフにピークが見えるのも測定のばらつきかもしれないとコメント。データが独り歩きしないよう、表示方法を検討するよう意見した。

 更田委員も、実測値が降下量を正しく表しているのかと疑問を投げかけ、測定機を設置した場所の周囲の状況に大きく影響されると指摘した。また、事務方の報告から、基準値超えの玄米は、がれき撤去の影響ではなく、事故時に放出されたものが移行してきたためかと、規制庁に確認し、規制庁も同意見だと回答した。

 田中委員長は、二か所で玄米が基準値超えをしたのは、この結果から、がれき撤去が原因ではないことが明らかになったと意見。

 しかし、福島にはまだ広範囲に汚染があり、これからも同様に基準値超え(の作物)がでてくる可能性がある。原因をはっきりさせる取組みは今後も続け、対策をきちんとやるようコメントした。その上で、誤った原因を押し付け、「後は知りません」というのは住民にも大迷惑だとし、「我々が出した結果をきちっと関係各省は受け止めるのだ」という意見を述べた。

 池田克彦長官は、この結果を被災者支援チームに正式な回答として渡すと提案、特に異議はなく了承された。

田中委員長、福島第一について、INES、マイルストーンの検討を提案、指示

 二つの議題の終了後、時間があるからと、田中委員長から福島第一原子力発電所に関する提案が二つ出された。

 一つは、INES(国際原子力事象評価尺度)をどう扱うかということ。INESレベル7の事故の後に発生しているトラブルをどうするか。もう一つは、40年におよぶ長期の取組みが必要な廃止措置について、マイルストーンをもう少し細かく設定すること。安全上の観点からも、これが周辺住民へのメッセージでもあると提案した。

 更田委員は、INESは通常の発電所を念頭にしている。事故後の福島第一原発にあてはめるのは無理があるとし、検討の余地があると発言。INESを福島第一原発で起こっていることにあてはめるのは誤解を招くため、時間をかけて検討したいとコメントした。

 また、マイルストーンについては、リスクの観点から整理し、何が進行してどういう段階にあるのかを発信するのが重要であるとし、危険を正しく心配するためにも重要だと意見した。

 田中委員も、廃止措置中の福島第一原発で起こったことをINESで評価するのは難しいとし、INESは一つのコミュニケーション方法として、どう使えるか考えることだとコメントした。

 池田長官は、まずINESについて整理して資料を用意し、マイルストーンについては更田委員と相談して決めていくと返答。

 福島第一原子力発電所の事故収束に対する、規制委員会の関わり方について、新たな方針が決まった。

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