東京電力福島第一原発で2月19日に発生したH6エリアの天板付近からの汚染水漏洩について、原子力規制委員会は2月24日、「第11回特定原子力施設監視・評価検討会汚染水対策検討ワーキンググループ」で対応策などを検討した。東電からの調査報告をもとに議論は進められ、タンクの水位管理の甘さなどが判明したが、今回の事故原因などは依然として判明しなかった。
東京電力福島第一原発で2月19日に発生したH6エリアの天板付近からの汚染水漏洩について、原子力規制委員会は2月24日、「第11回特定原子力施設監視・評価検討会汚染水対策検討ワーキンググループ」で対応策などを検討した。東電からの調査報告をもとに議論は進められ、タンクの水位管理の甘さなどが判明したが、今回の事故原因などは依然として判明しなかった。
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この日のワーキング・グループでは、東京電力福島第一原発で、2月19日に発生したH6エリアタンクからの溢水事故が急遽議題にのぼった。
東電は、作業員らへのヒアリング調査から判明したことを説明した。弁の開閉操作が行われた可能性があることから、APD入域データを基に関連者106名にヒアリング調査を行っており、現時点までで98名完了している。ヒアリング対象は東電社員と協力企業の双方で、水処理担当者、ポンプ等の運転関係者、パトロール関係者などが含まれていた。
ヒアリングの結果、特に問題や不自然な点は発見されていないというが、ある東電社員は「ハンドルが置いてある場所に違和感を持った」と話しているという。弁操作を明確にする有益な情報は得られておらず、今後も対象者を拡大し、ヒアリング調査を継続する予定だ。
また、監視カメラの画像記録が録画されていることが分かったため、調査および分析を進めていくとした。
溢水したH6-C1タンクの注水ラインには、「V347」、「V399」、「V401C」と呼ばれる三つの弁が直列につながっている。東電はこれまで、V399とV401Cがいつ「開」状態になったのか分からないとしてきたが、調査の結果、「2013年4月17日に、当該タンクへ再受け入れの可能性もあることから、作業効率の観点から、『開』にするよう東電が指示」していたことが分かった。しかし、弁の開閉操作にかかる時間は、「10秒ぐらい」だと東電はいう。作業の効率を上げるために、わずか10秒の時間を惜しんだというのは、説明としては腑に落ちないだろう。
直列に複数の弁があることで、一つの弁が誤って”開”になっても他の弁が”閉”なら水が流れないという安全性を持った構成になっているにも関わらず、その安全性を活かさない運用をしていたということになる。
さらに、このような弁の構成はH6特有のもので、他のエリアのタンクは一つの弁だけで配管されている。これについて更田豊志規制委員は、「今となれば他のエリアで弁が一つというのが問題だ」と指摘。「ミスはともかく、問題は操作に間違いがあったときに漏洩を防ぐような仕組みになってないのはなぜだ」と質した。
H6-C1タンクの水位計で警報が発令した直後から、1時間おきに3回パトロールしている。その後、約7時間パトロールを行わず、溢水した。
この間の作業としては、汚染水をEエリアに送る操作を行っていた。つまり、Eエリアに送っていると思っていたので、H6エリアタンクはまったく関係ない隔離されたものだと思いこんでおり、ポンプ停止のアクションには繋がらなかった。
「Eエリアタンクの水位を監視しており、送っているのに水位が上昇せず、フラットになっているのは、いささか疑問であったが、オーバーフローした時にどう対処するかを気をつけていて、水位が上がらないほうは気にかけていなかった」これが東電の説明だ。漏洩に対しては事態を想定し、対策を作っていたが、今回は想定外だったということだ。
漏えいタンクは、超音波式の検知器だったが、その後段にある4つのタンクには、新式のレーザー式検知器がついたところだった。
Eエリアタンクは移送先なので監視していたが、H6エリアは移送先ではなかったため、監視していなかった。
水位計の96.7%で「水位高警報」、この時ポンプがトリップ(停止)し、水の自動移送を停止する。しかし、タンク容量が逼迫しているため、その後は水位を見ながら手動で運転し、98%まで使用するという運用方法をとっている。
このことに対し、スロッシングによる天板からの漏洩もあるため、96.3%を下回る運用を実現できないか、達成できる期間を示すよう規制庁から指示がくだった。「高高警報が出ても100%ではないのだから、そこを見に行って水が溢れているわけがない。見に行って溢れてないという判断は極めて合理性に欠ける」と指摘した。
水位計のトレンド記録やポンプの稼働記録、その他の作業記録の調査結果、直近で配管の弁箇所に銘板取り付け作業を行ったことが判明している。
銘板取り付け作業の工事記録写真によると、ストッパーの隙間にワイヤーを3回まわし、最後は輪を作って止める作業を現場でしている。この際、バルブを半分開ければ、ワイヤーの輪をスムーズにかけられることから、バルブを操作したのではないのかと規制庁が指摘した。
これに対して東電は、バルブの開閉は一切ない作業、バルブを開けないで作業できることを確認していると回答。否定も肯定もせず、調査中であるとした。
ストッパー(羽板)とボディに穴が二つ開いている。南京錠をかけてロックするための穴なので、チェーンロックにより誤操作を防ぐことができる。東電はその指摘の穴を使っての管理を現在検討中だという。
規制庁・安井対策監は「高い水位に敏感にならないといけない。予期せぬことが起きると、機械側のせいにするのは、根本的に直せ」と指導。東電・姉川氏は「組織を根本的になおさないと、というご指摘であると。心構えもなおさないといけないので、早急に対処したい」と答えた。
更田豊志規制委員は、東電に、次の四点を指示した。
(1)受け入れタンクの警報の適正化
(2)移送先タンクの監視強化
(3)タグ付けの操作、作業の調査続行
(4)タンク水の93%を下回る運用の実現性、その時期の検討
根本的な原因も対策も明らかにならないまま、この議題は次回の検討会にも続く。
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以下、原子力規制庁ホームページより、リンクを表示
配布資料