再審と科学鑑定 -作り上げられた冤罪を暴く- 2013.1.26

記事公開日:2013.1.26取材地: テキスト動画
このエントリーをはてなブックマークに追加

(IWJテキストスタッフ・富田/澤邉)

 2013年1月26日(土)13時から、東京都千代田区にある専修大学で、同大今村法律研究室が主催するフォーラム「再審と科学鑑定 −作り上げられた冤罪を暴く−」が行われた。6つの事件について担当の弁護士が「科学鑑定」の見地から冤罪性を主張。会の最後には、矢澤同大教授が「科学鑑定の悪しき使われ方によって冤罪がでっち上げられないよう、みんなで監視していくことも肝要だ」と述べた。

■ハイライト

  • 日時 2013年1月26日(土)
  • 場所 専修大学(東京都千代田区)

 フォーラムで取り上げられたのは、東電OL殺人事件、名張毒ぶどう酒事件、恵庭OL殺人事件、福井女子中学生殺人事件、飯塚事件、袴田事件、の6つの事件(東電OL殺人事件と飯塚事件は映像未収録)。スピーカーはそれぞれの担当弁護士である、鈴木郁子氏、野嶋真人氏、伊東秀子氏、島田広氏、岩田務氏、小川秀世氏だ。トップバッターの野嶋氏は、弁護団によるこれまでの「科学鑑定」についてスピーチした。

 「名張毒ぶどう酒事件」は、1961年3月に三重県名張市で起きた毒物混入事件で、5人が死亡している。農薬「ニッカリンT」の所持を理由に、奥西勝死刑囚が逮捕・起訴され、一審では無罪判決だったが、控訴審では逆転の死刑判決になった。その後、上告が棄却され死刑が確定する。野嶋氏は、弁護団が最も力を入れたのは「毒物問題」であると指摘し、事件当時に行われたペーパクロマトグラフ試験の結果を話題にした。

 事件検体(飲み残しぶどう酒)と、対照検体(購入分同)へ市販のニッカリンTを混ぜたものに対し試験を行った結果、主成分のTEPPと、それが加水分解したDEPは、ともに検出されるも、対照検体からはもう1つ、別の成分が検出されたというのである。野嶋氏は「事件当時、TEPP剤にはニッカリンTのほかに三共テップという製品があり、両製品の分析を大学の研究室に依頼したところ、三共テップが事件に使われたとすると、ペーパクロマトグラフ試験の結果は矛盾なく説明できる、との帰結を得た」と指摘した。

 この新証拠による特別抗告審決定が、名古屋高裁によって2010年4月になされている。しかし昨年5月には、同じ名古屋高裁がこれを棄却。野嶋氏はこれについて、「もう1つの成分(トリエチルピロホスフェート)はエーテルでは抽出されないなどの論点で覆されたが、それは鑑定人も検察官も主張していない推測で、科学的根拠がないもの」と、あらためて批判を展開した。

(…会員ページにつづく)

アーカイブの全編は、下記会員ページまたは単品購入より御覧になれます。

一般・サポート 新規会員登録単品購入 330円 (会員以外)

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です