『「戦後」と安保の六十年』(日本経済評論社、2013年)の著者であり、流通経済大学教授の植村秀樹氏に1月15日、岩上安身がインタビューを行った。植村氏は沖縄国際大学研究員でもある。「自衛隊の生い立ちについて日本一詳しい」と評判の植村氏に、沖縄の基地問題などについて聞いた。
(IWJ・ゆさこうこ)
『「戦後」と安保の六十年』(日本経済評論社、2013年)の著者であり、流通経済大学教授の植村秀樹氏に1月15日、岩上安身がインタビューを行った。植村氏は沖縄国際大学研究員でもある。「自衛隊の生い立ちについて日本一詳しい」と評判の植村氏に、沖縄の基地問題などについて聞いた。
記事目次
■イントロ
昨年末に沖縄県の仲井真弘多知事が、これまでの姿勢を一変して、米軍基地の辺野古移設の前提となる埋め立てを承認した。この件に関して、植村氏は、仲井眞知事が会見の席で「誤ったメッセージを送った」と指摘する。
仲井真知事は埋め立てを承認した理由について説明するべきであったのに、政府から「有史以来の新興予算をもらった」と喜んで言ったからだ。この知事の言葉が「問題の本質を違うところに持っていってしまった」と植村氏は述べる。「沖縄は金で転んだ」と見られてしまいかねない。しかも、「有史以来の新興予算」というのは誇張で、1997年の新興予算4700億円よりも少ない3000億円である。
植村氏は、「名護市の中でも人口が多い場所に住む人たちが新興予算で得をして、人口の少ない辺野古周辺に住む人が基地を負担するという構図になる」と懸念する。「辺野古問題に対して沖縄全体の判断を下す」という意味を持つ名護市長選は重要だ。「目先の新興予算ではなくて、子孫に何を残すのか、どういう沖縄を作るのかということを考えて投票してほしい。投票が日本全体をどうするのかということにつながる」と植村氏は述べた。
─カート・キャンベル元国務次官補「沖縄で少なくとも3つの非常事態用滑走路が必要」─
植村氏は日本の自衛隊の成立について次のように語った。「戦後、アメリカは日本の帝国陸海軍を解体し、米国に都合のいいように作り替えた。そのとき、日本が政治的・経済的に安定するようにするとともに、強くなるようにした。そうした中で、自衛隊を育成した」。しかし、その一方で、アメリカは、日本の米国に対する貢献は自衛隊の力ではなく基地だと考えていたと植村氏は指摘する。
そうした基地のしわ寄せを受けたのが沖縄である。基地が沖縄にある理由は地政学的にそれが有利であるからという意見があるが、植村氏はそうした意見を否定する。「地理的な問題という理屈は通用しない。沖縄に集中する方がかえって危ない」と植村氏は指摘し、さらに「中国と米国が戦火を交える可能性は無視していいほど小さい」とつけ加えた。
辺野古に基地を作ろうとするということには、どのような意味があるのだろうか。植村氏は、「米軍の海兵隊は出て行くのであれば立ち退き料がほしいということで、その結果として辺野古移設ということになった。だが、その先に、この地域で海兵隊が何かやるという計画はないと思う」と分析する。つまり、「日本の安全や地域の安定ということではなく、米国の軍の都合で動いていて、その都合に日本は合わせている」ということだ。
70年代に日本側が米軍海兵隊に沖縄に留まるよう要請した文書があるが、その要請の真意は不明であると植村氏は述べる。また、東アジア・太平洋担当国務次官補カート・キャンベルが「中国が軍事増強しているので、沖縄で少なくとも3つの非常事態用滑走路を使うことが必要」と言ったことから、辺野古の基地が必要とされたことが明らかになっているが、その件について植村氏は、「キャンベルはもっともらしいことを言って力でねじふせただけ。自分がジャパンハンドラーだということをワシントンに示したかったというだけだと思う」と語った。
安倍総理は2012年12月に、国際言論組織「プロジェクト・シンジケート」のサイト上に「アジアの民主主義セキュリティダイヤモンド(Asia’s Democratic Security Diamond)」と題する論文を発表した。この中で、安倍総理は、インドなどの国々を巻き込んで中国を封じ込めることを主張している。
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冷静沈着な情勢分析にうなずくことばかりです。
安倍政権のめざすは軍事独裁政権でしょうか。復古的軍事強国で面目を保ち海外で集団自衛権を行使し中国に軍事力を誇示する。
なお米国の戦略は異なると思います。これまでアメリカは中国と戦争したことがありませんから中国が軍事力で決定的に優勢となったとき未来予想として米中同盟がありうると思います。
この件はお金の多寡の問題ではなく、沖縄に基地が必要かどうかだというご指摘はまったくもってその通りだと思います。
しかし、このインタビューで言われていることは分析になっていません。なぜなら、沖縄に米軍基地が必要かどうかの話をするのであれば、中国がどういうつもりか、それに対して日本はどう対応すべきか、なにがカードになるかの分析を欠かすことは出来ないからです。
日本が最終的に中国と「敵対」してはいけないことは確かでしょう。しかし、それだけ述べて、だから日本は軍事力を整備するな、というのは分析でもなんでもなく、ただのイデオロギーです。
相手がどのようなつもりかを考えずに、自国の目標にだけ照らして行動するというのは、方向性は真逆ですが、戦前の日本と同じではないですか。中国はその「時代遅れ」の軍事力整備を猛烈な勢いで行っているのですよ。
その意味で、米軍の基地は戦争の準備のためにあるのではなく、沖縄そのものないし周辺に中国の軍が進出するコストを高め、日本が平和的な関係を築いて行く上でカードとなる、という見方の方がむしろ政治学的には正統な解釈だと思うのですが。
☆ 被害と受益の分離 ☆ のご指摘、辺野古に限らず、原発も子宮頸がんワクチンも築地移転問題もTPPも戦争も、ありとあらゆるところに見られます。ガツンとくるキーワードです。
被害と受益の分離がなければ新自由主義は成り立たなくなるかな、とも思えるのですが。
政府が機能していれば、新自由主義もほどほどで見直しが始まるのでしょうが、
日本の場合はイデオロギーというよりも、日本病というのが根深くて原発事故後も改善ができずにいます。
沖縄の 命どぅ宝 という俚言を大事にしたいです。
・・・だけどそういうと、だからお金をばらまく、憲法を変える、戦争をするという人が出てきてしまって。混乱します。
屁理屈なんか入りません、米軍が撤退した結果として島や領海を中国に強奪された国(フィリピン等)が実在します。
この事実を突き付けるだけで十分です。
これを知り、尖閣諸島を強奪されかけている現状を見て、それでも守るための力を捨てろというのはタダのアホです。
日本が海外に軍隊を展開するのと、自国の領土を守ると言うこととは別次元の話なので、切り分ける必要があります。
なぜ沖縄に軍隊が集中するか、それは米ソの冷戦自体に自衛隊が北海道へ集中配備されたのと同じです。
第二次世界大戦で沖縄だけが陸戦をしたのではなく、日本で陸戦をやる際に戦略拠点として真っ先に狙われたのが沖縄だったと言うだけの事。
沖縄人は自分達だけが戦争被害者で本州の人は理解できないなんどと吹聴してますが、
絨毯爆撃で廃墟になった東京や核攻撃を受けた広島にある大都市に対して無礼すぎます。