2013年6月2日(日)14時から、山口県岩国市の岩国市民会館で「市民政党『草の根』大会 孫崎享氏講演」が開催された。外交評論家で、元外務省国際情報局局長の孫崎享氏が「日米同盟」と題した講演を行った。
(IWJテキストスタッフ・荒瀬/奥松)
2013年6月2日(日)14時から、山口県岩国市の岩国市民会館で「市民政党『草の根』大会 孫崎享氏講演」が開催された。外交評論家で、元外務省国際情報局局長の孫崎享氏が「日米同盟」と題した講演を行った。
■Ustream録画(14:13~ 1時間49分)
冒頭、孫崎氏は、1951年4月28日にサンフランシスコ講和条約が結ばれたことから、4月28日を日本の主権回復の日として祝うことに疑問を呈した。さらに、「世界のどこに、国内に外国の軍事基地を長年置いている国があるだろうか。ウズベキスタンでも、ソ連から独立した時に軍隊に帰ってもらい、ウクライナも同様だった。イラク戦争についても、2010年にイラクがアメリカに出て行くように依頼した。米軍基地が存続する日本のような状況は、世界では異例である。日本政府が、アメリカに出している思いやり予算は、米軍の海外基地予算の50%に当たる。日本人はいつの間にか、それを異例なことだと思わなくなっている」と述べた。
続けて、「サンフランシスコ講和条約の際、アメリカ代表であったジョン・フォスター・ダレス氏が、安保条約について『われわれが望むだけの軍隊を、望む場所に、望む期間だけ駐留させる権利を確保する。それが米国の目標だ』と話している」と説明。「岩国のオスプレイの配備について、民主党の野田前首相は『配備自体はアメリカ政府としての基本的な方針で、それをどうこうしろという話ではない』と発言している。さらに、国内法の航空法で制限している低空飛行を、オスプレイには適応しないと閣議で決定した。その後、自民党政権になり、沖縄のオスプレイは倍増している。ダレス氏の考え方が、そのまま反映されている」と語った。
孫崎氏は「日本は(核保有国の)中国やロシアなどの脅威から、アメリカに守ってもらうことが必要だ、という方がいる。しかし、世界で、核兵器は1945年の広島と長崎以後、使用されていない。朝鮮戦争とベトナム戦争で使用が検討されたが、『道徳的に許されない』という議論がわき起こり、使用できなかった。軍事的な抑止力の結果ではない」と述べ、「軍縮会議で世界の70ヵ国が『先制攻撃で原爆を使用しない』としているが、原爆を経験し、一番始めに『核兵器を使うべきではない』と言う資格と責任があるはずの日本が、この70ヵ国の中に入っていない。逆に、核兵器の先制使用を許す方向を追求している。こんな馬鹿なことがあるか」と語気を強めた。
日中関係については、「日本は、尖閣諸島の問題を『棚上げ』しながら、日中関係をつなぐ努力をすべきだ。2011年12月、アメリカのヘリテージ財団が出したレポートでは『安倍氏の保守的な考え方と、中国に対する日本国民の懸念を利用して、集団的自衛権を認めさせ、世界各地に軍隊(自衛隊)を派遣できるようにする。日本の防衛費を増やし、それをアメリカの利益になるように使う。米軍基地の辺野古移設を進める』としている。尖閣諸島問題を煽ることが、米国の戦略にとって望ましいのだ。そして、安倍首相は自主の顔をしているが、今までの誰よりも対米従属が強い」と述べた。
最後に、孫崎氏は「軍事ではなく、平和的解決を実現するためには、国民が、その意思を持つことである。主権回復の日などを祝う前に、日本の主権を本当に回復する努力を、なぜ、行わないのか」と締めくくった。