「山、谷、川、の多い四国の地形は、米軍の飛行訓練に最適なのだ」 〜沖縄・岩国・愛媛の連帯で『オスプレイNO!』 講師 本田博利氏 2013.11.30

記事公開日:2013.11.30取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・花山/奥松)

 「悪いが、愛媛は『のんき』である。米軍機が岩国に集中すれば、訓練空域は四国にも及ぶ。沖縄では、オスプレイが市街地上空などを飛ぶルール違反が2ヵ月で318回。情報ネットワークを作り、住民が連帯していくべきだ」──。

 2013年11月30日、愛媛県松山市の男女共同参画推進センター・コムズにて、本田博利氏(元愛媛大学教授)を講師に招いた、講演会「沖縄・岩国・愛媛の連帯で『オスプレイNO!』」が行われた。本田氏は、岩国が本土での米軍基地の受け皿になりつつある現状に危機感を表した。

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  • 内容 主催あいさつ/メッセージ紹介
  • 講演 本田博利氏(元愛媛大学法文学部教授)

岩国は東洋最大の130機の飛行機が常駐する基地に

 本田博利氏は、現在、自分が居住している広島県廿日市市も、「米軍機による騒音がひどくなった」と話を始め、「理由は、岩国基地に新しい滑走路ができたことによる。これは、岩国市街地の騒音軽減、墜落回避が目的にしたもので、基地の沖側を埋め立てて滑走路を作った。しかし、米軍再編が浮上し、厚木から艦載機が来ることになった。今、岩国に常駐する飛行機は60機、さらに、艦載機、輸送機、オスプレイが来ることで、3年先には現在の倍になり、東洋最大の嘉手納基地を超える130機の飛行機が常駐する基地となる」と述べた。

 続いて、基地の機能強化について、「新滑走路と左右の誘導路、旧滑走路を合わせて4本の滑走路を持ち、管制塔、格納庫、駐機場もできた。すべて新品である。基地の面積は従来の1.4倍となり、横田基地を抜いて日本一の大きさとなっている。埋め立ての工事に2500億円を使い、駐機場や給油施設など新施設に1500億円。米軍住宅は1戸あたり1億円。合計で4900億円になり、これは国民1人当たり4000円になる。膨大なお金が岩国に集中豪雨のように使われた」と、アメリカに守ってもらうために税金が投入されている現実を示した。

 こうした背景について、本田氏は「日本は軍事大国で、軍事費はアメリカ、中国、ロシアに次いで世界の4番目である。だから、役人は、沖縄の米軍基地の予算が使われないときには、岩国にたくさんの予算をつけて軍事費を使うわけである。それはすべて、思いやり予算である。岩国には4900億円使ったので、今度は沖縄にお金をかけると思う。日本政府は、いつも同じことを考えている」と批判した。

米軍から見たメリットが豊富な岩国

 本田氏は、米軍から見た岩国基地のメリットを、「滑走路、岸壁など、新しい施設があり、愛宕山に米軍住宅もできた。そして、有事の時に、佐世保基地を母港とする空母がヘリコプターを迎えに行く必要がない。普天間では、佐世保から迎えに行く必要があった。したがって、佐世保と岩国が近いことは、海兵隊にとって大きなメリットである」と述べ、岩国がすべての基地の受け皿になる可能性を指摘した。

 また、飛行訓練に関して、「沖縄の山が非常になだらかで、地形的にできなかった訓練が、中国・四国・九州を中心に行える。険しい山を使った低空飛行訓練である。四国は、山、谷、川、変電所やダムなど、目印になる標的が多くある」と訓練に適した地形が近くにあることを挙げた。

 訓練空域に関する問題として、「基地があればいい、というのではなく、訓練空域をどこに置くかが、艦載機移駐の非常に大きな問題になる。訓練空域を広げなければ、60機増える艦載機の訓練に支障が出る。訓練範囲が日本海と四国沖に広がる可能性がある。また、今は硫黄島で離発着訓練をしているが、これを西日本のどこかにということで、岩国に来る可能性がある」と述べ、中四国地方の負担増を懸念した。

オスプレイは安全性を犠牲にした輸送機

 オスプレイに関して、「開発段階で30人が亡くなったにもかかわらず、実戦配備となった。さらに、2012年にモロッコで2人死亡、フロリダ墜落、今年はネバダで墜落した。日本に配備されたあとも落ちている。これからも、落ちる可能性はある」と述べた。また、その特徴について、「前身のヘリコプターと比較すると、飛べるエリアが広がった。

 オスプレイは、飛行機の形態もとるので遠くに飛べるし、空中で給油すれば、さらに遠くへ飛べるので、日本本土、上海、韓国を含め、アジア全体まで航続距離がある。また、ヘリコプターより2倍速く飛び、乗れる兵隊も倍になり、物資も多く積める。これがメリット。一方で、デメリットは、安全性を犠牲にしていることである。羽根が小さいことからヘリコプターより安定性が劣るし、飛行機とヘリコプターの転換モードでは失速し、危険である」と指摘した。

オスプレイの飛行訓練に対抗するには、中四国が連帯して運動を

 米軍機の低空飛行訓練に関連しては、「日本の領空での約束があり、米軍は低空飛行する時に、『原子力エネルギー施設、学校や病院を含む人工密集地をできるだけ避ける』としている。ただし、『飛ばない』とは絶対に言わず、『飛ぶ時には気をつけて飛ぶ』という言い方である。沖縄にオスプレイが配備された昨年10月から2ヵ月間で、市街地上空や学校、病院の上などを飛んでいるのを、沖縄県は318回確認している。これらは、すべてルール違反である。しかし、政府はそれを事実として認めていない」と現状を報告した。

 本田氏は、オスプレイの飛行訓練に対抗していくために必要なこととして、「県が、実態をきちんと把握し、意見を集約して、国あるいは米軍に直接突きつけていかなければならない。情報ネットワークを作り、騒音の記録を住民が連帯して積み上げていく。市町村レベルでの目撃情報と合わせて、県の責任で『合意事項を守れ』という申し入れをしていく。オスプレイは、松山市内でも目撃されているのだから、県や市町村を動かそうと運動することが必要である。言っては悪いが、愛媛は『のんき』である。今後必要なのは、中四国の連携である」と訴えた。

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