原発のない福島を!県民大集会 2013.3.23

記事公開日:2013.3.23取材地: テキスト
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(IWJテキストスタッフ・宮里/澤邉)

 2013年3月23日(土)11時から、福島県福島市のあづま総合体育館で「原発のない福島を!県民大集会」が開催された。郷土色あふれるアトラクションが披露され、さまざまな立場の人がスピーチを行った。この春、高校を卒業した女性は「故郷に放射性廃棄物の中間貯蔵施設が作られているのを見て、国から遠まわしに、戻れないと言われた気がした」と語った。

※事情により動画はございません。ご了承ください。

  • 11:00~ 第1部 アトラクション
    霊山太鼓(伊達市)/下柴彼岸獅子(喜多方市)/大谷じゃんがら念仏踊り(楢葉町)
  • 13:00~ 第2部 県民集会
    主催者あいさつ/呼びかけ人代表あいさつ/連帯あいさつ(鎌田慧氏)/メッセージ紹介/県民からの訴え/集会宣言

 冒頭、集会の呼びかけ人の一人である曹洞宗円通寺住職の吉岡棟憲氏より、開会の挨拶が行われた。吉岡氏は、原発事故によって、「子どもたちが外でのびのびと遊ぶ権利も、家族が仲良く過ごす権利も、お年寄りが住み慣れた故郷で過ごす権利も、昔から築いてきた地域のコミュニティも、幾千年とかけて作り上げた大自然をも破壊し、動・植物、水や空気の生命さえも奪った」と述べた上で、国や東京電力が、いまだに謝罪もなく、嘘と隠蔽を重ねて早期の風化を図ろうとしていることを、「絶対に許すことはできない」と非難した。

 続いて、実行委員会委員長・五十嵐史郎氏の挨拶、呼びかけ人代表の福島大学教授・清水修二氏の挨拶、ルポライター・鎌田慧氏の連帯挨拶が行われた。

 鎌田氏は「広島、長崎、第五福竜丸といった不幸な被曝の歴史を、福島でも迎えたことをとても残念に思う」と述べた上で、政府や東電に対して、「原発事故によって破壊された、福島の人たちの生活の復旧は、政府と電力会社が真っ先に行わなければならない。なぜなら、原発は、国策によって、電力会社に叡智を与えるという目的によって始められたものだからである」と語った。

 また、現在稼動中の大飯原発2基が8月には停止し、稼動ゼロとなることに触れて、「この時から私たちは、絶対に原発は許さない、再稼動させないという決意を込めた、大きな行動をしていく必要がある。再稼動は絶対に認めないという行動を、さらに大きくしていかなければならない」と強く呼びかけた。

 続いて鎌田氏は、福島県民による30年以上に及ぶ原発反対運動の歴史について語ったあと、「原発は地域を発展させる、人々を豊かにする、などということはまったく嘘だった。その嘘は今でも続いている。電力不足、安全、安いなど、再稼動の理屈もすべて嘘である。嘘で固めて原発社会が作られてきた。そのような社会は間違っている」と、原発社会を批判した。

 また、鎌田氏は、日本中で自然エネルギーを求める声が高まっていることや、自然エネルギーが安定した電力になっていくことがわかってきたことについて、「すべて福島の尊い犠牲の上に、新たな真実が浮かび上がってきた。これを絶対に推し進めていく。福島を忘れない、福島を繰り返さない。これから私たちは、福島の人たちとともに闘っていく、頑張っていく」と決意の言葉を述べて、挨拶を締めくくった。

 続いて、メッセージ紹介のあと、「福島県民からの訴え」と題して、農業協同組合ふたば代表理事専務・篠木弘氏、相馬双葉漁協理事・佐藤弘行氏、高校生平和大使・高野桜さん、福島県森林組合連合会・鈴木邦彦氏、福島県旅館ホテル生活衛生同業組合理事長・菅野豊氏、県外避難者・大越たか子氏、福島の子ども保養プロジェクト・平井華子氏、計7名のスピーチが行われた。

 この3月に南相馬市の高校を卒業したばかりの高野さんは、福島県初の高校生平和大使として、昨年8月に、スイス・ジュネーブにある国連で開催された集会で、福島の現状報告をするなどの活動を行ってきた。高野さんは、山形県に避難した母・兄妹と別居していることや、南相馬市の自宅に一時帰宅したときの喜びについて語った。また、昨年4月に避難区域が解除されたものの、除染やインフラが整っていないために、住むことができない状況についても語った。沿岸部に放射性廃棄物の中間貯蔵施設が作られている現状を目の当たりにして、「遠まわしに、しばらく戻ることはできないと、国から言われているような気がした」という。

 高野さんは、今月、ブラジルを訪問したばかりで、現地の学生や日本から移住した被曝者との交流を行ってきた。その際、ブラジルでも、現地日付の3.11に原発反対の署名活動を行っていたことに驚き、とても嬉しく感じたという。また、高野さんは、長崎の被曝者とも多く交流してきた。高校生平和大使の活動を通じて、伝えていくことの大切さを学んだと語る高野さん。「原発事故のことは、体験したからこそ伝えていける。この原発事故が忘れられて、また同じことが起きることが恐い。私たちには、つらい体験をしたことを、たくさんの人に伝えていく使命がある」と思いを述べた。

 終盤、呼びかけ人の一人、福島県立医科大学教授・藤野美都子氏より、集会宣言が行われた。福島県の震災関連死の数が1300人に上っていること、16万人の県民が避難生活に苦しんでいること、避難者と避難先の住民との心理的な摩擦など、多くの苦悩があることを述べたあと、「その上で、福島県内の個人・組織・団体は、復興に向かって努力している」と述べた。また、県知事と県議会は県内10基の原発の廃炉を求めているのに対して、東京電力が受け入れることなく、再稼動を前提としているかのように6基の保守・管理を進めていることを問題視した。そして、藤野氏が「世界史の中で特別な位置に置かれた福島が、しっかりと再生へ向けた道を歩むために、原発依存からの脱却は出発点であり、大前提でなくてはならない」と述べると、場内に拍手が巻き起こった。

 最後に、呼びかけ人の一人、ハイロアクション福島の武藤類子氏が閉会の挨拶をして、県内外より多くの人を集めて開かれた集会の幕を閉じた。

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