24人の「傍聴する権利」は24,000円以下!?~放射線による健康影響を議論する「専門家会議」で過剰規制する環境省に市民らが緊急申し入れ 2014.8.25

記事公開日:2014.8.26取材地: テキスト動画
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(取材・記事:IWJ・ぎぎまき、記事構成:IWJ・安斎さや香)

 国はいつまで、被災者の声に耳をふさぎ続けるのか――。

 福島原発事故による放射線の健康影響の把握や健康管理の在り方を検討する専門家会議が、8月27日(水)に開催される。これに先立ち、「放射能からこどもを守ろう関東ネット」など26の市民団体が名を連ね、25日、主催者である環境省に申し入れを行なった。

 その内容は、環境省が会議の傍聴希望者を恣意的に選別している可能性があるとし、過剰規制に抗議するもの。やりとりは1時間以上に及んだが、その中で、環境省が27日の会合の傍聴者の数を半数に減らした事実が発覚。疑念の払拭どころか、環境省に対する不信感が増す申し入れ行動となった。

■ハイライト

  • 出席 阿部治正氏(流山市議会議員)、内田ひろき氏(柏市議会議員)、放射能汚染地帯の市民有志
  • 日時 2014年8月25日(月)
  • 場所 参議院議員会館(東京都千代田区)

市民の「失笑」まで記録にとる、環境省の異常な監視体制

 「適当に、そして恣意的に、傍聴希望者を拒否している実状が明らかになっている」

 「放射能からこどもを守ろう関東ネット」のメンバーであり、千葉県流山市の阿部治正市議は申し入れ後の記者会見で、傍聴受付を巡る問題点を改めて指摘した。

 環境省は2回目の会合から抽選システムを導入し、傍聴希望者の数を管理するようになったという。阿部氏はこれについて、環境省は人数のみならず、特定の市民を選別排除しているのではと推測する。

 会場では事務局の職員2~3名が常に傍聴者を監視し、「発言」「拍手」「失笑」に及ぶまで、市民の行動を逐一記録に残すと言い、記録された市民が次の会議から傍聴不可になるケースが後を絶たないというのだ。環境省は会場の受付で、傍聴者に番号を割り振り、同じ番号の席に着席するよう誘導する。市民らは、環境省がこの方法をとることで傍聴者を特定し、次回会合の傍聴の可否を判断しているのだろうと見ている。

 番号を割り振り、座席を指定するという管理体制は、他の会合では見られない。「発言や拍手についても記録に取るのは行き過ぎではないか」。社民党の福島みずほ参議院議員は、環境省の厳しすぎる会合運営について、「国会の傍聴よりも酷いですよ」と苦言を呈し、市民側からは「監視されている気分になる」という声が相次いだ。しかし、担当者は「議事進行上の都合」という答弁に終始するだけだった。

抽選システムというブラックボックス

 第1回会合から傍聴を続けてきた瀬川さんは、第4回以降、一度も傍聴を許可されていない。環境省からの通知には「議事の妨げになるから」という趣旨が理由として挙げられているというが、瀬川さんはどの行為が議事を妨げたのか分からない。環境省に説明を求めても、今日に至るまで、回答は一度も示されないまま、傍聴拒否が続いているという。

 中には、一度も注意を受けたことがない傍聴者が、「再三に渡る注意にも関わらず」という理由で傍聴不可の通知を受け取ったケースもあるといい、注意された事実がないことを環境省に告げると、次からは、「抽選に外れた」との理由で、環境省は傍聴を不許可にした。阿部氏は「環境省は市民の傍聴する権利を軽々しく考えている」と批判し、「抽選システムというブラックボックスの背後で、傍聴者の選別を行なっていると疑わざるを得ない」と指摘した。

24人の「知る権利」は24,000円以下なのか

 「次の会合は、何人傍聴できるのか」――。

 申し入れの際、市民側がこう問いただすと、環境省の担当者は「24人」と回答した。前回の48人と比較すると、半数に激減したことになる。過剰な傍聴規制について抗議していた目の前で、今度は傍聴者の数を半分にすると答える環境省。市民側の誰もが驚きを隠さなかったが、さらに驚いたのはその理由だった。

 これまで、霞ヶ関にある飯野ホールのB会議室を利用してきたが、第10回会合では、「予算上の都合で」A会議室を利用すると担当者は回答した。「予算上の都合」と言うからには、どれだけ大きな差額があるのだろうと調べてみると、なんと前回と今回で会議室の利用額は24,000円しか変わらないことが発覚した。環境省に問い合わせたところ、担当者もその事実を認めている。

 24人の「傍聴する権利」と24,000円を天秤にかけ、環境省は24,000円を優先したことになる。

 担当者の「予算の都合上」という発言は、あまりにも軽はずみだったのではないだろうか。まず第一に、予算上の都合と言いながら担当者はこちらが問い合わせるまで差額を把握していなかった上、24,000円という数字が明るみになった場合の社会的影響について考えが及んでいない。阿部氏が言うように、環境省は、市民の傍聴する権利を軽々しく考えていると言わざるを得ない。

 それ以上に、この会合が、福島原発事故によって被害を受けた人々の健康について議論する、重大なテーマだということを、理解しているのだろうか。命にかかわるテーマであるがゆえに、人々の関心も高い。環境省が市民に突きつけている姿勢からは、その意味を理解しようともせず、一方的に自分たちの都合で物事を進行させようとしていると言わざるを得ない。

 「24,000円が、『予算上の都合』の中身で、間違いないですね」と念を押すと、担当者は答えに窮し、「他の会議室はすでに予約が入っていたことも理由です」と、その場でとってつけたような寝耳に水の回答を付け加えた。

長瀧座長の解任を求めた市民たち

(…会員ページにつづく)

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