中国との関係で日本がとるべき姿勢とは――元中国大使・丹羽宇一郎氏が講演「日中関係と日本の将来」 2014.11.23

記事公開日:2014.12.15取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・花山)

※12月15日テキストを追加しました!

 「日米関係がしっかりしていれば、日中関係もうまくいく。日中関係がしっかりしていれば、日韓の関係もうまくいくだろう」──。関係諸国との外交について、丹羽宇一郎氏はこう分析する。

 元中国大使の丹羽宇一郎氏が2014年11月23日、愛媛県松山市にあるコムズ(松山市男女共同参画推進センター)で「日中関係と日本の将来」と題して講演を行った。

 元伊藤忠商事の社長として、3年で同社の業績を黒字回復させた実績を持つ丹羽氏は、豊富な中国人脈を持つ財界人として、2010年から2012年まで、民間人初の中国大使を務めている。

 これからの中国の体制に関して、丹羽氏は「14億という人口をどのように支えていくかは未知数。世界史で初めての実験となる」と述べ、中国の先行きに関心を寄せるとともに、日本の将来に関して、「今は世界中ががっちりと腕を組んでいる時代。難しいことだが、世界のあらゆる国と仲良くしなければならない」と述べた。

■全編動画

1分〜 宮崎氏あいさつ/6分〜 児島氏/13分〜 村上氏/21分〜 林氏/30分〜 丹羽氏講演/1時間37分〜 質疑応答
  • 主催あいさつ 宮崎満氏(愛媛県日中友好協会会長、松山大学名誉教授・元学長)
  • 地元から 児島好宏氏(三浦工業取締役)/村上要氏(愛媛県議会議員、日中友好促進愛媛県議連副会長)/林全南氏(愛媛県華僑華人連合会会長)
  • 講演 丹羽宇一郎氏(元駐中国大使、早稲田大学特命教授)
  • 質疑応答

世界史上、類を見ない統治体制に突入する中国

 中国共産党が選挙もなしに長く政権を維持してきた理由について、丹羽氏は自身の40年にわたる中国要人たちとの交流から、「彼らは(第2次世界大戦で)日本との戦いに勝ったこと、経済政策による急激な経済成長を要因に挙げている」と話す。

 しかし、中国の今後について、丹羽氏は「日本軍に勝ったというだけで、中国国民を引っ張っていくのはもう難しい。経済成長がずっとこの勢いでいくのも難しい。14億の民をどう統治して、14億の民の経済をどう運用するのか、世界の歴史上初めての実験となる。これがうまくいくかどうか、誰もわからない」との見解を示した。

 その上で、「中国共産党の統治体制をどうするのか、正解はない。ベターなチョイスは何か、である」と指摘。その理由について、「社会科学は演繹法であり、定義や原則に基づくものではない。つまり、社会科学はいつでもベターなチョイスである。良いか悪いかは、時代背景、経済状況、国民の意思で選択される」と述べた。

 さらに丹羽氏は、「人間は、体験に基づくもの、人からの伝聞など、『限定された知識や能力』しか持っていない。その人間が、その知識で『中国はおかしい、アメリカはおかしい』と言う。しかし、自分の知識知能の範囲を超えられない。これが人間の限界である」と、モンテーニュの思想を例に挙げて説いた。

 「中国の統治の問題にせよ、あるいは、中国人が日本人をどう見るか、日本人が中国人をどう見るかということも、極めて偏見に富んでいる可能性がある。これを踏まえた上で、外交を展開することである」と指摘した。

日中関係の根本は日米関係、日米がうまくいかないと日中も不調に

 日中関係の根本について、丹羽氏は、「基本的に、日中関係は日米関係にあり、日韓関係は日中関係にあると考えている。つまり、日米関係がしっかりしていれば、日中関係もうまくいく。日中関係がしっかりしていれば、日韓の関係もうまくいくだろう。もし、日米関係がしっかりしていれば、習近平国家主席は日本に対して失礼な対応はとらないだろう」と述べた。

 11月の北京APECにおける、日中首脳会談での習近平主席の冷淡な態度の原点は、歴史認識問題も含めて、本当に日米関係がきちんとしているのかの現れだ、と指摘する丹羽氏。

 「戦後を指導してきたアメリカの歴史認識に対して、安倍総理は修正の動きをとっている。A級戦犯、極東軍事裁判、アジア侵略。『そのまま受け入れるわけにはいかない』というニュアンスが伝わっている。それが日本の右傾化として、世界的な認識につながる。これに対してオバマ大統領は『失望した』と言っている。なぜ失望したのか。日本の戦後体制を作ったアメリカに挨拶もなく、安倍総理が靖国神社を参拝するからでしょう」と断じた。

 昭和天皇は1975年までに靖国神社を7回参拝しているが、A級戦犯合祀以降は1度も行っていない。現在の天皇は1回も行ってない。丹羽氏は、「そういうことを、歴史の重みとして考える必要がある」と言う。

靖国参拝は「アメリカへの挑戦」と見なされる

 さらに、「戦後、アメリカによる新体制作りを受け入れることによって、初めてアメリカは日本に名誉の回復と独立を認めた。『これを反故にするのか』という声が、アメリカの一部から出てきている。これに日本は答えなければならない。そうしないと、日米関係がしっかりしない。日本は現代史の総括、反省ができていない。そういう中で、『アメリカへの挑戦としての歴史認識修正なのか』と受け取られているのだ」と説明した。

 丹羽氏は、靖国参拝が国際問題になるのは、45ヵ国の連合軍と条約にサインをしたからだと言う。「敗戦とは、そういうもの。『俺の国の問題だ』では済まない。サンフランシスコ平和条約があるのだから、靖国には参拝しないこと。(戦没者の慰霊なら)千鳥ヶ淵戦没者墓苑がある。あくまでも、A級戦犯のことを根底に考える必要があるのだ」。

 そして、「歴史認識問題において、45ヵ国連合軍との条約をなしにしろ、とは言えない。これゆえに、日中関係の真髄はオバマ大統領と安倍総理のコミュニケーションなのである。グローバリゼーションの時代で、1国対1国の時代ではない」と主張した。

選挙に行かないことは、民主主義体制の放棄である

 丹羽氏は、今回の突然の解散総選挙について、わかりにくい選挙だと指摘し、「安倍さんが『この2年間、うまくいかなかった。日本の政治に重大な影響をおよぼすことなので、解散して国民の信を問いたい』と言うならわかるが、実際には『2年間、一生懸命やった。でも、うまくいってない』と言うだけ。『だから、こうしたいんだ』がないんですね」と話す。

 また、安倍政権への野党の対案も明確ではない状況で、選挙をすることにも懸念を示し、「最近、京都大学や早稲田大学の学生たちと選挙について話した。『どうせ、やったって何も変わらない。自民党が勝つだろう』と思って、選挙に行かない人が多いのではないか」と述べ、このように続けた。

 「しかし、その考えは間違っている。選挙に行かないことは民主主義体制を放棄すること。選挙の重みを自覚すべきだ」

世界のあらゆる国と仲良くしなければ生きていけない

(…会員ページにつづく)

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