「米国は今まで日本と核兵器も含めた機密情報交換をしてきた。なぜ、この上秘密保護法が必要なのか?」
元米NSC(国家安全保障会議)高官であるモートン・ハルペリン氏は9月19日、日本弁護士連合会主催の「秘密保護法と国民の知る権利―オープン・ガバメントを目指して―」と題したシンポジウムにおいて、日本の秘密保護法を批判するとともに、改訂を求めた。
ハルペリン氏は米国防総省の高官時代に沖縄返還交渉に関わり、核密約などで日本側との交渉にあたった、外交安全保障の専門家である。同時に、情報公開と安全保障のバランスを定めた国際指針「ツワネ原則」作成に関わった、キーパーソンの一人としても知られる。
- 講演 モートン・ハルペリン (Morton H. Halperin) 氏(元米国家安全保障会議〔NSC〕スタッフ、オープン・ソサエティ財団上級顧問)
- パネルディスカッション モートン・ハルペリン氏/海渡雄一氏(日弁連秘密保護法対策本部副本部長)
- 日時 2014年9月19日(金)15:30〜17:00
- 場所 参議院議員会館(東京・永田町)
- 主催 日本弁護士連合会(詳細)
秘密保護法、「国際基準に合致する法律とすべき」
昨年12月6日、各方面より反対の声が多くあがったにも関わらず、特定秘密保護法が参議院本会議で可決された。
秘密保護法の運用基準についてのパブリックコメントに応募し、「甚だ不十分であり、改訂すべきだ」とする意見書を提出したというハルペリン氏は、秘密保護法の問題点として、拙速な制定、米国の圧力を理由としたこと、および国際基準から逸脱していることの、3点を指摘した。
日本政府は、米国が機密情報の提供に際し、秘密保護法の制定を求めたとして、「米国の圧力」を法制定の理由としている。それに対し、ハルペリン氏は、ニクソン、クリントン政権において国家安全保障を担当し、核兵器も含む機密情報を日本に供与してきた自身の経験を基に、「現在の法制では米国と機密情報を共有できないという日本政府の言い分は正しくない」と言い切った。
またハルペリン氏は、日本の秘密保護法が国際基準から逸脱している点の1つとして、何を秘密指定してはいけないか、という指標がないことを挙げ、次のように説明した。
「情報のもたらす公益と、情報を公開することで生じるであろう損害、2つを評価し、公益が損害を上回る場合は秘密指定してはいけないというのが、国際においては一般的である。それに対して、秘密保護法では、単に不正行為を隠蔽する目的で秘密指定をしてはならないと規定するのみだ」
その他の問題点として、秘密指定の範囲が曖昧なことから、ジャーナリストや一般市民が刑事罰の対象となる余地があるため、情報を取得する努力を抑制してしまう恐れがあることなどを指摘した。
結論として、ハルペリン氏は「日本政府は秘密保護法を変更し、米国や西側同盟諸国の秘密法制と同等にすることで国際基準に合致する法律とすべきだ」と提言した。
OGPへの参加による国際社会との連携で、「政府の透明性を高めるべき」