福島第一の凍土遮水壁「安全性に影響があるなら着工延期もある」~田中俊一原子力規制委員長定例会見 2014.4.23

記事公開日:2014.4.23取材地: テキスト動画
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 2014年4月23日(水)14時30分より、東京・六本木の原子力規制庁で田中俊一・原子力規制委員会委員長による定例会見が行われた。福島第一原発の凍土式遮水壁について、東電とエネ庁が6月着工を目指していることに関し、田中委員長は「安全への影響を見て、きちんと審査することが規制委の立場であり、安全性に非常に悪い影響があるならば、着工延期ということもあるかもしれない」との考えを示した。

■全編動画

  • 日時 2014年4月23日(水) 14:30〜
  • 場所  原子力規制庁(東京都港区)

東電・凍土式遮水壁「着工より安全性が重要」

 東電福島第一原子力発電所の、建屋へ流入する地下水を低減させるため”凍土式遮水壁”が計画され、規制庁に実施計画が申請されている。事業主体である東電とエネ庁は、6月着工を目指している。

 しかし、田中委員長は、「安全への影響を見て、きちんと審査することが規制委の立場であり、安全性に非常に悪い影響があるならば、着工延期ということもあるかもしれない」との考えを示した。ただし、「今何か結論を言うのではなく、次回の原子力施設監視・評価検討会で議論されるだろう」と述べた。

 汚染水対策の一つとして凍土式遮水壁があるが、それだけですむものではない、(流入する)水がなくなる事はなく、長期的に考えなければいけないという田中委員長は、ALPSやサブドレンなど汚染水の問題は場当たり的にいろいろな対策を行うのではなく、持続的(サステイナブル)に実施できる対策が必要だと、今の対策に苦言を呈した。

 とはいえ、規制委/規制庁はあくまでも規制庁局であり、実際の対策は東電やエネ庁が考えることだと明言した。

生活支援チームの個人線量計データ最終報告「個人線量の評価ではない」

 原子力被災者生活支援チームが記者会見を開き、個人線量計のデータの最終報告を行った。これについて田中委員長は、「それは個人線量の評価ではなく、ファントム・モデルのシミュレーションの結果だ」とコメントした。

 加えて、規制委としては、「一人ひとりの行動、生活状況によって変わるため、一人ひとりの線量をモニタリングして、それに対する対応をすることが大事だということを、”帰還に向けた安全・安心対策に関する検討チーム”で議論し、提案した」と述べた。

 また、生活支援チームは規制庁の組織ではなく、「他の省庁がやっていること、何か問われればいいが、そうでないのに何か進言することではない」と説明した。

安定沃素剤の未配備「ほめられたことではない」

 新潟県で安定沃素剤22万人分の予算を確保するも、錠剤を配備していなかったことが、昨日、県から発表された。このことについて尋ねられた田中委員長は、「ほめられたことではない」と苦い顔で答え、「今は原発は止まっているから沃素が出る心配はほとんどないが、住民のために速やかに準備していただきたい」と述べた。

フィルタベント、新規制基準にないと事業者がクレーム

 フィルタベントについて、「新規制基準に記述されていない」と事業者がクレームをつけていることについて、記者が指摘。田中委員長は、「フィルタベントについては性能要求だ、規制は最低限の要求だ。それ以上の+αの部分は、事業者でどんどんやってもらいたい」と述べた。

 発電所の構外に出てどうなるかは、「今は規制委員会の規制の範囲外、事業者の責任でやるべきで、規制庁/規制委に求めていることが筋違いだ」と説明した。

JANSIとの意見交換会について

 昨日4月22日17時から開催されたJANSIとの意見交換会について、田中委員長は「JANSIと我々と目指すところは同じだが、アプローチの仕方が違う」と所見を述べた。さらに、福島第一原発に対して、「JANSIが行っていることは分かったが、それが国民に見えないのは問題だ」と述べた。その上で「我々の考えは伝えた」とコメントした。

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