安倍総理は5月12日、「積極的平和主義」の立場から、「地域の平和と安定にこれまで以上に積極的に貢献する」として、イスラエルと協力していく方針を示した。7月11現在、そのイスラエルによって、パレスチナ・ガザ地区へ熾烈な空爆が続いている。安倍政権が交わしたイスラエルとの「協力」の中身が今、問われている。

　7月8日から始まったイスラエル軍の攻撃により、11日までに民間人を含む81名が死亡、500名以上が負傷したと報じられている。そして、ガザの保健省によると、犠牲者の3割は女性と子どもだという。

　イスラエル軍は、ガザの軍事拠点など550カ所以上を空爆したが、誤爆を疑われる攻撃もあることから、市民らの怒りが増幅している（パレスチナ、憎しみの連鎖　子どもら犠牲、市民ら怒り朝日新聞、2014年7月10日 記事削除）。

　今回の空爆は、先月、イスラエル西岸地区で3人のイスラエル人の若者が誘拐・殺害された事件に、ガザを実効支配している「ハマス」が関与しているとの声があがったことが発端だ。対するイスラエル側の過激な若者らは、報復としてパレスチナ人の少年1人を殺害し、両者の対立が深まった。

　ハマスは、「（パレスチナの）人民は敗北や降伏はしない」との声明を発表し、イスラエル領内に向けて多数のロケット弾を発射している。これにより、イスラエル人数人が負傷したと報じられているが、いまのところ死者は出ていない。

　しかし、ハマスが9日に発射した3発のロケット弾は、原子力施設のあるイスラエル南部ネゲブ砂漠の都市ディモナに向けられていたことから、今回のイスラエルの報復は過去前例のない規模で展開される可能性がある。

• イスラエルのガザ空爆で23人死亡、長期化や地上侵攻の可能性も（Reuters、2014年7月9日）
• 原子力施設狙いロケット弾、ハマス　イスラエルはガザ空爆継続、死者80人に（産経ニュース、2014年7月10日 記事削除）

　報復が報復を呼ぶ武力行使に、世界中から非難の声が高まるなか、安倍政権はイスラエルとの軍事協力に乗り出している。

　7月6日、日本とイスラエルは、企業や研究機関が「共同研究・開発」を促進する覚書を締結。イスラエルのベネット経済大臣は、「合意により、共同戦略、改革、また、イスラエルの企業が日本市場に参入するための素晴らしい基礎ができあがった」とコメントした。今後促進され得る「共同研究・開発」には、もちろん「武器」が含まれる。

　政府は3月14日、武器輸出三原則の緩和について議論するなかで、イスラエルへの武器や関連技術の輸出が可能になるの見解を示していたのだ。つまり、パレスチナで起きている惨劇に、これからは日本が武器輸出や関連技術の提供といったかたちで、直接関わる可能性があるということだ。そして、この安倍政権とイスラエルの協力関係は、将来的に、集団的自衛権の対象になる可能性もあるということだ。（日本、イスラエルと研究開発協力へ　「歴史的合意」と現地メディア評価　日本紙と温度差 NewSphere、2014年7月10日 記事削除）、（イスラエルへの武器輸出可能　新原則案で政府見解 共同通信、2014年3月14日 記事削除）

　5月にはイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が訪日し、12日には安倍総理と、13日には岸田外務相と会談した。ネタニヤフ首相の訪日を受けて、5月11日に中東情勢の専門家やジャーナリストらによる緊急集会が行われ、IWJはこの模様を中継。日本とイスラエルをめぐるさまざまな議論が行なわれ、予想される両国の兵器共同開発などに異議を唱えた。

• 日イスラエル首脳会談
• ネタニヤフ首相訪日で見え隠れする安倍政権の「軍事的」な思惑 ～「日本・イスラエル兵器共同開発に異議あり」専門家・ジャーナリストらが緊急集会 2014.5.11

　イスラエルによるガザ空爆は沈静化の見通しが立たず、新たに地上戦の準備ともとれる動きがあるなど、今も緊迫した状況が続いている。

　海外では、イスラエルに対する抗議の動きが広がっている。抗議行動は中東だけでなく、ベルリンやニューヨークなど欧米各国にも波及。日本でも11日18時半から、イスラエル大使館前でガザ空爆に抗議する緊急行動が行なわれ、IWJはこの一部始終を中継する予定だ。

　IWJは今後もこの問題に注視し、取材を継続していく。