事故はまだ続いている——。
2014年3月8日に郡山市ユラックス熱海で行われた「原発のない福島を!県民大集会」に参加した人びとに共通する思いだ。集会には、作家の大江健三郎氏、原子力資料情報室の澤井正子氏のほか、今も当事者として事故に向き合う県民が登壇し、原発推進政策を押し進める政府の姿勢を鋭く批判した。
集会の冒頭、呼びかけ人代表として挨拶した清水修二氏(福島大学教授)が、福島県民の震災関連死がこれまでに1600人を数えるという事実を取り上げた。
「1600人という数字は、1年に500人を越え、2日間に3人が亡くなっているという勘定になります。しかもこれは、いまだに続いている事態であります」
清水氏は「こうした現状が霞ヶ関や永田町、そして東京電力の本社にいる人たちの目にいったい入っているのか。政府は躍起になって原発再稼働の地ならしをしている」と憤り、県民すべての力を結集し、原発のない地域社会を作ることが必要だと訴えた。
- 日時 2014年3月8日(土) 13:00~
- 場所 ユラックス熱海(郡山市)、いわき市文化センター(いわき市)、福島県教育会館(福島市)
- 主催 「原発のない福島を!県民大集会」実行委員会
- 後援 浪江町 葛尾村 双葉町 大熊町 富岡町 川内村 楢葉町 広野町 福島民報社 福島民友新聞社 朝日新聞福島総局 毎日新聞福島支局 河北新報社 福島テレビ 福島中央テレビ 福島放送 テレビユー福島 ラジオ福島 ふくしま FM 福島コミュニティ放送 FM ポコ SEA WAVE FM いわき 喜多方シティエフエム 株式会社郡山コミュニティ放送ココラジ エフエム会津
- 告知 原発のない福島を!県民大集会
「もう一度日本人は騙されようとしている」
「今、原発が最も危険なものであって、人間は克服できないという一番根本、本質にあることを、言わなくなっているのではないでしょうか」。登壇した大江健三郎氏は、原発事故が急速に風化し、再稼働が推進されつつある現状への危惧の念を強く表明した。
「原発を再稼働させても、根本的に恐ろしいことが起こらないぞ、という宣伝は、この戦争は悲惨なことにならない、という、日本人が日本人を騙したことと同じです。そして、嘘だと薄々知りながら、信じて、騙されたふりをして、そして信じてしまった」
敗戦後、大江氏の岳父である伊丹万作氏は、日本人が「自分たちは騙されていた」と言うばかりで、「騙された自分たちを反省しない」ことを非常に憂いていたという。
70年を経過した今、大江氏の目には現在の日本人の姿が同じように映る。「むしろ自分たちが騙されることを望んで、従おうとしているのではないか」。 それは、原発の安全神話を信じてきたことを事故直後は反省したものの、わずか3年を待たずに原発推進者に勢いを与えてしまう現在の日本人の姿そのものだ。
大江氏が希望を見出すのは、今もなお原発事故に向き合いながら生活を続ける福島の人びとの姿にほかならない。
「原発は人間と共生することができない。最初に、確実に原発を廃絶する、その知識、勇気、経験を持っているのが福島を中心とした日本人であることを確認しなくてはならない。このことを世界に知らせ続けなければならない」
「事故はまったく終わっていない」
原子力資料情報室の澤井正子氏は、めどさえ立っていない福島原発事故の現状を報告した。
放射線量が高い原子炉周辺では、そもそも作業内容が限定される。「東電がやっていることは、原子炉に向かって水を注水しているだけです。なぜか? 放射線量が高くて近寄れない、何もできないのです、ただ水を入れているだけです」
事故の全容は東電も把握できていないと澤井氏は次のように指摘する。
「推進側の産経新聞の記事でも、原子炉の状態や爆発原因はなお未解明。まず、溶けた核燃料がどこにあるのかわからない。東京電力もわかっていない、ただ水を入れているだけです。水素がどこからきたのか、どういう爆発したのか、わからないことばかり、がまだ現状です」
当事者たちの声
集会の中盤からは、様々な形で原発事故に直面し続ける当事者らが登壇し、それぞれが置かれた状況について訴えた。
浪江町から郡山市に避難している男性は、事故発生後からの3年間が、「復旧」「復興」を約束するものではなかったと語る。
福島県知事、郡山市長、福島市長、いわき市長は出席せず。伝言だけ。彼らは県民を避難させないで高線量の場所に留め置くことを最優先にしている。こんな大会でいいのですか?