狭山事件から51年 弁護団らが現場検証 足利事件の菅谷氏も同行し、石川一雄氏の無罪を確信 2014.5.1

記事公開日:2014.5.7取材地: テキスト動画
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(IWJ・石川優)

 狭山事件の発生から51年が経った。

 1963年5月1日、女子高生が下校中に行方不明となり、被害者宅に身代金を要求する脅迫状が届けられた。翌日、身代金受け渡しの場所周辺で警察が張り込みをしたが、現場に現れた犯人を取り逃がしてしまう。捜査体制が強化されたが、事件発生から3日後の5月4日、被害者の遺体が発見された。当時の警察庁長官は、この責任を取って辞任する事態になった。

 遺体が発見された現場近くでスコップが発見された。そのスコップを被害者宅近くの養豚場のものだと判断した警察は、養豚場関係者に捜査を集中した。5月23日、養豚場の元従業員の石川一雄氏が逮捕された。だが、事件と関係しているという証拠がなかったため、窃盗などの嫌疑による別件逮捕だった。

 石川氏は、一貫して無実を主張した。しかし、警察は取り調べの中で執拗な自白を迫った。警察官から「認めれば10年で出られる」と言われた石川氏は、犯行を認める自白をする。一審で死刑判決、二審で無期懲役となっている。

記事目次

■ハイライト

  • 狭山市の富士見集会所にて事前学習会(第3次再審請求の現状と開示証拠の意義)
  • 市内の「上赤坂の森」近くの路上での現場検証(当時の被害者宅前道路と同様に街灯のない道路。自白のように午後7時半頃に駐車中の車が見えるのか。有罪判決のいう午後7時過ぎの車の駐車は事実なのか。)
  • 集会所での総括会議
  • 収録 2014年5月1日(木)
  • 場所 埼玉県狭山市

不自然な自白内容

 狭山事件から51年を迎えた2014年5月1日。石川氏が被害者宅近くで小型トラックを見たという自白内容を検証するため、弁護士団は現地調査を実施した。
この日の現地調査に先立ち、石川氏の再審を支援している安田聡氏に、事件の重要地点などを案内していただいた。
 東京高裁が石川氏の有罪判決の根拠とした7つの状況証拠があるが、安田氏はそのなかでも脅迫状がもっとも重要だと語った。

 事件当時、狭山市は養蚕が盛んだった。狭山市駅からしばらく歩いた住宅街の中に、蚕の神様を祀る荒神様の神社がある。この荒神様の神社では毎年5月1日にお祭りがおこなわれており、事件当日も、700~800人ほどの人で賑わっていた。

 石川氏の自白によれば、この賑わっていた神社を通り、その先の十字路で被害者と遭遇したことになっている。この毎年行われていたという神社のお祭では、お囃子をやっていたが、この事件があった年だけ、流行歌などのレコードをスピーカーで流していた。このレコードの音は、この神社から500メートルほど離れたところで農作業をしていた人も聞こえていた。石川氏は、取り調べの際に、このレコードを聞いていないと主張している。神社のレコードを聞いていないということは、神社横を通っていないということではないのか。だが、二審判決では、この件について、「被告人がそこを通った際にたまたまレコードがかかっていないこともあり得るし、レコードがかかっていても被告人が気にとめなかったこともないとはいえない」と、可能性の低い条件を採用し、あくまで石川氏が賑わっていた神社横を通ったとした。

 荒神様の神社をしばらく歩いたところに、十字路がある。石川氏の自白では、そこが被害者との遭遇地点ということになっている。

 そもそも、たまたま遭遇した被害者の自宅に脅迫状を届けられたことは不自然である。安田氏は、「(誘拐対象が)どこの誰かわからなければ、あらかじめ脅迫状を持っていたにしても、届けようがない。そんな誘拐犯はいないだろう。そもそもその自白自体がおかしい」と、自白内容の不自然さを指摘する。

 さらに石川氏の自白は変遷している。安田氏はこう述べる。

「最初の自白では、女子高生が自転車に乗っていて、後ろから通り過ぎたとなっている。荷台を押さえたと自白している。そのあとの自白では、それは間違いと言い、この十字路を通り過ぎ、道を引き返して女子高生とすれ違いになったと言い換えた。自分のやったことなら、後ろから通り過ぎたのか、すれ違いだったかを忘れる犯人はいない」。

 判決では、この十字路での遭遇時間は午後3時50分頃となっている。だが、この点も自白と辻褄が合わないと安田氏は指摘する。午後2時過ぎに、駅のすぐ近くの店で牛乳とアイスクリームを買って、飲み食いしながら、ずっと歩いていたとなっている。だが、十字路までは距離にして1キロ。安田氏に立ち止まりながら案内していただいたが、せいぜい30分程度だった。被害者は3時23分に下校していたと明らかにされている。時間の点でも不自然さがあり、十字路の話は多くの矛盾を示している。
 さらに、石川氏の自白では、被害者を強姦しようとしたところ、悲鳴をあげたことになっている。しかし、殺害現場とされている近くで、農作業をしていた人は、人影も無く悲鳴は聞こえなかったと話している。この農作業の人というのは、荒神様の神社で流れていたレコードが聞こえたと話した人と同一人物であり、500メートル離れた場所の音に気づいたのに、近くの悲鳴や人影には気づかなったというのはおかしいと、安田氏は指摘する。

弁護団ら現場調査 午後7時半に車は見えたのか

(…会員ページにつづく)

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